相手の様子をよく見る時に気をつけること メモ

 
 相手と話をしなくても、観察するだけでその人の調子が分かる、という人がいる。
 そういう能力は、自分の親しい間柄の人や、大切にしたいと思う人がいるほど欲しい能力であろう。
 悪い面にはあまり使いたくないが、少なくとも思いやりや気遣いの気持ちといった面には使っていきたいものである。
 
 観察するポイントの一例としては、表情、視線、目つき、目の輝き、表情がイキイキしているかどうか、うつむいているか猫背なのかの違い、話の中にジェスチャー などの体の動きはあるか、喋り方、声の大きさ、姿勢、歩き方、歩幅、全体の雰囲気、などがあり、これらをつぶさに観察していくということが大切である。
 また、相手に会った時のこういった様子を、映像や画像で撮ったかのようにはっきりと記憶しておくことも大切である。
 
 こうしたことを、次回に会った時と比較するのだ。
 そうすると良くも悪くも、会った途端に明らかな違いや違和感といったものに気づくことになる。
 その気づきに基づいて観察していくと、例えば筆者は音楽の指導をしているが、「今日の体調はどうなのか」とか、「前回からどのぐらい上達しているのか」というようなことを、類推したり把握したりできるようになるのである。
 
 必ず毎回というわけではないが、準備をしてから演奏に取り掛かるまでの間で、あらかた想像できてしまうことも多い。
 しかもそれが、しっかり練習してきたか、サボっていたので自信がないとか、個人で練習している時にドツボにハマって現在困っているなど、かなりの確率で当たってしまうのである(それをわざわざ本人に言うという意地悪なことはしないが)。
 こういうことが出てしまうのが「非言語的な情報」という、言葉以外の要素なのである。
 
 
 
 先に述べた観察のポイントをいっぺんにやろうとすると大変なので、まずは表情や姿勢や動きから見ていくようにするとよいだろう。
 筆者自身、人のことなどを偉そうに言えたものではないが、調子が悪い時は大抵、表情も悪くなるし、豊かでなくなるし、自信がなくなるし、動作や目線や言動もそれなりのものとなるのだ。
 
 こういう話はコツよりも経験なので、そういう機会に接していく中で練習していけばよいだろう。
 若いうちや経験の浅いうちは、得意なことであってもなかなか大変だろうから、頭の片隅に意識しておくだけでも良いのかもしれない。
 
 また、これを仕事などで当てはめるなら、例えば接客業なら、「本当に買いに来た人なのか、ただ見に来た人なのかの違い」など、よくあるようなシチュエーションからでも非言語的な情報を分析してみるとよい。
 そうすれば、かなり高い確率で推測が着実にできるようになっていくだろう。
 自分の身近なことや得意なことからちょっと意識してやってみるだけでも、人間が本来持っている能力として少しずつ感覚が変わってくるはずだ。
 
 
 
 話し方や伝え方を上達させるということは大切だが、その一方で、話す以前に相手の気持ちを受け取ったり読み取ったりすることもまた大切である。
 さらに、話さないでも、視線や笑顔などの表情からでも自分の思っていることを伝えることができれば、話上手にならなくてもコミュニケーション上手になれる可能性は上がるのだ。
 
 「非言語情報の観察力」というものを意識してみることで、相手の前回の様子とのちょっとした変化に気がついて、さりげない気遣いができたり気の利いた一言を言えたりする。
 それを相手がどう思うかは知らないが、「細かいところまで覚えてくれている人だなぁ」だとか、「自分のことをそんなに見てくれていたのか」などというように、好意的に捉えてくれる人も多いものなのだ(全員がそう思ってくれるわけではないだろうが)。
 
 話し上手や伝え上手というのも大切だが、言葉でない情報、非言語的な情報を観察していくことで、人間関係がうまくいくきっかけにも繋がっていくのである。