他人の話や仕事の流れからズレないためにできること

 
 他人の話の流れや質問からズレた受け答えをしないためには、普段から練習するのみである。
 相手がどんな回答、論点、基準、内容を求めているかを察する力というのは、とりわけ仕事においては極めて重要な技術や能力と言える。
 なぜなら、相手が求めることを上手に返してあげることができる力というのは、単純に喜ばれることであり、評価されることであり、対価を受け取る資格があるべきものだからだ。
 
 相手の要望と違うことをしてしまうと、がっかりされるし評価も下がる。
 一生懸命頑張ることは誰にでもあるが、もしあなたが会社で上司などから評価されていない場合、上司の要望に対するあなたの提案や回答がズレている可能性が考えられるだろう。
 つまり、上司やクライアントが自分に何を望んでいるか、どのような仕事をして欲しいか、どのような結果を返して欲しいかを察してやり遂げる、ということが大切なのだが、それが満たされていないのである。
 
 しかし、「普段から練習するのみ」は言っても、1から10まで一朝一夕にできるものではない。
 だから、普段から「この人は何を望んでいるんだろう」とか、「この人はどう思うんだろう」ということを考える癖をつけ、「この言葉を投げかけたらどのようなが反応があるのか?」と気遣ったり感じたりしながらコミュニケーションのトレーニングをしていくと良いだろう。
 
 
 
 例えば、「コレ、どう思う?」などと聞かれることがあるだろう。
 筆者はIT業界にいたことがあるので、そうでない業界にいると、上記のような主語や目的語が省略されてしまっている会話がなんと多いことかと思う。
 察するのも確かに仕事のうちかもしれないが、しかし、話の流れが行き違う原因の多くは、こうした残念なやり取りにあると言っても言い過ぎではないだろう。
 
 だから、「ここはトレーニングだ」と思って、質問しつつ仕事や話の流れを補ったり、そもそもの話の目的を確認してみた方がよいだろう。
 ただ、「コレってどれ?」と返すだけでは相手だってカチンときてしまうだろうから、例えば「はい、どの部分についてでしょうか」とか、「成功確率のことでしょうか」とか、「進捗状況のことでしょうか」とか、「色のパターンの話でしょうか」とか、その現場によって聞き方は様々だろうが、思いつく限り確認をしてみて、確認の「勘所」というものを養ってみるとよいだろう。
 もしかしたらこの勘所がつくだけでも、仕事の成果も信頼度もグンと上がるかもしれないのだ。
 
 「言葉が足りなかったばかりに、最初に思っていたのと違う結果になる」というのは、あまりあって欲しくないことだが、残念ながら時にはあってしまうものだ。
 上記のように確認する以外にも、こちらからどんどん質問するとか、進捗の報告をこまめにするとか、ちょっとしたことでも相談するなど、様々な方法があるだろう。
 
 また、上司や先輩だって人間なので、彼らが言葉足らずなこともあるし、疲れている時だってあるし、うっかり抜けたり見落としたりしてしまうこともあるかもしれない。
 しかし、どうせ言われるなら(物事には程度というものはあるが)「あいつは確認魔だ」と言われるくらいこちらから確認したりコミュニケーションをとっていった方が、「あいつはすぐにズレちゃう、分かってない奴」と言われるよりよほどマシだろう。
 
 
 
 何か物事を進めていれば、上手くいかない時というのはあるもので、そうした時はどうしても自分中心に考えてしまうものだ。
 それを責めるつもりは一切ない。
 ただ、上手くいかないのはもしかしたら「自分の基準で頑張っている」というところにハマっているだけで、実は上司や会社の基準から見るとズレている可能性がある。
 
 本でも何でも、「望まれたことに対して上手く結果を返せると評価される」だなんて、言うのは簡単だ。
 しかし、何となくやっていたって何も変わらないので、日頃から求められている仕事やその成果の出し方について考えておくことは大切である。
 よく「要領の良い人」と言われる人がいるが、ほとんどの場合その要領の良い人は、「仕事は大したことないのに上司に取り入って気に入られてる人」という意味だけではないはずだ。
 
 相手の針の先に対してピッタリと自分の針の先を当て返すように、相手の望んでいることに対してピンポイントで察して、望む結果を返すことができるのである。
 また、そうした人は最小限の労力で事を終わらせて評価されるということもできることがほとんどだ。
 もし今いる集団の中で上手くやっている人がいたらチャンスなので、見つけてモデリングをしてみるとよいだろう。
 
 
 
 一般的に、「ズレている人」というのは、自分がズレていることにすら気づけていないことがほとんどだ。
 しかし、それに気付けただけでもズレを何とかできる見込みは十分過ぎるくらいにあるはずだ。
 だから、あまり心配し過ぎず、少し勇気を出して、こちらから質問や確認をしに行くなど、今できることをやっていった方がよい。
 
 今よりも少しでも良いから、自分に求められていることを普段から考えるようにして、「相手の望むことはこれかな?こうかな?」と試してみる。
 そうして今進めていることを補正したり軌道修正したりしながら日々の仕事に取り組んでみるからこそ、スムーズな仕事やコミュニケーションができるようになっていくのである。