仕事にやりがいを感じるためにできること メモ

 
 「自分は仕事が大好きだ」とか「この仕事が生きがいだ」というタイプの人にとってはそれでとても良い事だが、中には「仕事が面白くない」とか、「仕方がないから働いている」と言った人も少なくないのではないだろうか。
 
 ほとんどの人の場合、人生の中で最も多くの時間を投じるものは仕事である。
 もしそこがつまらない時間や我慢の時間だったら、と考えると、こんなに辛く過酷なことはない。
 仕事にやりがいを感じたい、楽しくしたいという時は、次のようなことを参考にしてみるとよいだろう。
 
 

①エンドユーザーの笑顔を想像し、自分の仕事の意義を見つける

 これはジョブクラフティングと言われ、仕事のモチベーションを上げる手法である。
 その解説の中によくある三人のレンガ職人という話は有名で、ある人が建築現場の作業員3人に「あなたは何をしているのですか」と質問した時の回答から学ぶというものである。
 その回答は次のような例である。
 
 作業員A: 「レンガを積んでいるだけです。」
 作業員B: 「お金を稼いでいるのです。」
 作業員C: 「美しい大聖堂を作っていて、これが完成すると多くの人達が救われるのです。」
 
というように、仕事に対してどのような考え方や取り組む姿勢を持っているかについて言われた物語である。
 
 さて、仕事に対する考え方は大きく分けて二通りあると言われている。
 
 (1)ライスワーク
  お金を稼ぐための作業や、生活したり食べていくためにする仕事と言われている。
 
 (2)ライフワーク
  仕事そのものに意義を感じる仕事と言われている。
 
 ちなみにライスワークの姿勢だけで働いてばかりいると、徐々に仕事が辛くなると言われている。
 その理由は、人間の脳はその大切な仕事の一つとして、エネルギーを必要最小限に節約するという機能があるからである。
 
 同じ餌の量なら動かない方が生存確率が上がるのと同じように、同じ作業の繰り返しのままにしていると、つまらなくなったり、早く終わらないかとか、いつまでもこの仕事なのかと思ったりして、取り組む意欲が低下したり、かつて持っていた情熱が薄れていってしまうためである。
 
 こうして脳内ホルモンを調節した結果、やる気を奪うというかたちに繋がっていくのである。
 完全歩合制や成果報酬型の給与体系の仕事であれば話は別だろうが、通常の月給制のライスワークでは熱意を持って仕事をするということをずっと続けるのは、なかなか出来なくなっていってしまうのだ。
 
 一方ライフワークでは、仕事をすること自体に価値を感じているため、仕事をすればするほど心理的な報酬が手に入っていくことになる。
 同時に、自尊心も高まってくるため脳もやる気になり、その結果仕事にやりがいを感じてくるのである。
 
 誰でも、どのような仕事でも、その職業に就いたら最初はライスワークから始まることだろう。
 しかし、どこかでその仕事に意義を見つけて、ライフワークという考え方に切り替えていかないと、だんだん仕事が辛くなっていくだろう。
 
 だからこそ、ジョブクラフティングという、自分の仕事に意義を見出す方法が大切になってくるのである。
 そのやり方はいくつもあるだろうが、最も簡単で効果があると言われているのが、「エンドユーザーの笑顔を想像する」ことである。
 
 もしも自分が物を作っているのだとしたら、ただ「物を作っている」だけで終わりにせず、人々の生活を支えているとか、人の夢や生きがいの元となっているというように、その先に繋がっていることや最終的に行き渡っている様子を考え、人々の笑顔や笑い声を想像していくということである。
 また、消費者がどのように使っているのかを考えたり実際に見てみたりするだけでも、ライスワークがライフワークに変わっていくきっかけにもなりうるだろう。
 
 ちなみに仏教においても同じような考え方があり、お金のために仕事をすることを小欲(=ライスワーク)、誰かのために仕事をすることを大欲(=ライフワーク)と呼ばれているそうだ。
 
 
 

②タイムプレッシャー法を使って、仕事に没頭する時間を増やす

 仕事への情熱は、仕事に没頭した時間に比例すると言われている。
 ちなみに、今持っている情熱とは、過去に集中した時間の合計であるそうだ。
 ○○歴✕年のベテランとかマニアなどと言われる物事にもあるように、仕事でも他のどんなものでも、好きだから没頭するのではなく、没頭するから好きになるのである。
 
