できない人への対処、それを責める人への対処


 仕事でも勉強でも何でも、いわゆる「できない人」と言われる人がいます。
 こう言われてしまうは一定数いるものですが、自分だって今まで知らなかったことだったり、始めてやる分野などに触れればそうなる可能性も大いにあります。
 だからせめて、そのように言い放ってできない人の責任にして努力を怠ったり、できない人を一方的に遮断したり排除することは控え、まずは「これからできるようになる人」なのだと思いたいものです。

 こちらが「できない人」を部下や一時的な手伝いとして扱わなければならない時には、特に仕事での指示であれば、こちらの出した指示についてメモを取らせて、直後に復唱してもらってうようにするとよいです。
 作業目的や主旨、内容とその詳細、期日、金額、誰に、など、大事なポイントを5つくらいに絞ってから始めていくとよいです。
 中には面倒くさがる人や「書かなくても大丈夫」と言う人がいますが、「これから大事なことをやるんだから、お互いに手戻りしたくないよね?」と一蹴してよいです。

 もちろん、自分自身が慣れないことをやる場合にもメモを取るとよいです。
 例えば個人的なことで、目的、目標、やるべきこと、順番や手順、何ができたら達成か、などでもよいです。
 応用としてではなく基本として癖がついていれば、漏れ、抜け、手戻りが大幅に減るので、日常としてでも仕事としてでもかなりメリットがあるでしょう。

 こう言ってしまっては何ですが、他人も自分も基本的には「ザル聞き」だし、自分にとって大切な目標ですら忘れてしまうくらいの生き物だと思っておくくらいで丁度よいかもしれません。
 基本的には、頭の中に入っていないことを成し遂げるのは不可能なのです。
 仮に、5つのうち2つしか入っていないとしたら、残りの3つはやれるはずがないのです。

 

 また、他人、特にできない人を責めてばかりいる人は、真面目で誠実な部分も確かにあるかもしれませんが、脳疲労の状態になっている可能性もあるでしょう。
 「人は不安を感じた時に脳の偏桃体が興奮し、戦うか逃げるかを一瞬で判断する状態になる」ということは、様々な研究から明らかになってきます。
 さらにこうした研究に合わせて、人は不安になると攻撃的になるので、他人のことを責めたりする傾向も強まってしまうということだそうです。

 もし自分の近くに、精神的に疲れていたり弱ったりしている人がいたら、少し余裕を持って気遣いをして暖かく見守るとよいです。
 例えば、自分もそれに怒って返さないなど、できることはあるはずです。
 もし自分が同じ立場なら、できない人を一方的に攻め立てないように、冷静さを取り戻すために深呼吸をしてする必要があるでしょう。

 本来そういう性格でない人であっても、こういった状態に陥って攻撃的になってしまうことも、可能性としては多いに考えられるのです。
 健康な状態でさえあれば、安心することさえ出来れば、攻撃的な状態は徐々に解除されていくのに。

 仕事であれば、最低限一人でやらなければならない範囲のことはできるようになる必要がありますので、そこが葛藤を生み出すところかもしれません。
 できないと言われている人は、メモを取るなり反復するなりして漏れ抜けもなく慣れるようにしていき、責め立ててイライラしている人は、どこがどのようにできていないかとか、前回と比べた時の違いなど、より具体的に示せるようにすることです。

 「できない」と言われる側にしても言う側にしても、どちらも代えのきかないハイレベルの仕事ではまず起こらないことであって、大体のことはほとんどの人ができるレベルに落とし込まれていることです。
 それを「この部分でつまづいている」ではなく「自分は(あの人は)仕事ができない」みたいに主語を大きくしてしまっているから、言われる側にとってはプレッシャーになるし、言う側にとっては原因を見つけられないストレスになり、どちらにとっても愚痴とも悪口とも捉えることができてしまうのです。
 お互いにしっかりと分析して、1ステップごとにクリアしながら進められるようにしていくことです。

 

 さて、「自分が何かをできない」という状況は、誰にでも起こり得ることです。
 同じく「相手の状態をどうにもできない」という状況も、誰にでも起こり得ます。

 自分の中にそもそもないものやは覚えないとできませんし、忘れてしまったことは覚え直さなければいけませんから、どちらもめげずに積極的に覚えていくことです。
 また、他人のすべてをコントロールすることはもっとできませんから、今あなたが対応している「できない人」が何とか独り立ちしていくまでには、最初のうちは時間はかかってしまうかもしれません。
 一つずつ段階を踏んでいくことと、一旦我に返って自分の状態を冷静に見つめ直すことが大切です。