人と接しやすくしていくためにできること メモ

 
 「最近の若い者は」という言葉がある。
 ただ、これは先入観のある言葉にもなってしまうため、そうした言葉はあまり持たない方がよいだろう。
 先入観のある言葉をまるで使わないようにするというのはなかなか難しいが、先入観のある言葉ばかり使っていると、自分からコミュニケーションの壁を作り、他者を接しづらくさせてしまうのである。 
 
 ちなみに、最近の若い者が、自分のことばかり考えて他人に配慮しないのかというと、そんなことはない。
 そういう人も中にはいるのかもしれないが、全員がそうなのではなく、他人への配慮ができる人や自己愛が弱い人だっているし、他人への配慮もできて自分のこともしっかりやり、精神的にも人格的にも素晴らしく思えるような人だっている。
 だから、他人から見て接しやすい人になるには、先入観を持たずに、あまり決めてかからない方がよいのだ。
 
 初めての人に会う時は、先入観を持つことが最も良くない。
 先入観とは心の壁のようなもので、「最近の若い者は」というようなものがあると、最近の若い者からしたら接しづらいのである。
 
 そういうのは言葉にしなくても、その人に直接言わなくても、雰囲気として伝わってしまう。
 だから、先入観を持ってしまうと、そもそもできたはずのコミュニケーションが始められなくなってしまうのだ。
 
 
 
 筆者は音楽指導に行くことがあるが、特に相手が小学生や中学生くらいの年齢の場合、極力先入観を持たないように心がけている。
 先入観がある見方をすれば大多数の生徒は、「知らない」、「できない」、「分からない」という状態の人が占めるが、先入観を待たずに言うなら、まだ幼いという理由もあるので、まっさらで伸び代しかない状態と言える。
 このまっさらで伸びしろしかない子供達を、さらに実技の面では、今日初めて見る団体の人に接するかのように、姿勢や技術や出来栄えを見ていくのである。
 
 もし先入観を持って他人に接するとしたら、それは敵意を持って接することになりかねない、いや、それとほぼ同じと言えるだろう。
 そういう態度では、お互いに何も得をしないのである。
 
 また、相手が先入観を持っている場合にも同じことが言える。
 こちらがいくら親切で丁寧な態度で接しても、相手が心の壁を作ったままだとどうしようもないのだ。
 それを取り払うだけで何ヶ月もかかり、下手をすると1シーズンが終わってしまうのだ。
 
 自分においても相手においても言えることだが、仮に先入観を持たずに接するようになることに半年かかってしまうとすると、本来成長できたはずのことが半年遅れるということになる。
 だから、先入観を持たずに相手を信頼して接することができれば、最初から技術や心構えなどの育成をスタートできるし、教わる側だってスタートダッシュが切れるのだ。
 
 人と接しやすくしていくためのコツの1つ目としては、「こちらから先入観を持たずに接していく」ということがまず挙げられる。
 
 これは先入観という言葉以外でも、差別や偏見といった言葉でもそうなのだろうが、普段の人間関係においても先入観を持つことでお互いに近寄りがたくなってしまうのである。
 そうなると、そこから良い人間関係を構築していくには容易ではないし、かなり時間がかかってしまうので、良いことは何もない。
 
 
 
 人と接しやすくしていくためのコツの2つ目としては、中立(ニュートラル)でいることだ。
 つまり、他人と対面した時に、「この人はきっとこういう人なんじゃないかな」というような、「相手がどういう人なのか」について、必要以上にあれこれと考えすぎないことである。
 そうした「この人は信頼できるのか」という疑いの心のようなものは、出会ったその日でなく、もう少し回数を重ねたり何ヶ月か付き合ってみてから判断して、もし信頼できないようなら距離を取れば良いのだ。
 
 もし先入観を持った状態で人と付き合い始めるとすると、最初から憶測や妄想を持ったまま判断をすることになるので、相手の悪いことばかりが目について、本当に相手のことを信頼できなくなってしまう。
 その人は、本当はいいところだってたくさんあるはずなのに、それが目に入らなくなってしまうのだ。
 それが先入観を持つということなのだ。
 
 先入観という物差しで見てしまえば、それに合わせて相手を判断することになってしまう。
 だから、そうはせずに中立の状態で接する。
 その人がどうなのかを判断するのはもっと後で良いので、それよりももっと自由に相手と接していくことの方が大切なのである。
 
 
 
 少し大雑把な例で恐縮だが、要は「見た目が怖いから話しかけなかったけど、よくよく話してみるとかなりいい人」というようなものだ。
 こちらで勝手にネガティブな先入観を持ってしまうと、「相手と仲良くしよう」だとか、「他人から接しやすい人だと思ってもらえるようになりたい」とかいうのは、遠く先の話になってしまう。
 特に、ネガティブな先入観を持つことは、その人と仲良くなったり、深く付き合ったり、コミュニケーションを深めたりすることができなくなってしまうのだ。
 
 しかし、逆に言えば、「これはきっと奇跡の出会いだ」とか「運命の人かも」というのだって先入観だが、人生の中でそう何度も巡り会えるものではないのだ。
 だから、どうせ先入観を持つなら、そのコツとしては「相手のポジティブな部分を探せる」方が余程よい。
 相手の長所や得意なところ、どんなところで能力を発揮できそうか、魅力的な部分はどこか、という面を探せた方が、その後の人間関係は上手くいくのだ。
 
 「ネガティブな先入観を取り外してこちらから接していき、中立な状態でいることに努め、相手のポジティブな部分を探していく」ということが、人と接しやすくしていくことにもなり、接してもらいやすくしていくことにもなるのだ。
 また、異なる世代や、異なる業種の人や、異なる考え方の人などと上手くやり取りしていき、人間関係を深めたり初対面の人と上手く付き合うために重要な考え方でもある。
 
 これからも、人と会う前でも対面した時でも、多少の先入観のせいで様々なことを考えたり不安になったりするかもしれないが、とりあえずは一旦横に置いておき、相手がどういう人なのか素直に考えて接していった方が、人付き合いとしてもあなたへの接しやすさとしても、もっと上手くいくようになるだろう。