本番で成功するためにおまじないや願掛けをすることについて

 
 音楽をやっている人は、発表会でも何かの大会でも、本番で人前で披露するという機会があります。
 
 中には緊張しないようにするため、うまくいくように自分を落ち着かせるために、おまじないをしたり願掛けをしたりする人がいます。それぞれ一つ一つについて科学的な根拠などをいちいち言うことはここではしませんが、それをすることで本来の自分の能力を発揮するきっかけとなるならば、とても大事なことだと思います。
 自分自身のやることに対して、自分で成功を願って、信じて、その上で本番でやるべきことを自分自身でやり遂げるということが大切なのですから、ぜひ良い結果につなげられるよう応援しています。
 
 また、日頃からメンタル関連について、音楽と並行して学んでいる人も見かけます。演奏や演技は人間のやることですから、ちょっとした環境や感覚や当日の体調の違いなどで多少普段との違いが出てしまったり、思いもしなかった事態が発生することもあります。こうした時のためにもメンタルについて学び、トレーニングをしておくことも、とても良いことだと思います。
 
 メンタルについて学んだりトレーニングをするということは、むしろ、自分の現在の状態や、イレギュラーな事態が発生した時の状態というものを把握しやすくなります。その対応についても、その状態になった時に、自分の頭の中に思いつく選択肢の一つとして出てきやすくなるのです。
 その他の時でも、例えば普段から、「器の大きな人間になろう」と思えば、そのようにやっていけばよいし、「しなやかな心を持って受け答えや受け流しができる人間になろう」と思っているのなら、それに見合うように自分を磨けばよいし、「いつでも平常心を持ってやっていける人間になろう」と思っているのなら、平時からその時の自分の目的に向かって行動を積み上げていくようにすればよいのです。
 
 時折、「メンタルについて学んでいる人は、自分に自信も実力もないから、すがっているんだ」とか、「おまじないや願掛けをすることで、いつもと違う行動をとっているから」と馬鹿にしたり、面白がってちょっかいを出してくることもあるかもしれません。
 メンタルを学んでいるからといって、細かいことまで一つ一つ悩んでいるわけではないのです。他人は、あなたの心の中までは分からないものですから、あまり気にしないようにしましょう。
 
 長い人生のうちには、時折あなたのやり方や生き方に関して、色々な人が色々なこと言ってくることもあるかもしれませんが、そういうことをしてくる人の中にはまず誰一人として、あなたという人や、あなたの人生や、あなたが本気で臨むこと関して、応援してくれたり、責任を持ってくれたり、自分を犠牲にしてでも助けてくれるような人はいないでしょう。
 
 少し話がそれましたが、ただ、そのように言ってくる人も、もしかしたら、実は仲間に入れてほしかったり、自分も緊張していて、いつもはしないような発言をしてしまっただけなのかもしれません。「実は自分も緊張してて…。」ということが分かった人には、理解してあげて、優しく接してあげればよいでしょう。
 
 
 
 
 本番を前にして緊張することは誰にでもあります。しかし、場慣れしてきたり、同じような状況を何度か経験すれば、それなりに対策も見えてきます。そのレベルは様々ですが、筆者としては、おまじないや願掛けというのもその対策の反応のうちの一つだろうと受け止めています。
 学校や団体に長年蓄積されている知恵がある時はそれも一緒にやっておく方が良いと思いますが、一先ずのところは、迷ったときは自分が一番納得のいく選択をするのがよいでしょう。
 今後成長して事前に予測できるようになったり、具体的に準備できることが見えるようになってきたら、そこから少しずつできるようになるよう対応していけばよいのです。
 
 おまじないや願掛けは、別に恥ずかしいことではありません。むしろ、あなたは自分自身について「自分の弱い部分を知っている」という、「強み」を持っていると言えます。ここは大変大事な点です。
 だから、チャレンジすることを目の前にして逃げ出すこともせず、また、「自分はできる」とか、「勇気を出せ」とか、「何とかなる」すら言うこともなく何とか体よく済まそうとすることもせず、しっかりとメンタルに関して向き合って知識を得て、自分なりに工夫しているのでしょう。
 
 そのおまじないも願掛けも、心を落ち着かせるための言葉や道具の一つとして用意しているのでしょうから、それを事前に用意してきたということは、特に何の準備もせずに本番を迎えた人に比べて、より本番に適した脳や体の使い方ができる余裕を持てることでしょう。
 つまり、本番での不安や緊張を何とかするために、或いはそれ以上に自分や仲間を信頼するために、ある言葉や物を通して何らかの思いを込め、集中して自分の力を存分に発揮できる状態を作ろうとしているということです。ここも大事な点ですから、この効果を分かって臨むとさらに良いかもしれません。
 
 だってそうですよね?練習もさることながら、おまじないや願掛けをすることも大事だと思っているから、わざわざ練習の合間を縫ってそうしているんですよね?自分で自分におまじないや願掛けをしたのだから、或いは自分が仲間のために何かを作ったり、仲間が自分やみんなのために何かを作ってきてくれたのだから、「よし、これで自分のやるべきことに集中するぞ!」ってならなければおかしいですよね?
 というように、最終的には自分で成すべき行動に焦点を当てられるようにすることが大切なのです。
 
 さて、音楽のジャンルや業界にもよりますが、発表会や演奏会、コンクール、大会なども、いよいよ本番に向けて気持ちをつくる時期になってきたことと思います。皆さんの思いが一つでも多く実現できますように。