過剰に高ぶった怒りや不安を鎮め、気持ちを落ち着かせる方法


①未来志向の発想をする
 自分の怒りっぽさを抑えるには、未来志向の発想をすることです。
 未来指向とは、自分の未来やそこでできることを心に思い描いたり、未来へ今後の目標を定めて向かおうとすることです。
 また、未来の自分像がしっかりしているほど、「〇〇をして××が起こってしまうといけないから、やめておこう」とか、「今ここで我を忘れて怒り散らすよりは、後々のことも考えて冷静に客観的に理解してもらえるように自分の主張を伝えよう」というような対応もできるようになっていきます。

 自分自身のイメージや、これから先の方向性や目標や人間像などが定まっていれば、心が乱れても一時的に取り乱しても、すぐに軌道修正をすることもできるでしょう。
 もしこれから始めようと思うなら、例えば簡単なところで言えば、基本的には「いつもニコニコ元気よく、怒らず、次のテストで前よりも良い成績が出せるように今日できることをやろう」などという気持ちで取り組んでいくことです。
 そして、良好な人間関係を継続的に保っていくことを心掛けると良いでしょう。

 

②周囲にある物の名前を言う
 「瞬間湯沸かし器のように怒る」とか、「堪忍袋の緒が切れる」などという言い方をされることもあるでしょうが、実際に怒りそうになることはあるものです。
 また、怒りっぽい人や限界を迎えるタイミングの時は、そもそもの余裕がなくなっている状態のことが多いかと思います。
 今自分が怒りそうであることに気づいたらすぐ、次のような対処をすると良いです。

 ・周囲に目についた物の名前を言う
 ・一から数を数えていく

 これは頭の中で自分で言っていくだけでも良いです。
 アドレナリンの分泌は6秒間でピークに達すると言われています。
 ですから、それまでの間に怒っている内容とは関係のないことを考えて、その考えを持続させてみることです。

 怒りっぽい人は心筋梗塞や脳血管疾患になりやすいそうで、アドレナリンが出やすくなることで心臓に負担をかけてしまうことに因るのだそうです。
 この対処で上記のようなの健康上のリスクを避けたり、我を忘れるほどの怒りがすぐに落ち着くのなら、かなりの価値があるでことでしょう。 
 筆者の経験上、実際にやってみるなら、物の名前を言う時は、物の少ない部屋や、広すぎる場所で目につくものが遠くにあるというパターンもありましたので、数を数えることからやってみると良いかと思います。

 

③論理で感情を切り替える
 寝る前に不快な体験を思い出して怒って興奮したり、人から嫌なことされたり言われたりしたことを細かく思い出してしまって、事あるごとに苛立ったり腹を立てたりすることは、誰にでもたまにはあることでしょう。
 こういう時は、その怒りや不安などの感情が高ぶってしまった時に、その時に思っていることに対して次の点から正当性や根拠を疑ってみるとよいでしょう。

 (1) なぜそういった考えや感情が生まれるのか
 (2) それは真っ当な反応や感情と言えるのか

 自分が感情を取り乱している時にはこの点を自分に問いかけ、できるだけその時点で考え得る完璧な論理をもってその感情に介入し、自分とその出来事に対して一段高いところから俯瞰して、頭を働かせてみることです。
 相手から何かされたり言われたりしたことが頭にくるのも分かりますが、仮にその相手がどんなに嫌な事を言ったり知識をひけらかしてきたとしても、あなたがあなたの人生の中で体験してきたことやその目で見てきたことを、その人は実際に経験することはできないのです。
 それなのに、一方的にあなたに対して何か言っているに過ぎないのです。

 さらに、本来ならばあなたと交流をすることで得られたはずの体験や時間などがあることに気付かず、或いはそうしたことを気遣うことなく放棄して、何ならあなたを見下したりしているわけです。
 あなただけがその人に怒りの感情をいつまでも持ち続けているのは馬鹿げたことあり、まったく真っ当な考えではありませんから、腹を立てるよりもむしろ、「可哀想な人だな」と考える方が自然なのではないでしょうか。
 ちなみに、この場合は「論理をもって激情を憐憫に切り替えた」ということになります。

 このように、論理によって激しく高ぶった感情に介入することは、攻撃性が過剰に高まっている自分を鎮めることにつながります。
 特に、「思い返しても腹が立つ」という状況を何度も繰り返して抜け出せない時に役に立つでしょう。
 ですから、この方法を身に付けて、いち早く気持ちや感情を切り替えられるようにして、自分の人生で本来すべきことに集中したり、睡眠不足を回避して健やかに過ごすためにも是非お勧めしたい方法です。

