人の話を聞く時にはどのような姿勢を持つとよいか

 
 音楽指導をする先生の中には時折、怖かったり、大きな声を出したり、お説教が長い先生がいます。一方で、優しくて、親切で、丁寧に教える先生がいます。どちらの先生の話であっても、しっかり聞く姿勢を持つことが大切です。
 
 前者の先生の時には「ちゃんとしておこう」、「間違えないようにやろう」と思って気を張ることが多いかもしれません。むしろ、誰でも自然とそうなってしまうかもしれません。怖い先生でも役割の上で練習中はそのようにしているだけで、実際にはそのようなことがないことがほとんどです。
 
 でも、後者の先生の時だからといって、話の最中によそ見をしたり、下を向いて話を聞いていなかったり、だらけた姿勢をしていてもいいという訳ではありません。話を聞く側は、ともすると好き勝手に振る舞ったり、ちゃんとしていなかったり、「集中してなくてもいいや」という判断をしがちになることでしょう。
 
 ここに「弱さ」が現れます。それは、自分で自分の事をコントロールできずに、人の話をしっかり聞く姿勢を自分から解除してしまう弱さです。
 本当にしっかりした人というのは、話を聞く時には、相手がどのような人であってもその話の内容をしっかり聞いて理解することができます。「怖い人だからちゃんと聞こう」、「優しいからそれなりでいいや」、という判断はしないのです。
 
 そして、自分が相手のことを見ているというだけでなく、自分が相手から見られているということも分かっていないといけません(これは先生も生徒も、どっちもどっちですね)。もしかしたら優しい先生の方が実はあなたのことをしっかりと見ていて、さらにはあなたが分かりやすい言葉に置き換えて話をしてくれているかもしれません。
 
 しかしあなたはそのようなことを考えもせず、自分の集中力を解除してしまい、全然関係のない余計なことを考えてしまっているかもしれません。或いは、大事な部分を聞き逃してしまい、周りの人は理解できているのに自分だけ分かっていなかった、ということにもなってしまうでしょう。こういうところが弱点を作ることに繋がってしまうのです。個人であっても、バンド全体であってもですよ。
 
 何かを習う時には大抵そうなのですが、「人の話はしっかり聞く」という言葉だけをその言葉の通りに覚えるのでなく、「その話の主旨や内容はどのようなものか」、「どのような人や物事に向けて話しているのか」、「それを聞いた自分は次にどうするのか」ということを考えながら聞く姿勢を持つことが大切です。
 こういうことを気にするのは最初は誰でも同じことです。少しずつ慣れていきましょう。
 
 
 
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 個人的な経験の上でですが、集団の指導力や統率力の面から見ると、後者の先生(特に若い先生)は一般的には頼りないとか向いてないなどと言われてしまいやすくなりがちですが、実際にはそんなに一面的でもないように思えます。ただし、指示や号令や説明などの基本的なことは、大きな声を出しておくに越したことはないと思いますが。
 
 今日は、優しくて親切で丁寧で的確で、人の心をしっかり掴む話ができる、素晴らしい先生に出会うことができました。その振る舞いを丸々取り入れたいと感じるような、見習いたいと思える人でした。
 
 何年積み重ねても、どれだけ進めど進めど、見習うべき素晴らしい人というものは、いつでも現れるものです。あらためて、自分もまだまだ向上する必要を感じます。