音楽指導に行くと、自分と自分よりも上手な人とを比べてしまい、自信を持てずに泥沼にハマってしまう人がいます。
自分の演奏技術に納得がいっていない上に、すぐ側に自分よりも上手な人がいたりすると、他人と比べて落ち込んでしまう癖が出てしまうようです。
※この話は年齢の若い人向けに言った話を元にしていますので、少し子供っぽい表現もあるかもしれません。大人の方は読み替えていただけるとよろしいかと存じます。
もしも、この先何年も何年も続けていれば、「あんなにすごい人がいる。よし、自分ももっと上手くなってやろう」とか、「どうやっているのか聞いてみよう」などと思えるようになるものですが、始めて1~2年、特に部活動ともなると上下関係もあるでしょうから、激しく落ち込んでしまったり萎縮してしまう人も、実際にはそこそこいるのではないかなと思います。
結論から言うと、「他人と自分を比べている暇があったら、自分に自信がつくまで練習する」のが良いです。
いつだって、隣の芝生は青いものです。
そのような思いを捨てられずに、他人が上手に優雅に演奏して周りの人とも上手くやっているのを見てばかりいると、「自分は何でダメなんだ」と勝手に自分で自分のことを否定することになり、どんどん自分を下げていくことになります。
このような傾向の人だったら練習すれば何とかなるので、まだ救いようがありますが、腹を立てたり嫉妬したりして、相手を貶めたり仕返しをしてやろうなどと思うような人も、残念ながら中には出てくるかもしれません。
しかし、こっちの方はマズいです。
あなたはそうなってはいけません。
他人のレベルを下げて自分が優位に立つという行為は、何の意味もありません。
誰も得していないし、誰も成長していないからです。
他人と比較をしても意味はないのです。
なぜならば、自分よりも能力の高い人というのは、探せばいくらでもいるからです。
それも、必ずいるものなのです。
どんなに演奏が上手な人でも、どんなに人として優れている人でも、突出している能力はだいたい1つ、稀にあっても2つ程度です。
しかも、恐らくですが、始めて1~2年程度の人から見て差を感じるようなものであれば、能力という言葉の手前の、ある「演奏技術」に限定されることがほとんどでしょう。
例えば、大きくてしっかりした音が出せるとか、運指がよく回るとか、音の発音の仕方が上手、などが該当します。
まるで選ばれた人間が持って生まれてきたかのような、何か特別な能力ということではないのです。
「技術」ということであれば、そもそも人間によって確立されてきたものですから、基本的には練習次第で何とかなるものなのです。
よっぽどハイグレードの教則本や、プロ演奏家の超絶技巧などということであれば、話は変わってきますが。
また、子供だったら体の発達や大きさや筋力のこともありますから、大人になるにつれてできるようになるものもあるでしょう。
さて、楽器の演奏が上手いと言われている人でも、その人以上に上手い人もどこかにいるものですし、その人よりも人をまとめるのが上手な人もいるでしょうし、その人よりも後輩や初心者に教えるのが上手な人もいるでしょう。
また、何か凄い能力を持っている人だって、その他の人と比べたらそうでもない面が必ずあるものです。
でも、そうやって比べれば 比べるほど人間はつまらない生き物になっていきます。
一人の人間がすべての面において一番を取れるわけでもありませんし、そうなる必要も、恐らくないでしょう。
だから、まずは他人と比べないことです。
そして、勝手に比べて勝手に落ち込まないことです。
その次に、自分の良い部分に注目することです。
楽器が上手くなりたいのは分かりますが、その前に、今いるその場所で上手くやっていかれないと、意味ないし、楽しくもないですよね?
楽器の演奏技術に限らず、あなたがいる団体であなたよりも上手に立ち回ってる人はいますよね?
その人って、必ずしも楽器の演奏技術が一番上手な人ではないですよね?
あなたがやらなければならないことは、自分よりも上手な人と比べて落ち込むことではありません。
今の自分の、また、今の自分の技術の「どこに注目するか」というだけでも、物事の見方も、幸せの尺度も変わってきます。
自分がうまくいっていない所の一点だけに注目し続けても、不幸になるだけです。
あなたは自分で月謝を払って、或いは、親御さんから月謝を払ってもらって、参加しているんですよね?
自分で参加している団体に、自分でお金を払って、自分よりも上手な人と自分とを勝手に比べて、勝手に落ち込んでいる。
それっておかしくないですか?