 

④「そういう人もいる」と受け流す
 ごく稀に度をこして非常識な人や、嫌味を言う人や、侮辱的な言葉を言う人などと場を同じくしてしまうことがあります。
 筆者も人様のことなど言えたものではないのかもしれませんが、こういう時にイライラしたりムカムカすることは誰にでもあるでしょう。
 その時のストレス度合いが大して問題ない状態なら、「よくある小さなストレスだな」くらいの大らかな気持ちで受け流したりすることができるのですが、こういうことをやり過ごせずに溜め込んでしまうような時期に陥っている時はやはり辛いものがあります。

 ストレスにやられて精神的に病んでしまわないようにするためには、「日々の小さなストレスを上手に受け流す」ということが大切ですが、その時にできることの一つとして、「そういう人もいる」と考えることです。
 一歩表に出れば、例えば電車に乗っていてマナーの悪い人を見かけることくらい、たまにはあるでしょう。
 しかし、そこに対して一つ一つ腹を立てていたらキリがないし、毎日外に出る度にそのような光景を見るにつけ腹を立てていたら、ストレスだらけで自分が参ってしまいます。

 だから、こういう場合は「そういう人がいるなあ」と思って受け流すのです。
 もし、明らかに一方的に不特定多数の人に迷惑をかける行為だったり、犯罪めいたことををしているような人だったら話は別ですが、ちょっとしたことを受け流さずに腹を立てていると、大事な時間を使って自分を傷つけたり損をさせているだけなのです。
 そもそも、「他人を変える」ということは身近な関係の人ですらほぼ不可能なことなのに、まして見ず知らずの他人に対して、なぜそこに時間とエネルギーを使うのでしょうか。

 また、例えば職場の上司が怒りやすくて言葉遣いも荒い人で、こちらにイライラをぶつけてくることがあったとします。
 そういう時でも、「あの人はかなりの確率でイライラしやすい性格の人なので、まあ、いつものことだなあ」と思って受け流して、「仕事は仕事だ」と割り切ってドライな関係でもいいからあなたのすべき仕事をきっちりこなせばよいのです。
 他人のネガティブな特徴を発見する度に腹を立てているより、自分の仕事ややるべきことをバリバリこなし、自分の人生をもっと健康的に楽しく生きられるようにしていくべきなのです。

 

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 「十人十色」という言葉がありますが、辞書の上では10人いれば色々な人がいるという意味だけ知って終わってしまうでしょう。
 しかし、現実の十人十色としては、優しい人、親切な人、思いやりのある人もいれば、変なことをする奴がいたり、怒りっぽい人、マナー違反をする人、人の感情を逆撫ですることに喜びを感じる人もいるのです。
 ただ、そう言う人を見たり出会ったりする度ごとにいちいち腹を立てたり不安になったりして反応するのは、あなたのエネルギーの無駄使いであり、あなたの貴重な人生の時間の無駄なのです。

 また、心理学では「1対2対7の法則」と言われるように、例えば自分の職場などで10人いたとしたら、あなたのことを嫌う人が1人、好きになってくれたり応援してくれる人が2人いて、残りの7人は中立的な人であるという考え方があります。
 それを基に考えるなら、あなたのことが嫌いな1人に注目するよりは、自分にとってプラスになる可能性のある2人や、より良い関係になるように働きかけたいと思える7人に時間を使った方がよほど良いことなのです。
 「ネガティブな人に注目するか、ポジティブな人に注目するか」という視点を変えるだけで、ストレス度合いも人間関係も大きく変わっていくことになるでしょう。

 

 あなたの貴重な時間やエネルギーは、あなた自身やあなたのことを大切にしてくれる人のために使った方が良いということは、わざわざ考えるまでもないでしょう。
 そのようにしていくからこそ、普段から一生懸命良い関係を築こうとしたり、仕事でお世話になった人がいたら恩返しをしようとしたり、大きな実績を残した後は後進の育成に取り組むなどの、ポジティブな関係性を築き上げていくことができるのです。

 怒りが込み上げた時は、「どこに注目するか」という視点が大切です。
 ただそうしてみるだけで「ストレスになるかどうかは自分次第だ」ということを思い出させ(すべてに対応できるわけではありませんが)、瞬く間に通常の平常心の状態に戻すきっかけを掴めるようになるのです。