音楽指導で人に教えている時には、次のことを気にすることがあります。
教えるには二通りあるということです。
一つは、「そもそも知らないことを分からせてあげること」です。
これから新しい知識や技術を得る人や、まだ知らないばかりに困ったり苦しんだりしている段階にある人に、理解できるように伝えたり練習方法を授けたりするなどして、少しでも良い方向に導くことです。
もう一つは、「分かった気になっている状態であることを気付かせること」です。
分かっていると思い込んでいる人や、分かった気になって肝心なところが抜けてしまっている状態の人に対して、「それ、実は分かってないよ」、「まだ覚えることがあるよ」と、今までよりもさらに隙間なく知識や技術をもって埋めてあげて、もっと良い方向に導くことです。
「教えてあげる」というと一見偉そうに見えるかもしれなせんが、一番最初の段階は普通に教えるにしても、それ以降で相手の進み具合が詰まっているようなときは、どちらかと言えば「インタビュー」に近いかたちで引き出していくことが多いです。
強いて言えば、特に子供になるほど、インストラクターというよりはインタビュアーの気持ちで接する、といった感覚に近いです。
そうして相手が上手く理解できるように導いていくと、その人も、得体の知れない悩みが解決できたかのような、先の見えない反復練習のストレスから解放された安心感を得たような、胸のつかえがとれたようなスッキリした表情に変わるのだ。
業界の先駆者や素晴らしい先生方に比べたら筆者もまだまだですが、教わった人達のそのような表情を見たり、今までよりも希望をもって練習を重ねていく姿勢に変わって、実際に上達していく過程を見られるのは格別です。
こうなってくると、こちらもたまらなく嬉しくなって、やりがいを感じる瞬間の一つにもなります。
そして、実は教えるの意味は二通りだけでなく、他にも三つ、四つと存在するのではないだろうか、と、つい探したくなってしまうのです。