学習性無力感に対処する方法


 学習性無力感に対処するには自己効力感を高めることです。
 つまり、「やればできる」という感覚を実感することです。
 やって出来たら「自分にはそうするだけの能力がある」と分かるし、そうすれば今後辛くて大変なことがあっても「自分は乗り越えるやり方も、実行するやり方も分かっているんだ」と認識しておくことができます。

 ちなみに、以下のような対処とは異なります。

  ×心の中で繰り返し「自分はやればできる」と励ましたり言い聞かせる
  ×他人から「あなたはやればできる子よ」と褒めてもらう
  ×「自分は素晴らしい」と思う(これは自己肯定感であり、自分の価値や存在を肯定する力。)

 さて、自己効力感とは、「結果を出すためには適切な行動を選択・遂行する必要がある」ということについて、自分自身にその能力があるのかどうかを認知するための言葉のことです。
 これは、心理学者のアルバート・バンデューラ(Albert Bandura)氏が提唱したものと言われています。
 下記にはその中から、「自己効力感を高める4つの要素」を対処法として記しています。

 また、学習性無力感とは、「いくら努力をしても結果を伴わない、回避できないという状態」を何度も繰り返したり長期間続いたりする経験をしていくうちに「何をしても無駄だ」と学習し、たとえ結果を変えられるような場面でも自発的な行動を起こさなくなってしまう現象や無気力な状態のことを言います。
 その言い方としては、他にも、「学習性絶望感」、「獲得された無力感」、「学習性無気力」とも言われることがあります。

 

●対処法

①達成体験を積む
 とにかく、「自分で選んで実行して、良い結果に繋げることができた」という体験を積み重ねていくということです。
 達成する規模は小さくてもよいし、小分けにした目標でも構いません。

例えば筋トレのステップなら、
 (1)初心者向けの回数やセット数をこなせるようになる
 (2)強化したい箇所に対して適切な効果が得られる方法や強度で自らできるようになる
 (3)効果が現れて、体力も筋力もつき、見た目も精神も変わってくる

 

②代理体験をする
 自分以外の人が目標を達成したり成功したりするのを、見たり聞いたりすることです。
 導入しやすいものとしては、伝記でも、テレビや動画の偉人紹介のストーリーでも、身近な人が資格や賞を取ったなどでも十分でしょう。

 この代理体験を通じて、「あの人ができたなら、自分もできるかも。」とイメージを膨らませたり、良いものを真似して取り入れたり、よく観察して学びを深めて自分に応用したりすることができます。
 自ら学んでいく姿勢を作ったり、身近に成功しそうな人を増やしていくと、代理体験の頻度も上がり、それに比例して「自分も変わろう」というきっかけも増えていきます。

 

③言語的説得を受ける
 「言葉による励まし」のことで、誰かに言葉で肯定してもらうということです。
 実際に上手くいっている他者から「あなたにもできるよ」などと、「自分も成功できる」と思えるような声掛けや評価をもらうことで、自分の中に「自分も行動を起こさなきゃ」という認識を作り上げていくことに繋がります。

 これは②と近いことかもしれませんが、自分と似たような境遇にある情報発信者などでも良いでしょう。
 ただ、今は無気力になっている自分が他人に感化されて、「よし、自分もやってみよう」となることが大切ですから、いちいち色々と否定してくる相手からは即距離を置いた方が無難かもしれません。

 

④生理的喚起(生理的情緒的喚起)を感じる
 「心と体は大きく影響し合うので、心身の状態を良好にする」ということです。
 これは、心と体が負の状況にあっても大きく影響し合うので、今もし無力感と共に波が落ち込んでいる状態にあるのなら、まずはしっかりと栄養と休息を取ったり、リラックスできる時間や環境を作ることが第一です。

 例えば、次のようなことは何においても健康上の基本となります。

  ・健康的な食事(タンパク質、野菜などバランスよく)
  ・適度な運動(汗をかく程度の有酸素運動、筋トレなど)
  ・十分な睡眠(一日7時間以上寝て、寝覚めもスッキリしているなど)

 心身ともに健康でなければ、活力に溢れて気持ちも前向きで余裕のある状態になったり、新しい小さな挑戦を「ちょっとやってみようか」と思うことすらままならないでしょう。

 また、自分の内部に生じた生理的・感情的な変化や状態を意識すると、自信や意欲の向上や自己効力感の形成に繋がると言われます。
 例えば、スポーツ観戦などをして、「すごく興奮できたし、選手もカッコよかった。自分もやってみたいし、上手に出来たらきっと楽しいかも。」となっていくこともあるでしょう。

 他にも、自分が既に何かをやっていて、例えばそれが音楽やスポーツの本番前などの場合で、緊張して脈が速くなっているという状況でも、「そういう変化が出ている。それがなければいつも通りの自分だ。」という意識を持つことで、「これなら大丈夫、できる」と本番での行動に向けて自信が生まれるきっかけにも繋がる、ということです。
 それをやって出来たら、まさに「やればできる」が実現したわけですから、自己効力感の向上にもなるし、同じような程度の問題が今後起こっても「このくらいならできる。やってやるぞ。」と向き合うことができるでしょう。