継続案件は記憶に残り、終了案件は記憶に残らない メモ

 
 「赦す(ゆるす)」という行為は重要である。
 よくあるのが自分以外の人間との関係性について、赦せない、憎んでいる、根に持っているというネガティブな感情が伴うことだ。
 例えば、親から厳しく育てられた、操作的や支配的に育てられたとか、他人からいじめられたり、嫌がらせをされたりといったことが挙げられるのではないだろうか。
 
 こうした憎しみの感情は、自分自身に対して継続的にストレスを与え、その都度常に大嫌いな相手の顔を思い出すことになる。
 或いは、その大嫌いな人の言動やその時の体験がフラッシュバックされることになる。
 
 これを断ち切るためには「受容する(受け入れる)」必要がある。
 普通、自分がひどい目にあった体験は受け入れられるはずもなく、絶対にやり返してやろうと思ってしまうものだが、これを受け入れられるようになることが、すなわち「赦せる」ということになるのだ。
 
 「赦す = 受容する」となるためには、自分の過去の体験を自分で受け入れることになる。
 そのためには当時の相手を赦さなければならず、今でも敵対心を持ち続けているならば赦していないということであり、且つ過去の人間関係や自分の体験に抗っているということなのだ。
 「抗い」はストレスの大きな原因の一つであり、抗うからこそ余計に疲れてしまい、精神的なダメージを受け続けてしまうことになるのだ。
 
 
 
 そうは言っても、それはとっくに過去の出来事なので、どこかで踏ん切りをつけて忘れてしまえば、そこから新しい人生を生きていけばいいだけの話である。
 しかし、現状で赦せていないということであれば、自分自身で過去を思い出してメンタルを痛めつけているということになるので、早めに何とかしなければならない。
 だから、「受容する」、「赦す」という行為が必要になるのだ。
 
 心理学では「ツァイガルニック効果」という用語があり、それは次のような法則なのだそうだ。
 ①継続案件は記憶に残る
 ②終了案件は記憶に残らない
 
 つまり、一件落着したことは忘れられるが、まだ続いていることは何度も思い出される、ということである。
 もし、過去の虐待やひどい目にあった体験を赦せないと思っているなら、心の中ではそれは継続案件と認識されるため、当然忘れることは不可能となり、これからも引き続き思い出されることになる。
 だから、それを一件落着させることが重要なのである。
 
 その一件落着をさせるためには、一つは「感謝の手紙を書く」ことで言語化して強制的に終了案件にさせるという方法がある。
 例えば相手が自分の親なら、ひどい目にあったかもしれないが、お世話になった部分も必ずあるはずなので、その部分に感謝をすることはできなくはないはずだ。
 
 要は、「憎しみ」というネガティブな感情を「感謝」というポジティブな感情に置き換えるのだ。
 そうすることができたなら、その事柄が今後も継続的にストレスをかけてあなたを痛めつけ続けることはなくなっていくはずである。
 そのために「赦す」ことがとても重要な鍵となるのである。
 
 
 
 「そんなこと言ったって赦せない」と思うかもしれないが、赦せない限りは治らないと言えるだろう。
 受容できない胸に痞えたままの感情では害になるし、そのままでは治らないのだから、まずはその痞えを取ることである。
 もしそれができなければ、自分を癒すことであり、受け流すことである。
 
 受け流すにしたら、例えば「10年も前のことを今更思い出してもしょうがない」というように、「しょうがない」という言葉を使ってみれば良いが、多くの場合は10年経っても引き摺ったまま、未だに気分が落ち込んでしまうのだろう。
 過去のことは過去のこととして切り捨てていかなければならないのに、自分でダメージを作り出しているのだ。
 
 受容できないならそれなりに、「しょうがない」という言葉で切り捨て、決別していく。
 それが受け流すということになるので、もし受容できないようなら受け流すことから始めてみると良いかもしれない。
 
 反対に言えば、赦すことさえできれば色々な心の変化が起こってくることになる。
 憎しみの感情などは非常に強烈な負の感情なので、心をマイナスに引き込むのはあっという間だろう。
 そのようなネガティブな感情を持ちながら精神的に良好な状態になることは難しいからこそ、赦すことで良好な状態へと切り替えていくのだ。
 
 心の中の痞えを持ちながら日々悶々と過ごしている人は実に多いことかと思う。
 しかし、そこから解放されるためには「赦すこと」であり、「受け流すこと」であり、究極的には「感謝すること」となるのだ。
 筆者も心が荒ぶり、逆巻き、渦巻くことも時にはあるので、是非とも参考として、穏やかに対処していきたいものである。