罪悪感を取り払うにはどうしたらよいか メモ

 
 世の中には、過去の出来事に囚われて後悔して自分を責め続けてたり、まだ起こっていない未来のことを考えて不安で押し潰されそうになっている人が、実は多いのではないかと思う。
 それよりは、もっと今に集中するべきだ。
 過去には後悔ばかり、未来には不安ばかりというのでは、気を取られれば取られるほど不幸になるだけなのだ。
 
 過去について言えば、もう起こったことなので、変えられないのである。
 現実世界は映画の世界でも漫画の世界でもないので、タイムマシンもなければ異世界転生もない。
 しかし、今からやり直そうとして、やれる範囲でやれることはあるはずだ。
 
 例えば、「先週、学校や会社で恥をかいた」というのは覚えているかもしれないが、3年前のことはどのくらい覚えているだろうか。
 10年ぶりに同窓会で集まったと考えたら、当時のことをどのくらい覚えているだろうか。
 
 そして、昔のこと、特に、自分にとって恥をかいたり辛い思いをした経験というのは、他の人は全く覚えていなかったりするものなのだ。
 なぜなら、自分も含めて、脳にはその人にとって重要な経験が優先して記憶されるからである。
 脳の仕組みで言うと、脳では喜怒哀楽が大きく動いた時に、記憶を強く定着させる性質があるのだそうだ。
 
 自分としては「過去について後悔したり罪悪感を感じたりして自分を責めるのが普通」なのかもしれないが、それは自分一人の世界のことなのだ。
 それが10年前の出来事なのであれば、今この当時の人と付き合っているということはかなり少ないだろう。
 
 もし、あなたの中に残っている過去の出来事のその時点に一緒にいた人が今はいないというのなら、やはりそれは自分の中での話なだけなのだ。
 それはつまり、過去の話を思い出して自分を責め、それを頭の中で何度も再生し、自分で悲しみを増幅していることになるのだが、過去に対するストレスの在り方でもあるのだ。
 
 こうしたことは自分の意志で断ち切ることができるはずだ。
 断ち切ることが難しくても、それはそれとして「一旦受け入れる」ということはできるだろう。
 脳の中での反応としては、「拒絶や否定をしようとするほど、脳はその物事を鮮明に思い出す」ことになるのだから、「過去のことは 過去のこと」として一旦受け入れて、「終わったことだ」と一区切りつけてしまう方が良いのだ。
 
 人は、現在進行形の継続している物事やその課題のことは忘れないが、終わったことは忘れてゆくものだ。
 だから、過去の出来事でもう忘れたいことがあるのなら、あなたの心の中で一件落着させて終わらせるしかないのだ。
 そのためには、自分の出来事であれば受け入れ、他人との関係であれば許すということである。
 
 
 
 人生には、起きてしまってから「しょうがない」とか、「そういうこともあったな」という結果になる出来事は起こり得る。
 どんなに真面目に取り組んでも、希望を持って頑張っても、失敗が許されないことであっても、もう済んだことはタイムマシンで戻ってやり直すことはできないので、しょうがないのだ。
 「しょうがない」という言葉を使うのが嫌なら、あなたの中でそれに変わる適切な言葉を見つけて、その嫌な過去を断ち切った上で今日からやりたいことをやっていくのだ。
 
 過去を断ち切るためには、その過去を受容することが必要だ。
 そのためには、失敗したり他人を傷つけてしまった自分を許す、あるいは、他人を許すことである。
 「もう自分を責めるのはやめて、自分を許そう。今日からは自分らしく生きよう」と、そう言うか、そう紙に書き出すことだ。
 
 そうして、気分が少しだけでも切り替わるとよい。
 角度が1度切り替わるだけだと、今の時点ではそれほど変わっていないように思えるかもしれないだろう。
 しかしその1度は、時間が経つほどに、今よりも全く違う方向に、ずっと遠く離れたところに進んでいくのだ。
 
 このように、1度変える程度の、ほんの少しだけでも気分を変えるということは、今の自分の持っている言葉でもできることだろう。
 その少しの違いだけでも、今よりも自分や他人を許せるようになれば、許した瞬間から記憶の糸を探りをしようとする力も弱まり、ほどけ、切れて、やがて忘れていくのだ。
 
 
 
 「許せない」というのは怒りの状態であり、そこに作用するアドレナリンやノルアドレナリンは、人間の生存本能に欠かせない強烈な記憶増強物質である。
 怒りがある限りずっと忘れることはできないし、攻撃性も高まるため、自分や他人を責めたくなってしまう。
 「許せない感情」と「攻撃する感情」は連鎖して起こるため、許せないと思っている限り、過去のトラウマになるような出来事から逃れることはできないのだ。
 
 これらから唯一逃れることができる方法は、「許すことで受け入れる」ということである。
 と言っても一朝一夕に逃れることはできないだろうが、せめて嫌な考えが起こった時には、「もう5年も前のことなんだから、諦めよう。」と言ったり書いたりしてみることだ。
 罪悪感、自責、他責といったネガティブな感情は、確かにその当時に起こった事実なのかもしれないが、今では自分の頭の中で想起されて起こっているだけなのだから、上記のような頭の中を切り替える方法を持っておくとよいだろう。