本番で緊張しないために、あるいは緊張してしまった場合に、それを和らげたり取り除くための方法は、「姿勢を正す」ことです。
ここで、姿勢良く心を落ち着かせて堂々としていようとか、優雅に振る舞おうとか、思う人もいます。
それもいいのですが、まずは「姿勢を正す」だけでよいです。
緊張で不安に陥ったり固まったりしてしまっている人は、かなり高い確率で、下を向いて、猫背になって、前かがみになって、視野も狭まって、呼吸も乱れていきます。
別に音楽でなくても武道でも何でもよいのですが、一番最初に習う基本姿勢がありましたよね?
楽器を持っていないし、担いでもいない状態。
竹刀も木刀も薙刀も、何も持っていない状態。
つまり、体だけで作る姿勢のことです。
これから本番で緊張しそうだというのなら、まずは基本の姿勢を正す。
次に楽器を持った状態で姿勢を正す。
もしこれがマーチングバンドでしたら、立ち方、構え方、休み方など、様々な動作としてあるかと思います。
実際に構えのかたちをとってみてもよいと思います。
「緊張しないために」とか「緊張した時の対処のため」とかではなく、儀式のように何よりも先にまず姿勢を正す。
そのくらいのつもりで体に馴染むまで普段からやっておけば、いざ本番になった時も、体が覚えて自然と出てくる動作になっているはずです。
もし出てこないということは、染み付くまで訓練がなされていなかった、ということです。
ちなみに、脳科学としてもセロトニンという精神を安定させる働きをする物質が活性化します。また、セロトニンが姿勢を制御しているとされているそうです。
座った状態の試験などであっても、背もたれを使わずに姿勢を正すだけでも効果があるようです。
「本番でちゃんとやりたかったら姿勢を正すこと」です。
自分がステージやフロアに立った時に姿勢を正せば、全体を見渡すことができますから、当然「いつもの環境と違う」ということを認識できます。
どれくらいの広さなのか。
観客はどのくらい入っているのか。
審査員はどの辺りにいるのか。
指揮者までの距離や台の高さはいつもとどのくらい違うのか。
天井はどのくらい高いのか。
もしも前かがみで下を向いているままでは、何も気づかないでしょう。
何にも気づかないまま何も考えられずに、緊張状態はそのまま続くでしょう。
そうすると自分のことしか考えられなくなるので、心のざわつきや心臓の鼓動の速さなどを、いちいち細かく観察していきドツボにはまっていきます。
そうならないためにも、何よりも先にまずは「姿勢を正す」ことです。
姿勢を正すことができたら、次は「周りや状況をよく観察しておく」ことです。
自分自身をさらに観察してしまって、緊張を高めることではありません。
いざ戦闘態勢に入らなければならない時に、自分以外の周囲の状況や環境に関して何も情報を持たない者は、いつの時代でもどんなことにおいても、「負け確定」と言っても過言ではないのです。
地域によって様々な伝わり方があると思いますが、先生や先輩から、よく、「お客さんではなくジャガイモが並んでいると思え」とか、「よく見ると思ったよりもあくびしてる人がいるものだよ」とか言われたことがないでしょうか。
これは、その人達が緊張感を持った中でも落ち着いて、姿勢を正してよく観察していたから言えることなのです。
あなたにだけできない、などと言うことはありません。
その場に行った時にブレてはならないのは、あなたの緊張感でもメンタルでも目標でも何でもなく、「姿勢」なのです。