自己犠牲のお人好しにならないための対処


①「世のため人のため」は自分に余力がある時にやる
 自分を犠牲にして、ただ相手の為に何かしないことです。
 その先に幸せはないからです。
 自分を犠牲にしてうまくいかなくなって自分が不幸になると、自分が不機嫌になり、性格が歪み、最後には相手も不幸にすることになります。

 「自分を犠牲にして他人の幸せや利益のために尽くすことは大切」みたいなことを聞くことがありますが、すべてを否定するわけではありませんが、「100%の自己犠牲は不要」ということくらいは気付いておきましょう。
 自分が何かをした分、自分の取り分のことを考えたって良いのです。

 せっかく人のためになることをするのですから、「行動した結果得られるものがあった」とか、「人の気持ちや考えを知ることができて身になった」とか、「このやり方は別の○○で使える」など、お金に限らずとも自分の取り分にできることがあるはずです。
 そうしたことをまったく考えずにただ相手に出し切るだけ出し、何も得ようとしないし得ることも考えてすらいないから、「自己犠牲」と一括りに思い込んでしまうのかもしれません。

 確かに、世のため人のためと思って何かをするというのは大切ですが、今とてもうまくいっていて幸せをお裾分けできる余裕のある人や、自分がそういう状態にある時にがそうしてあげればよいのです。
 良い言葉や名言をすべて鵜呑みにする必要はありません。

 別に、100何かをやったうちの10の分を自分の取り分としてお金を得ても、人脈を繋げても、何かのテンプレートとして使えるようにアイデアをもらっても、自分の考えを実験としてやらせてもらっても、それでも90は与えることになるのですから、それって結構世のため人のためになっているのではないでしょうか。

 何にせよ、相手を幸せにする前にまず自分が幸せになること、或いは、自分がするべき範囲のことは自分できちんとやれるようになることの方が先です。
 ない幸せは分け与えられないのですから、そうなってもいないのに何でもかんでも自分を犠牲にするのは得策ではありません。

 

②人の心理を少しでもよいので学んでみる
 人には、利他的な行動、利己的な行動、返報性の原理という心理があることを知るとよいです。


 ・利己的行動
  他人の立場を考えず、自分の利益だけを考え行動すること。

 ・利他的行動
  自分を犠牲にして、他人のために行動すること。

 ・返報性の原理
  「他人から施しを受けたら、自分も何かお返しをしなくては」と考えるという心理。


 「〇〇だけ」とか「犠牲」とか、上記の書き方だと少し極端に感じるかもしれませんが、便宜上そうしたのであって、基本的には自分で自分の世話ができた上で余裕があるなら、「利他的行動の結果、それを受けた人々が恩返しをする(してくれる)」というケースが望ましそうですね。
 見返りを期待し過ぎると、いらぬストレスを抱えることになりますが。

 次に、人には大まかに分けて、次の3つのタイプがあると言われています。


 ・利他主義者
  惜しみなく与える人。

 ・利己主義者
  自分の利益最優先の受け取るだけの人。

 ・バランスをとる人
  一番多いと言われ、与えられたらお返しをする人。


 利他主義者は、ギブ&テイクの考え方で言えばギブ(与える)の人のことですが、そこには成功できる人とできない人が両方存在していると言われます。

 想像のとおりかと思いますが、いくら人に与えることが好きで得意な好印象の利他主義者でも、「自分さえ我慢すれば」の精神を持ってしまうと「ただの自己犠牲的なお人好しとなり」、ただただ人に与え続け(というより無条件に差し出し続ける癖がつき)、他人から搾取され続けるだけの人生になってしまうでしょう。

 例えば次のような場合にあてはまるようなら、自分を見つめ直すことが必要かもしれません。


 ・忙しくても頼まれると断れない
 ・急いでいる時に呼び止められるても「急いでいる」と言えない
 ・何でも他人の決断に従う
 ・自分の意見はいつも「特にないです」と答える


 自分の時間とエネルギーをいつも他人に与え続けていると、いつかは底をついて燃え尽きてしまうものです。
 自分の人生なのですから、自分の時間とエネルギーはまずは自分のために優先させましょう。
 余力がない時は特に気にした方がよさそうです。

 また、いつも自分の気持ちを我慢したり抑え込んでばかりいると、「自分が何をしたいのか、どう感じているのか」などという自分自身の考えを掴みづらくなってしまい、普段の生活や仕事に不可欠な決断力も、感情も退化してしまうことになります。

 一方、成功できる利他主義者は、他人に多くを与えても自分の利益を見失わず、しかも誰にどう与えるかまでしっかりと考え行動できる人であるため、最高の勝者であり他者志向的な人物と見てもらえるようになるでしょう。

 さらに、基本的に受け取ってばかりの利己主義者の人は、相手が何でも与えてくれると分かれば、感謝するどころか都合の良い便利な人だと考え、常に利用しようとしてくるでしょう。
 「他人に対する思いやりの気持ち」は大切なことですが、物事には限度というものがありますから、思い遣った結果こちらだけが被害を被るという状況は避けなければなりません。

