会社、職場の飲み会の利点 メモ

 
 「ノミニケーション」という言葉が昔流行ったが、今の時代でも何だかんだ言って重要な部分もある。
 社内のどんな人でも、ほぼ100%仕事に向き合っている状態というのは日常的に勤務時間帯でよく見ているだろうだが、それ以外のところではなかなか分からないものだろう。
 特に世代が違えば、例えば新入社員や新しく転職してきた人がどんな性格なのか、どんなことに興味があるのか、業務上の建前でなく本音の部分での話はどうなのか、というものは分からないものなのだ。
 
 相手がどんな性格なのかが分からなければ、伝え方もまた分からないものである。
 若い世代やお酒を飲まない(飲めない)人達にとっては会社の飲み会は苦痛に感じる面もあるだろうが(筆者も年末など毎日飲み会が続く時期は苦痛に感じる)、実際に部下を率いる立場からしてみれば受け取り方もまた変わってくる。
 なにせ、部下にとっては上司は一人なのかもしれないが、上司から見れば部下はたくさんいるからだ。
 
 一人一人がどういう性格や考え方をしているのか、普段の仕事の時間だけではそれぞれに気付くことは難しい。
 まして、外出や訪問が多かったり、ずっと常駐や在宅勤務をしていればもっと難しい。
 
 一方、部下からしてみれば、普段はなかなか話せない目上の人に「自分を知ってもらえる」という機会でもある。
 また、ぶっつけ本番で取引先の偉い人と場を共にすることになるよりは、良い練習機会にもなるし、自腹を切るよりは参加費のかなりの割合を上司や先輩が負担してくれる。
 
 一長一短はあるかもしれないが、時期としても忘年会や新年会のシーズンもそろそろ近づいてきているだろうから、嫌だ嫌だと言っていても仕方がないので、とりあえず会社の飲み会の利点を3つほど挙げてみる。
 
 
 
①本音を知ることができる
 「この人は実際のところどう思っているのか」、「前回のプロジェクトはどうだったか」、「先日の取引先のあの対応はどう思ったか」など、本音をざっくばらんに言える場でもある。
 こうした話は仕事中にするにはなかなか難しいので、飲み会で話すのも良いだろう。
 
 業務時間外に業務の話をするのも何だが、それはそれとして今後のフィードバックにも繋がるし、改善点も見えてくる。
 もしも、今後の自分にプラスになることを言われたり、褒められたり、期待されているのが分かるのであれば、それは嬉しいことだろうし明日からのやる気にも繋がるのではないだろうか。
 
 
 
②仕事上の問題解決ができる
 仕事中ではなかなか聞きづらいことだったり、聞いたところで「自分で調べろ」と怒られることかもしれないが、飲み会だったらなぜか意外と答えてくれることが多い。
 普段は細かいことを聞くと嫌がられてしまうことも、飲み会だと教えてくれることが多いので、それを考えると場を活用する機会にもなる。
 
 また、実際のところはあなただけでなく上司や先輩やベテランの社員の人達も、仕事中が忙しいので立ち入ったことや細かいことを話す暇がお互いにない上、指示も報告も必要最低限の端的なやり取りだけになってしまっている、ということはないだろうか。
 みんなそれぞれ抱えている仕事を精一杯やっているのだから、あなたが何かあって質問に行ったとしても、相手は教えたくても時間がなくて後回しになってしまう、ということがあっても不思議ではないだろう。
 
 であれば、そこで腐らずに、飲み会での相談や質問のしやすさを上手く使って、上司を持ち上げながらコツやアドバイスを引き出すのだ。
 そうすると結構勉強になって、普段の仕事の底上げに繋がったりするものなのだ。
 
 「飲み会なんて単なる時間の無駄だ」と思わずに、色々なメリットが発生する場であり自己成長ができる場でもあるということを知っておいた方が得である。
 また、自分の中で今問題となっていることを解決する手がかりが得られる場だと分かれば、それだけで強烈なメリットであろう。
 
 
 
③人間関係の改善の場になる
 仲の悪い人とか、仕事以外では一切絡まない「ちょっと距離のある人」などでも、じっくり話してみると意外と良い人だったりする。
 自分の気持ちは中立的に保った上で、自分のことを嫌っているかもしれない人の横に座ってみるのも、意外と収穫があるかもしれない。
 
 社会に出れば、自分自身は相手を嫌いに思っていないのに、相手の方がこちらを嫌ったり敵対してくるということは割とよくあることである。
 そういう人の隣にわざと座って、「あれどういうことなの?」と突っつきながらコミュニケーションを取ってみると、実は意外と良い人だったり、仕事に対してとても真面目で几帳面な人だと分かったりする。
 「どのようなタイプの人にどのように接するか」にもよるが、仲の悪い人と仲良くなれたり、悪い状態をそこそこの状態まで持っていける力というのは、今の会社ではない場所に行ったとしても相当役に立つ能力なのは間違いないことだ。
 