 この原理を知っておき、集中して一心不乱に取り組む時間さえ作ることができれば、没頭したり好きになっていくという確率まで上がって好循環が生まれるということになる。
 しかし、そんな簡単なものではないだろう。
 なぜなら、仕事は基本的に単調な作業の繰り返しだからである。
 たとえ今はそうでなくとも、標準化やマニュアル化などの考え方がある限り誰でもできるようになるし、誰でもできるようになるということは、簡略化されていくにつれ単調な作業になっていくことが、世の常仕事の常だからである。
 
 そのような時には、タイムプレッシャー法が有効と言われている。
 「○○時までに完成させる」とか、「○○時までに✕✕個を終わらせる」というように、制限時間と目標を自分で設定するのである。
 
 タイムプレッシャー法を使えば、自己新記録との戦いに持ち込みやすくなるので、単調な仕事であっても単純に没頭できるようになるのだ。
 その他にも達成感や成長の実感を感じたりしてドーパミンも分泌され、仕事に対するモチベーションも高まっていく。
 そうして、他の人ができないようなことができるようになったり、周りから大切にされたり辞めたら困るような人材に扱われるようになる程成長を重ねられれば、どんな作業でもどんな職種でも楽しくなるはずである。
 もしそうでなくても、せめて「今の仕事は嫌いじゃない」という自分に出会えるようになるだけでも御の字だろう。
 
 
 

③雑談の時間を取り入れて人間関係を良好にし、職場や仕事を好きになる

 ポジティブ心理学の上では、良好な人間関係を作ることは、人生の幸福度を上げる最も重要な要素だと言われているそうだ。
 これは、人間にとっては「何をするか」よりも「誰とするか」のほうがはるかに大切だということである。
 そして、その良好な人間関係を作るのに必要なことが「雑談」なのだ。
 
 雑談は一見どうでもいい話かもしれないが、職場の場合、普通の雑談をしていれば、約1年くらいで友人関係に発展する傾向が高まることが分かった、という研究もあるくらいだ。
 さらにその友人に悩み事を相談することで、親友関係へと発展していくことも分かったそうだ。
 
 また、「職場に友人が入ると、どのくらいその職場の仕事を好きになれるのか」という、500万人を対象にした研究もあり、その結果、職場に3人の友人がいるだけで給料の満足度が2倍になる、職場に親友が一人でもいれば、その職場の仕事に対するモチベーションが7倍になるという数値結果が導き出された研究もある。
 
 このように、共に働く仲間がいるというだけで、仕事の楽しさやモチベーションが劇的にアップするし、普段から上司と雑談ができていれば、ミスをしても叱責されることも少なくなるし、質問や相談、確認や助言なども含めた会話の頻度も上がっていくということもある。
 そうした意味でも、雑談する機会を作っていくというだけでも、仕事は楽しくてやりがいのあるものに少しずつ変化していくのである。
 
 
 
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 「もう少し給料が上がったら楽しいのに」とか、「好きな事を仕事に出来ればもっと頑張れるのに」と思ったところで、給料の高さと仕事の満足度には相関関係がほとんどないことが分かってきている。
 また、好きなことを仕事にしても、ほとんどの人は5年以内には情熱を失ってしまうことも分かってきている。
 
 なぜなら、先にも似たようなことを述べたが、仕事の中のほとんどは「作業の連続」だからだ。
 また、少し視点を変えれば、人は一週間のうち五日間は働いている。
 これを人生80年と考えると、約3万日のうち2万日以上は、仕事が辛いとか、苦しいとか、つまらないと思い続けていることになるのだ。
 
 そのような人生では少しも面白くないだろう。
 だから上記のように、仕事に少しでもやりがいを持ったり、楽しくできるようなやり方を知って、自分から工夫していく姿勢を持つことが大切なのである。
 
 
 
「自分が好む仕事をすることではなく、自分のやっている仕事を好きになることだ」
ゲーテ
 
「仕事が楽しくない時は、楽しくするしかないんじゃないかな。どうするのかは分からないけど。」
高田純次