今、自分が上達するためにするべきことは、「今日の練習で『良かったこと』、『できるようになったこと』は何か」を見つけることです。
そっちの方が大事です。
自分が他人よりも負けていたり劣っていたりする点を自分以外の人に見出して、残念がったり、自分はダメだと思い込んだり、腹を立てたり、嫉妬したり、落ち込んだりしてもキリがないので、必ずどこかで片をつける必要があります。
そのようなドツボにハマってしまう前に、それよりも、もっと自分に注目してください。
他人のことについて考える暇があったら、もっと自分のことを考えるべきなのです。
例えば、ですよ?
・自分が演奏している姿を鏡でチェックしてみたことがありますか。
・自分が演奏している音を録音して聴いてみたことがありますか。
・自分が演奏している姿を動画に撮って見てみたことがありますか。
・自分が演奏しているものを、先生や仲間の誰かに聞いてもらい、感想を言ってもらったことがありますか。
・自分の好きな、或いは、得意な技術は何か、言えますか。
・自分がもらった曲の楽譜や基礎練習の楽譜は、覚えましたか。
・音楽以前に、自分が人として持っている長所はいくつ言えますか。
自分と他人を比べて落ち込む前に、このくらいはやってみましょう。
最初のうちは、全然できていなくて当たり前ですから、心配はいりません。
さて、少し話は変わりますが、あなたの自転車には、まだ補助輪がついてますか?
多分ついてないですよね。
もし補助輪がついていたとして、補助輪なしで自転車に乗れる人に対して腹を立てますか?
ちょっと怖いかもしれないけれど、「自分も練習して補助輪なしで乗れるようにしよう」と思って練習しますよね。
客観的に見ても、補助輪付きの自転車に乗っている人が、補助輪なしで自転車に乗っている人に向かって、「自分ばっかり補助輪なしで乗りやがって、バカヤロー。」と腹を立てませんよね?
「私はいつまでたっても補助輪付きのダメ人間」と落ち込んでいるとか、そんなことないですよね?
「アイツ補助輪なしだから、みんなで悪口言って自信なくさせて、もう一度補助輪付きになるように貶めてやろう」とか、絶対おかしいですよね?
こんなこと、あるんでしょうか?
ちょっと考えただけで滑稽ですよね。
でも、実際には音楽活動において、それに近いことをやってしまっていたのかもしれません。
そういうのは時間も労力も無駄ですし、得られるものも何もないですよね。
だから、おかしなことは今日からやめましょう。
大事なことなのでもう一度言いますが、他人と比べて腹を立てたり落ち込んだりしている暇があったら、自分が上手になるために、上手に時間を使っていきましょう。
自分よりも上手い人がいるなら、よく見て技術を盗んだり真似をしてみて、自分とどこが違うのかを見てみればよいのです。
その上手い人に自分から話しかけて仲良くなって、「コツを教えて」と聞いてみればよいのです。
他の仲間に「自分もあの人みたいに上手くなりたいんだけど、どうやってやったら良いだろう」ときいてみればよいのです。
「それが出来りゃあ苦労しねえよ」というのなら、自分で課題を作ってひたすらその達成のために練習に打ち込んでください。
そうして、たった一歩でも、たった1ステップでも、前に進むために時間とエネルギーを使っていけばよいのです。
いずれにしても、相手を下げて勝とうとか優位に立とうとするのは、百害あって一利なしです。
どのような分野においても、です。
もしも、いえ、あなたのことですから、この先必ず何か進展があるでしょうから、そうしたら必ず喜んでください。
そして、「何が良かったのか」、「どうやったからできたのか」について、振り返ってください。
「物事が上手くいった時は、その上手くいく一つ手前の行動を必ずやっている」ということを、自分の頭と体に染みつくまで反復してください。
その一つ手前の行動を、もう一つ手前、もう一つ手前、と、どんどん前に持って行って、「最初の一手目に何をするか」となるまで導き出してください。
今あなたが「あなたより上手な人」と感じているその人は、恐らくあなたと同じように自分を磨いていることでしょうから、あなたが一歩進めばその人も一歩進むことになるでしょう。
でも、是非ともお互いがお互いに認め合える存在になるまで、歩みを止めないで続けていってください。
足の引っ張り合いにハマったら地獄です。
趣味や、部活動や、月謝を払って参加する活動ですることではありません。
どうか一日も早く、自分で自分に自信をつけて進んでいくことができる人になれるよう願っています。