 心理学で言えば「自己開示の法則」というものがあり、人というのは結局のところ、「相手の腹の中が分からないとお互いに警戒し合ってしまう」ものなのである。
 だからこそ、腹を割って話してみたら「思ったほど悪い人間ではない」という結論になることもまた多い。
 この点を頭の片隅に置いておくだけでも、「飲み会も人間関係の改善の場」として活かすことができる。
 
 何にしても、自分から一切話しかけずに上司の話を聞くだけでいるから、巷で言われるような「最近の若いもんは」という話になったり、「俺の武勇伝」を聞かされる羽目になったりするのだ。
 こちらから積極的に質問したり、普段抱えている悩みを相談したり、細かいことを確認したりするということがいつもより気軽に聞けるのだから、そういう機会を自分から活用すれば良いのである。
 
 
 
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 いつか上司になったら分かるだろうが、自分のあれやこれや様々な「上司たる悩み」なんて、誰にも開示したくない。
 「最近の若いもんは」も、「俺の武勇伝」も、「昔は良かった」も、そんな話はしたくない。
 みんなには普段できない話をして欲しいし、上司や先輩を上手に活用してほしいのだ。
 
 もちろん、「部長は会費15000円でお願いします。課長は1万円です。係長は8000円です。その他の皆さんは3000円です」と言われたって「マジかよ」とはならない。
 やがて外に出て、知らない取引先や顧客と会ってお酒が入った時にでも、失礼のないように上手にやり取りできるように、上司や先輩を上手に活用して欲しいのだ。
 
 飲み会は決して遊び場ではなく、仕事の主戦場の一つでもある。
 そして、自己成長の場でもあるし、知らないことを一つでも教えてもらえたら次に繋がるのだから、気持ちだけでもいいから学ぶ姿勢を持って参加してみることである。
 
 もしも、上司の方がうっかり自慢話や武勇伝をしてしまった場合は、心の中では「しょうがねえな」と思いつつも、そこから学べるものを学びとり、優しく接してあげて欲しい(それが面倒くさいから参加したくないのかもしれないが)。
 その一方で、くだらないと思える話を学びに変えるためには、「適切な質問の仕方」が必要になってくるのだ。
 
 「具体的にどうやったか」、「クレームにどう対処したのか」、「予算も人員もない中でどう乗り切ったのか」ということを上手に質問して欲しい。
 上司というのは基本的に口が堅いものだから、その上司から上手く引き出すことができれば、恐らく書籍やセミナーなどでは学べない本当のノウハウというものが学べるのだ。
 
 
 
 ちなみに、筆者は音楽の面でも活動しているので、様々な先生方やレジェンドと言われる人達とお酒の席を共にすることがあるが、正直なところ忘年会や新年会ともなれば「酒飲み集団」である(悪意では言っていない)。
 人から教えてもらえる機会というのは普段はほぼないし、ある一定以上はみんな独学で勉強したり、良くも悪くも経験して乗り越える以外にない。
 だから、参加することにほぼメリットしかないし、万が一自分の方が先に酒に飲まれて礼儀を欠くようなことがあれば、まさに一巻の終わりと言える。
 
 話は戻るが、何にしても、そもそもそこに参加していなければ話にならないことだし、そこで黙って話を聞いているだけではメリットも何にも引き出せないのだ。
 自分から適切な問題意識を持って自分から話しかけてみたり、自分から人脈を作ろうと思って話しかけてみたり、相手の話を引き出そうとするような積極的な態度で話に加わっていくことで、苦痛だったはずの仕事の飲み会が大きなメリットを得られる場に変わっていくのである。
 
 一昔前は、「大切なことは喫煙所で決まり、出世はゴルフで決まる」と言われるようなとても残念な時代もあったが、お酒に飲まれないようにさえ気をつけて参加していれば、今の時代はそれに比べたら何倍もマシだ。
 そして、そこで自分の身になることを一つでも得られるようにすれば、その後の自己成長を加速するエネルギー源にもなるのだから、飲み会の場というものをもっと上手に活用すべきだ。
 筆者の経験上、中にはノミニケーションをしたいと思っている人も、ノミニケーション世代そのものという人もまだまだいるから、そこに上手くハマった場合は「当たり」だと思って、せっかくだから遠慮せずに自分のことをアピールしてみると、意外なところで道が繋がることにもなるのである。