音楽指導に行くと、質問を遠慮する人がいます。
これは大変もったいないことです。
でも、こういうことは誰にでも経験があったのではないでしょうか。
こちらは「どこが上達したいですか?」とか、
「やりたいことは何ですか?」と聞いているだけなのに、
もじもじと「わかんない」とか、「でも、できないかも」とか、
「自分なんかが」とか、「いくらなんでも自分が」などと言ったり、
うつむいて不安そうな感じになったりして遠慮しています。
こうなると、私に限らないでしょうが、教える側も、
「私はなぜ今日呼ばれたんだろう?」となってしまいます。
もちろん上達したそうなところはパッと見れば大体見当がつきますし、
やりたそうな箇所や反復練習をみて欲しいなどの様子も分かるのですが、
私も駆け出しの頃はこのような事がありました(まだまだ駆け出しですが)。
その人はもしかしたら、誰かに何かを言われて委縮しているのかもしれませんが、
もしその場合は、人の考えや趣味嗜好について「それ、意味があるの?」とか、
「時間の無駄」とかケチをつけてくる人がいるのであれば、
そのことは一旦放っておいてよいのです。
せっかく自分にチャンスが回ってきたのですから、
その時は周りのことを優先して考えず、自分を優先させてよいのです。
こちらは「上達したいところや、やりたいこと」を聞いているだけですし、
何気ないやり取りですから遠慮する必要もありませんし、
初歩的な質問だったからといって、特に怒る理由もありません。
音楽を生業としている人には、中には厳しい世界もあるから異なるのでしょうが、
趣味や課外活動なのであれば、興味本位で聞いてもよいのです。
また、「前にも聞いたけど、また聞いてもよいのかなあ」と思うことでもよいのです。
むしろその方がよいし、何かのきっかけにつながることも多いです。
だから、「自分の聞きたいことは聞く」という姿勢を持っている方がよいのです。
楽団やチームの優先するべき目標なども確かにあると思いますが、
「自分のこの点について、より良くしたいからこれをやりたい」
というものがあるのなら、それはあなたが大切にすべきものですし、
自分が望む結果は自分で掴み取りに行くものですから、
やっぱり遠慮なんてする必要はないのです。
そうして、自分から聞いてみて、分かって、やってみて、
できなかったことができるようになったのなら、
その方が今までの100倍くらいは確実に楽しくなるものなのです。
たった一度の人生ですし、せっかく自分の好きな事をやっているのですから、
遠慮せずに自分の思ったことを質問してみるとよいでしょう。
何かを遠慮したり、「こんなこと聞いたら悪いかな」と思っている時間があるなら、
その何かを、「良い」、「良かった」と言えるようになるために時間を使う方が、
確実に今後の自分のためになっていくのです。
(余談)
渡米中の出来事ですが、向こうの方々は、
「何か質問がありますか?」と聞かれたときは、
十中八九、ほぼ必ず誰かが手を上げます。
それも、一人二人ではありません。
中には「え?今言ったばっかりじゃん。聞いてたの?」と思うような質問もあります。
でもその人にとっては、その時点で最善の状態となるように理解して、
自分のすべき物事に完全に向き合うために必要なのです。
そのことを馬鹿にしたり笑ったりする人はいません。
まあ、国民性というのでしょうか、私にとっては新鮮でしたが、
教える側としても、相手がしっかりと理解してくれた方がよいのです。
それに加えて、質問する人が自分の言葉で質問している最中に、
何かに気付いたり閃いたりする可能性もあるので、
それも含めて、大きな気持ちで質問に答えることが指導者側の姿勢だ、
ということも、その時の指導者から教わりました。
日本では「ちゃんと話聞いてろよ!」と怒られることもあるかもしれませんが、
高い楽器を買ったり、月謝を払って活動しに来ている方も多いですから、
まあ「質問の仕方の訓練だ」くらいの気持ちで考えるようにして、
やはり遠慮せずに質問した方がよいでしょう。
ちなみに子供向けの時は、質問しやすいようにこちらから寄り添ったり、
声を掛けたり、確認する頻度を上げたり、
普段からコミュニケーションを取るようにするとよいと思います。
経験上、その次の回で訪れる時は、
こちらの姿を見るなり向こうから集まってきてくれたり、
質問攻めにあったり、今日までにあった楽しかった日常を話してくれたりします。
強引にやり取りを進めることは決してせず、厳しい発言ばかりするのでなく、
少しでも心を開いてもらえるように、また、こちらも心を開くようにして、
良い意味でお互いの距離が近づくように心掛けることが大切ですね。
自戒を込めて。