相手の言葉にいちいち落ち込む前にすべきこと


 相手からの「そんなの誰にでもあることだよ」、「気の持ちようだと思うよ」というような、何気ない言葉でいちいち落ち込んだり傷ついたりする人がいます。
 相手はその人に特に敵意も悪意も持っていないのに、さらに傍目から見ても特に悪い要素も感じられない言葉なのに、言われたらどんどん落ち込んでいってしまいます。
 誰にでもネガティブな思考が湧いてくることはあるものですが、もしかしたらその人は超がつくほどネガティブ思考に陥っているのかもしれません。

 もしあなたがこういった状況や気持ちに陥ってしまった時は、「その言葉の別な解釈はないのか」を探してみることです。
 酷くネガティブになっている時は、仮にある言葉にAとBの2通りの解釈があるとしたら、とにかく悪い方の解釈をしてしまうものです。
 他にも、近所の人や道ですれ違った人とただ目が合っただけで、物事を悪い方に考えてネガティブを増幅させたり落ち込んだりしてしまい、「何か変なことを思われたんじゃないか」と感じたりするのでしょう。

 こういうことをもし別の解釈で考えてみるなら、「それって、実はお互いに見ていたんじゃないですか?」といった感じでしょう。
 普通、すれ違う人は視界に入るからチラッと見るくらいのことはしますし、もしそれをせずに周りの人に気を配らないで、みんながそれぞれ自分の思い思いに歩いていたらぶつかってしまいます。
 もし目を合わせなかったら、それはそれで「変な奴だと思ったから、アイツ目をそらした」と疑ったり、「周りの人なんてみんな冷たくて、やっぱり自分は一人ぼっちなんだ」と落ち込んだりするんじゃないでしょうか。

 ともあれ、まず先にその極端な思考を切り替えてみることです。
 今の状態は、仮に0か100かの二択思考で言えば「0思考」、黒か白かの二択思考で言えば「黒思考」みたいなもので、悪いところだけが際立って見えてしまっている状態かと思います。
 誰かに相談して「誰にでもあることだし、気の持ちようだと思うよ」と言ってもらえたとしても、「当たり障りのないことを言って、バカにされた」と悪い方だけで解釈してしまうと、せっかく相手が気持ちを寄り添って答えてくれているのにお互いに得になりません。

 また、「その言葉の別な解釈はないのか」という以外にも、以下の様に考えることもできるでしょう。

  ・もう少し別の切り口で捉えられないだろうか
  ・もう少しポジティブな受け取り方はできないだろうか
  ・その言葉を言ってくれたその人の気持ちはどうなのだろうか
  ・自分が思った(感じた)以外の解釈はないだろうか

 


 さて、見方を変えられないということは、その時点では「自分が望むベストの回答以外は0点である」という考えから抜け出せない状態にあるということです。
 冷静になって考えれば、「自分の理想の反応と少しでも違うのなら、相手は私のことを全く理解してくれない人なんだ」というような考えは、極端であり一方的なものです。
 もうちょっと踏み込んで言うなら、視野が狭くて傲慢な人にも見えてしまうこともあるかもしれません。

 一方で、会話をしている相手にとっても、あなたとのすべてのやり取りに明確に答えるというような対処は、お互いの立場を置き換えて考えてみれば分かる通り、実際にはかなり難しいことです。
 それに、「私は〇〇と思っています。それは××という意味です。」などと明確に答えられたら、ちょっとした言葉で心が乱れてしまう状態の人にとっては、かえって辛いことになってしまうでしょう。
 あなたは攻撃されたと感じたかもしれませんが、相手はあなたの話の意図を少しでも汲み取ってあげようとしてくれた上で、「今は何とも言えないよね」とか、「時間が解決してくれるよ」とか、「解消するかは分からないけど、聞けるだけ聞いてあげるよ」というような意味合いで対応をしてくれているのかもしれません。

 その時に相手の選んだ言葉があなたにとって適切だったどうか、それについて深掘りをすれば、「あなたの受け取り方だって、もうちょっと何とかならないの?」となるのは明らかです。
 そうなるよりは、「お互いにコミュニケーション力を成長させていくことは大切だよね」という方向に目を向けるのが適切でしょう。
 いずれにしましても、こういう態度で接してくれる相手というのは、中立的な立ち位置且つかなり冷静でいてくれる人物ですので、大切に扱った方が良いと思います。

 


 人は、信頼関係が十分にできていない人間関係においては、脳の扁桃体が興奮状態になり相手の悪いところを探してしまう傾向が上がるそうで、それだと相手のやることなすこと全てを悪い方にとってしまいかねません。
 また、扁桃体は「危険の警報装置」と言われることもあり、メンタル疾患の人なども含む「そもそも脳が疲れた状態にある人」は、どんどん不安なことや心配なことを探し出してしまいます。
 ですから、「ネガティブな見方になっていないか」と一旦振り返ってみて、もしそうなっていれば自分で是正していかなければなりません。

 そうしないと、誰に相談しても、医師やカウンセラーなどの専門家の人に相談しても傷つくことになってしまいます。
 仮に、ここ1ヶ月で楽しいことが100個、楽しくないことが1個あったとしても、楽しくないその1個のことが頭から離れなくてずっと考えているのでは幸せとは言えないですよね?
 それが人間関係が原因のことだったとしたら、なおさらですよね?

 人間関係は鏡のようなものであり、常に疑心暗鬼になって「相手を信頼できない」という態度で接していると、相手だって親切にしてくれるはずもありません。
 だからもっと相手を信頼して、相手の言葉を悪い方にとらえないようにして、「別の考え方や見方もあるんじゃないかな」と視座の転換をして、物事をもう少しポジティブに見るようにした方が良いです。
 物事の見方というのは、「常に最高の見方」や「常に最悪の見方」だけをするのではなく、「より良い見方」というのもできるのです。

 また、相手の言葉を言葉尻だけでなく「文脈」としてちゃんと捉えれば、相手があなたのことが嫌いで貶めてやろうとして話しているのか、そうでないのか、ということも分かるはずです。
 相手だってあなたと同じ社会で出会ったのですから、ほとんどあなたと同じようなレベルだと考えれば馬鹿じゃないですし、それがもし感情を切り離して考えるのが得意な人ならば、合理的で冷静な判断をして言葉まで選ぶものです。
 たとえそれがあなたにとって辛辣な言葉であっても、良かれと思って言っているかもしれません。

 今、自分がかなりネガティブな状態にあると分かれば、相手の話の言葉尻ではなく相手の立ち位置を踏まえた上で、相手の言葉や態度を理解していくことが必要です。
 自分がかなり酷く沈み込んでいる状態の時であっても、何でもかんでも悪い方にばかり考えていると損をしてしまうので、そうなる前に自分の視座の転換をしていくことで、少しずつ改善できるでしょう。
 そして、自分に寄り添ってくれる相手のことを、今もこれからも大切にしていきましょう。