 理想としては、「自分の利益も他人の利益も考え、さらに両立できる」というかたちではありますが、まずは自分だけが無駄に差し出したり奪われたりしないように、自分を幸せにすることを優先していくことです。

 

③自分にとっての要注意人物を見極める
 とにかく受け取ってばかりの利己主義者の人は、他人の善意を食い尽くします。
 それで満たされることもないですし、他人から見てあまりよく思われていないことにも気付きません。
 ちょっと言葉が悪いかもしれませんが、実際に出会って食い物にされてからではダメージが大きいので注意が必要でしょう。

 要注意人物とは可能な限り、距離を置く。すぐ逃げる。縁を切る。関わらない。
 自分の大切な命、人、時間、お金、物などを考えたら、感謝の心がない人に搾取され続けると分かっているのに差し出す必要は一切ないのです。

 また、そういった信頼できない人には共通点があります。


 ・自己中心的な考え方
 ・自分の利益最優先
 ・何でも欲しがる(というより「よこせ」という態度)
 ・言うことがコロコロ変わる
 ・不安や恐怖をあおる(相手を騙すために)
 ・時間や締め切りに遅れる
 ・約束を守らない
 ・嘘をつく 
 ・言いわけが多い 
 ・責任をとらない


 もちろん、初心者や経験が浅い人や会社の新人などで他人からの恩恵を受ける時期にあるために、「自分も何かしたいけどまだ実力が伴わない」という段階且つそういう思いが行動に見て取れる、いわゆる「これからの人」は別です。
 純粋に頑張ってくれる人は、彼らが道を外すことなくこちら側に来てもらえるように接していくべきでしょう。

 

④言われたことを一旦オウム返ししてみる
 例えば、あなたが大事な用事があるため頑張って定時に仕事を終わらせて帰る時に、かなり距離を置きたいと感じている他人から「用事があるから早く帰りたいので、少しだけ手伝って欲しい(用事が何なのかは言わない)」と、自分には関係ない仕事を理不尽に手伝わされそうになった場合などに使うとよいでしょう。

 要は、怪しいと思ったら「すぐにYES/NOの返事をしない」ということです。
 そういう時は相手の使った言葉を使って、「用事があるから帰りたいけど、仕事が終わらないので、自分の仕事を私に手伝って欲しいと言っている、ということ?」と確認してみることです。
 もちろん、親しい人や、信頼できる人や、今後近いうちに仕事で連携しそうな人などにそうする必要はありません。

 その場では少し嫌味な感じが出てしまうかもしれませんが、まずはとっさに「いいよ」と言わないことを死守するのです。
 頭の中で一方的に相手の気持ちを分かってあげようとすると、いつもと同じになってしまいますので、相手の思う壺です。
 そこを踏ん張って一旦言語化することで客観的になれるし、「自分は今まさに理不尽なお願いをされている」と気付く余裕を作れるのです。

 相手が要注意人物であればあるほど、相手の善意に訴えたり気付いてもらおうすることは無駄ですから、「私も今日はどうしても外せない用事があるんです。悪いけど帰りますね。」とでも明るく堂々と言い、その場を離れた方がよいです。
 たとえ今回は相手に効果がなかったとしても、その時の自分や状況を客観的に見つめ直すことができます。

 

⑤不利益を防ぎつつ与えるやり方を増やす
 ④では少し嫌味な言い方をしたかもしれませんが、もしお願いをしてきた相手が本当に困っている様子なら、自分が受ける不利益を防ぎつつ、相手に与えられるように対処できるようになるとよいです。

 例えば、次のような場合です。


 ・人にものを頼むことが滅多にない人からお願いされた
 ・普段は特に仲が悪くもないし信頼できない人とは言えないと思える
 ・近いうちに仕事で連携したり行動を共にする可能性がある
 ・以前自分が直接助けてもらったことがある
 ・以前自分が間接的に助けてもらうかたちになったことがある


 こうした場合は「実は私も大事な用事があって早く帰らなければならないんだけど、30分だけなら手伝えるよ。」などと言って、自分の予定に影響が出ない範囲で手伝ってあげればよいです。

 もちろん30分経ったら手を止めるのですが、「ごめんね、もう行かなければならないので、ここまでね。」などと言ってちゃんと区切って帰らないと、かえって時間にルーズな人という印象を与えてしまうことになります。

 ただ、もし30分きっかりで帰ったとしても、普通なら(相手が要注意人物でないなら)「用事があるのに無理して手伝ってくれた」と恩を感じてくれるものですし、その後の人間関係もさらに深めていくことができるでしょう。

 ①から⑤まで通して言えることですが、「無策、無防備、丸腰のまま、あなたの貴重な能力と時間とエネルギーを要注意人物に無条件で差し出す前に、ちょっとくらい自分のことを考えろ」ということです。
 いわゆる「イイ人」でいることは大事ですし好感が持てる生き方だと思いますが、これが「周りにとって都合のいい人」という意味だけで生きるというのは、かえって損でしかないのです。