人前で上手に話せるようになるためには、話したいことを事前にアウトプットしておくとよい。
そうすることで記憶に残りやすいからである。
本を読んで気づいたことを自分なりの言葉としてまとめる。
自分でやりたい、やるべきと思ったことをToDoリストに書き起こす。
そのような作業を一度でもしておくと、言葉やイメージがぼんやりと頭の中にある状態よりも整理した状態で記憶することができる。
この、頭の中にあることを一度アウトプットして整理しておくという作業が大切なのである。
また、大勢の前で話したり、大切なことを伝える場合もあるだろう。
そうした時には、頭の中にモヤモヤとしていたり、単語や短い文章の単位で思い浮かべていたり、なんとなくイメージだけがある言葉を、紙でもパソコンのメモ帳でもよいから事前に文章にして書き起こしておくとよいだろう。
ちなみに筆者の場合は、最初は紙に書き起こす。
特に音楽の指導先で話すとなると、生徒の方々が大切に感じていることや、伝える内容とそのタイミングや習熟段階が、その時期その時期によって異なるからだ。
伝えたいと思うことをイメージでも単語でもキーワードでも、思いついた通りにメモ帳なり裏紙なりに書き出して、その時点で思いつく限りの文章としてまとめていく。
そのメモを少し時間を空けてから、スマホの音声入力ソフトで手直ししながらテキストデータ化して、クラウド型のメモ帳などに保存する。
最後にそれをパソコンを使って手直ししていくという流れである。
紙媒体で何度も赤入れをしない理由は、文章を推敲するのならパソコンの方が、修正も、コピーも、ファイルの複製も簡単にできるため、より適しているからである。
人前で話をするにあたって、自分が上手かどうかについて気に病んでしまう人が多いだろうが、まずは気にしなくてよいだろう。
誰だって一番最初は不慣れなものだし、場数を踏むほど成長するものだからである。
また、話の上手さを気にするよりも、伝えたいことが整理されているかどうかの方が重要である。
整理されていなければ論理立てて話せないからだ。
話し方がたどたどしくても緊張してあがっていても、伝えるべき要点と順序がしっかりしていれば、そんなに心配せずとも結構伝わるものなのだ。
だから、話したり伝えたりすることが上手になりたいと思うなら、普段から学んだこと、気づいたこと、身につけたいこと、覚えておきたいことなどを、短い文章でもよいので、紙にメモするなりテキストとして入力するなり、何らかの形でアウトプットしておくことが大事である。
不思議なようで当たり前のことだが、自発的にやればそのぶん記憶や経験として残る。
なんとなく見たり、聞いたり、思ったり、やったりしていることは、ほとんど記憶に残らないものなのだ。
話す、書く、行動するということをやる人とやらない人では、圧倒的に差ができる。
話が上手な人は、単純にこういうことを何回も、何ヶ月も、何年も続けているのである。
今の時点が0で、話が上手な人が100とすると、今日やった小さなアウトプットはおそらく0.1にもならないかもしれないが、しかしやった分だけ確実に蓄積されているのだ。
自分の考えをきちんと相手に伝えるということは、確かになかなか難しいことかもしれないが、程々の言い方を意識して使えるとよいだろう。
強い言い方や弱い言い方でなく、程々のところ。
これに加えて、見える事実、感じている気持ちなどを伝えれば相手に伝わることも多くなる。
強い弱いの極端な考え方は誰でも割と思いつくのだろうが、ほどほどとなるとどうだろうか。
もし、こういうことを普段から意識していないのであれば、少し意識するだけでも良い言い方は出てくるものなので、やってみる価値はありそうである。
また、うまくいかない時こそ、自分目線だけで事実を羅列したり感情的になりすぎていないだろうか、と振り返ることもまた大切だろう。
このようにして、ほどほどの言い方を少し意識して、見える事実と感じている気持ちを伝えることで、今までより多少はうまく伝えられるようになるきっかけとなれば幸いである。
自分の話が上手く伝わったかどうかについては、相手が納得しているなどの反応をみるとよい。
最初は伝えるだけで精一杯かもしれないが、これも場数を踏んでいくことで相手の反応を見ながら話をしたり、話の伝え方や路線を修正しながらやることも少しずつできるようになっていくものである。
寂しい言い方かもしれないが、もしかしたら人というものは、基本的には分かり合えない者同士なのかもしれない。
しかし、だからこそそれを意識しておくと、意見や考え方が違っても、焦って相手と同じ考えになろうとしてしまう手前で、「あぁ、分かり合えない時もあるんだ」と落ち着くこともできるのだろう。
せっかく自分から物事を伝えるのであれば、少しでも上手になった方が良いし、自分や相手や集団が、良い方向に進んだり前向きになっていく方がよい。
だからやはり、人前で上手に話せるようになるためには、伝えたいことを日頃から、或いは事前にアウトプットしてみるという、地道だが確実なやり方をおすすめする。