良い練習時間を作り、増やしていく方法


 せっかく音楽をやるのですから、大会でもコンクール発表会でも何でも、「何かを目指したい」とか、「自分に身に付けたいと思う技術がある」とか、何らかのイメージを持って普段から取り組んだ方がより大きな収穫ができるものと思います。
 何にしても、自分の実力がある程度の水準に達するためには、それ相応の時間や知識の習得や反復練習などの積み重ねが必要です。
 王道としては、その人にとって「良い練習時間を増やす」ことが望ましいのですが、そのためにまず取り組むべきことは、「良くない時間を減らす」ことです。

 もちろん、まだ始めたばかりでこれからステップアップしていく人にとっては、「良い(練習)時間とは何か」について正解と思えるものを探すのはまあまあ難しいかもしれません。
 なぜなら、何が良いのかは、それを詳しく知る前には分からないからです。

 仮に、現在の手持ちの時間をグラフや図などのように全体的に俯瞰して考えた時に、次のようなことに時間を費やしてしまうと、本来なら良い練習時間になるはずのスペースがなくなってしまいます。

 ①今やるべき事ではないことに費やす時間
 ②なんとなく過ごす時間(何も産み出さない時間)
 ③周りと合わせてダラダラしてしまう時間

 特に、暇な時は注意が必要です。
 暇な時は、無計画に様々な選択ができてしまうからです。

 良くない時間を減らす行動を続けていくと、空いたスペースに良い体験が入ってくることも、自分から何か挿し込んでみることもできます。
 そこからは、今の時点で良いと思える行動を増やしていき、少しやってみて「やっぱりちょっと違うな」と思ったらより良いと思える行動に変えたりして精度を上げていきます。
 もし年齢が若くてよく分からなければ、先生や指導者の方に、あなたに合った良い方法は何かを聞いてみるのも良いでしょう。

 言うまでもないことですが、何も行動を起こさず、何も変えようとせず、現状が維持されているままなのに、「ヤバイ」とか、「どうしよう」と思っているだけの人は、空いたスペースに入ってくるはずの良い体験はありません。

 

 補足ですが、もし優先順位の低い選択をしてしまっていたとしても、取り組めば取り組むほどその選択した何かの力が伸びたり、個人としての生産性は上がり続けることになります。
 取り敢えず、一人の人間としては「まあ、とりあえずは成長はしたよね(本来の目的から外れてるけど)」といった感じにはなれるでしょう。
 ただ、それでは少し悲しいですよね。

 そうならないようにするためには、その目的を達成するのに必要な条件や、その技術を習得するのに必要な基礎や練習パターンなどを、見つけたり、自分から学習したり、詳しい人に教えてもらったりしながら練習を進めていくことが大切です。
 せっかく良くない時間を減らすのですから、時間に余裕ができた分「自分はこれをできるようになるんだ」という目標を忘れることなく継続していくようにすることで、結果もついてくるし、「良い時間を過ごした」と堂々と言える状況に変えていかれるのではないでしょうか。
 本来重要であることとは関係のない時間を費やしてしまうと、目的や目標も達成しづらくなるし、自分の成長としても伸ばしたい部分ではないところが成長していくことになる、ということが分かっていただけたら幸いです。

 

 また、先のことを考えて少しだけでもやる気を上げようとするのであれば、「未来の自分から見たら、今が一番暇である」という視点を持っておくと良いです。
 そういう視点や発想を持つことで、忙しいと思い込んで勝手にいっぱいいっぱいになってしまうことを回避できるからです。
 もちろん、社会人で物理的に忙しい職業の方や子育て中のお母さんなどは当然別物ですが、少なくとも
「今からこの目的に向かってやっていく。このくらいの期間で、こんな順番でやってみよう。必要な物はコレとコレだろう。」というようなことがザっとイメージできるくらいまで慣れていかれると良いですね。

 さて、忙しいと思って心が乱れている時には、良いインプットは減ってしまうものです。
 そうすると、良いはずの時間も減っていくことになります。
 本当なら今の自分をより良くするために蒔くべき種がたくさんあるのに、心の状態によってそれが分からなくなってしまうのは大変もったいないことです。

 だからこそ、まずは物理的にも精神的にも、良くない時間を減らして先にスペースを空けておくことが大切なのです。
 そうでないと、新しく学んでいくこと(インプット)も、とるべき行動の内容(コンテンツ)も、やった結果どれだけ上達したか(クオリティ)も、向上していかないのです。