下手くそ、実力不足だから練習するにも人の目が気になるという人へ

 
 音楽指導をしている時に、「自分はヘタクソなので、練習をする時に人の目が気になります」という人がいました。
 その時の話です。
 人それぞれに状況や環境が異なるかと思いますが、何かのきっかけ程度になれば幸いです。
 
 
 理想のかたちに対して現在の自分が伴っていない時に、少しネガティブに考えてしまうようになることは、誰にでもあることだと思います。
 ただ、おそらく周りの人のほとんどは、上手くなろうと思って練習を重ねているあなたを見て、「あいつヘタクソだなぁ」とは思っていないでしょう。
 
 なぜなら、その人にもやるべきことがあるからです。
 きっとその人も「上手くなりたい」と思っているでしょうから、「自分も負けていられない」と思うことでしょう。
 
 或いは、「特に何も気にしていない」でしょう。
 たまたま偶然に、顔や目線があなたのいる方向を向いたとか、誰が練習しているんだろうと思って目線をやっただけかも知れません。
 場合によっては、「下手なら練習するのが当たり前」と考える人が多い集団なら気にすることもないかも知れません。
 
 
 
 
 
 一応、指導者の端くれとして言っておきますけどね。
 普通の人なら、下手な人が毎日練習しているのを見かけて、「あいつヘタクソだなぁ」なんて思いません。
 
 むしろ、人間はすぐに怠ける生き物なのにも関わらず、(現時点の技術レベルがどうあれ)毎日練習を重ねることができているあなたを見て、その人が自分のことを振り返ってみて「ヤバい、自分は怠けている」と感じる方が自然なのです。
 さすがに、借りている物を粗末に扱っていたり、練習場所の使用ルールを守らずいいかげんに使っていたりしたら話は別なのでしょうが。
 ともかく、普通の人はまず、「あいつヘタクソ」だなんて考えないのです。
 
 例えば、自分の理想と現状との距離が少し開きすぎていることも、一因としてあるかもしれません。
 そうしたことを気にせずに、「あいつはヘタクソだと周りの人から思われているんじゃないか」、といつも気にしているようだったら、少し考えすぎです。
 
 悪いことを考えてばかりいると本当に悪いことが寄ってきてしまうのでほどほどにしておき、今日練習する分はしっかりと練習して、それが終わったら「あぁ、今日もよく練習した」と爽快感を感じられるように、課題を作ったり段取りや負荷を考えたりしていくということが、まずは簡単にできる対処かと思います。
 
 
 
 
 
 もう一度、一応、指導者の端くれとして言っておきますけどね。
 「お前ヘタクソ」と実際に言ってくる人がいたら、そいつは暇人です。
 あなたの貴重な時間を削ってまで相手をする必要がある人ではありません。
 
 多分、毎日練習を続けていれば、そんなに長い日数をかけないうちに、その人の事を追い越せるでしょう。
 または、技術の面ではなかなか追いつかないこともあるかもしれないけれど、近いうちにその人よりは賢くなっているでしょう。
 
 もし本当に言われてしまっていて、周りの人も誰もフォローしてくれずに落ち込んでいるとしたら、私が代わりに言います。
 
 「あなたが正しい。」
 
 今後はもう人の目を気にしなくてよいです。
 だからあなたも、もう気にしないと決めてください。
 
 本質的には、あなたは理想のかたちを、見たり、聴いたり、イメージしたり、参考にして真似たりして、それに近づけるように日々自分を磨いているのです。
 
 さっきも言いましたけど、人は普通怠けるので、毎日練習に取り組むことができる人というのは、もはやそれだけで才能なんです。
 しかも、ネガティブになったりマイナスのことを考えているにも関わらず、毎日のように練習をすることができているということは、ただの才能ではなくとてつもない才能だと思います。
 
 
 
 
 
 実際のところはですね、おそらく誰もあなたのことはそれ程気にしていないと思います。
 
 傷つかないで客観的に聞いてほしいのですが、ヘタクソな人や出来の悪い人って、どのくらいの重要人物なのでしょうか。
 または、あなたが周りの人に対して一人一人詳しく、「あいつはヘタクソだ」とか、「あいつは要領が悪い」というようなことを、どのくらい考えて生きているのでしょうか。
 
 そんなことについて振り返ってみれば、自然と答えは出てくるでしょう。
 
 他の人もみんな、自分も上手くなりたくて精一杯だと思います。
 人の悪口を考える時間があるくらいなら、自分の練習をした方がマシだと考えるでしょう。
 もしかしたら、毎日飽きずに練習に取り組むことができるあなたを見て、羨ましいと思っているかも知れません。
 
 何かに対して自分から取り組める力がある、しかも毎日取り組める力があるということは、とても大きなことです。
 普通の人の中には、そのことを「努力」と呼ぶ人もいることでしょう。
 努力を努力と思わずに、自分の取り組むべきことに対してしっかりと取り組むことができることは、大変素晴らしいことなのです。
 
 
 
 
 
 一応、指導者の端くれとしてはですね、あなたとほぼ同じ状況を経験しています。
 多分、指導者と言われる人たちは、みんなそうした経験をして、それを撥ね退けてきていることでしょう。
 ひとつ確実に言えるのは、他人の目なんて気にせずに、脇目も振らずにやるべきことに打ち込んできた、ということです。
 
 願わくは、才能のあるあなたには、ただ漫然と練習の時間を過ごさないでほしいです。
 例えば次のようなことを気にしてみると、上達するまでの時間が短縮できるきっかけになるかと思います。
 
 ・他人の目をいちいち気にしない
 ・自分の上達が先と考える
 ・今日やることを事前に決めておく
 ・やったことの記録をつける
 ・何回中、何回くらいで成功できるかを知っておく
 ・できない箇所は小さく分解してやってみる
 ・理想型とはどのようなものかを出来るだけ言葉にする
 ・現在の状態や課題を出来るだけ言葉にする
 
 
 
 
 
 さて、残念ながら世の中には、自分で直接手を下すことなく、相手の頭の中に自分自身を否定するようなことを思わせたり、それを頭の中で自動的に増幅させるように仕向けて自信をなくさせ、自分は好き勝手に振る舞い、あわよくばあなたのことも好きに使ってやろうとしてくる人が、少なからず存在します。
 
 もっと残念なことに、それは大人か子供も、男か女かも問いません。
 しかも、いつどのような時でも、こうした人に出会ってしまう可能性があるのです。
 さらに、こうしたやり方を一度でも使ってしまったら味をしめてしまい、なかなかそのやり方から離れられなくなってしまうのです。
 
 だって楽だから。
 
 自分が戦わなくても、自分を成長させなくても、相手を下げることによって、相手の方から勝手に脱落していってくれるからです。
 誰でも使える姑息な方法なので、やり方も簡単なんです。
 相手の人はそういうことを知るのが、あなたよりも少し早かっただけです。
 
 そして、ごく一部のこうした人から受けた時のダメージは、何と大きく感じることか。
 
 だから、心苦しいかもしれませんが、今は距離を置くべきです。
 
 なぜなら、あなたは理想のかたちを、見たり、聴いたり、イメージしたり、参考にして真似たりして、それに近づけるように日々自分を磨いているからです。
 毎日のように練習をすることができる才能があるからです。
 相手を下げるのではなく、自分が上がろうとしているからです。
 
 根本的に違うのですから、自分のことを下げようとしてくる人とは相性が合うはずがないのです。
 
 
 
 
 
 もう他人に振り回されることなく、自分の好きな事・やりたい事を遠慮せずやってよいです。
 「誰かに何か言われるかもしれない」という妄想もしなくてよいです。
 好きなだけ練習してよいです。
 やりたい分だけやってよいです。
 上手くなることを堂々と目指してよいです。
 
 そのように、真っ先に、自分で自分に許可しておいてください。