物事を「上手くやる」ためにできること

 物事の達成のために、以下の点についてざっくりと備忘メモを記す。
 キーワードは「記録」、「手順化」、「再現性」である。

 筆者は幾つかの業種を経験し、IT業界にいたことがこれまでで最も長かったが、物事を達成させるためには業界に限らず共通していることが多い。
 また、物事の達成は、一度の挑戦で達成できてしまうこともあるが、大抵は最初は上手くいかずに何度かトライすることになる。
 望む結果が出ないと嫌になることもたまにはあるが、自分がどうしても成し遂げたいことがあるのなら、根気よく地道に進めていくことである。

 と言っても、根性とか気合いとかばかりが地道ではないし、じゃあゼロから自分がすべてを作り上げていかなければならないのかというと、そんな決まりもない。
 既に存在しているもので使えるものがあったり、上手くいった先例があればどんどん活用した方が良いし、それで上手くいく勝ちパターンを作れればその方が良いのだ。

 ただ、時には誰もやったことがないところに道を作らなければならない時がある。
 ネットで調べても、本屋に行っても、会社の資料にもないし、それをやったことがある人が周りにもいない。

 しかし、そのような時はやはり地道にやるしかなく、しかもあなたがたった一人でもやるしかない。
 ちょっと上手くいった部分を次からは当たり前として確実に再現できるようにして、それらのかけらを集めながら大きな目的の達成に漕ぎつけなければならないのだ。
 対象となる物事の程度によるが、大まかには以下のような流れとなる。
 


 (1)成し遂げたいと思っていることを具体的に書き出す。

 (2)その物事について、実際にやってみる。

 (3)やったことを振り返る。
  ・上手くいった場合、再現性を見つけ出す。
   →同じようなことが起きた時に使えるようにしておく。
   →次に成し遂げたいことに向かっていく。

  ・上手くいかなかった場合、原因を見つけ出す。
   →(4)へ

 (4)原因を解消する方法を学ぶ、調べる。
  →再挑戦として(2)へ。

 

 次に、何か物事が上手く行った時は、次のことを書き留めておくと良いだろう。

①どのようにして上手くいったのか
②再現性を高められるものは何か
③どのような感情になったか

 

①どのようにして上手くいったのか
 目標や計画を立て、実行に移した結果上手くいったという場合は、そもそも段取りや記録といった行動をやっているであろうから、そのまま次に向かって進んでいけばよいだろう。
 しかし、中にはそうではなく、思いがけずに上手くいってしまうこともある。
 そういう時には「上手くいった原因やきっかけ」を書き出して客観視してみて、自分自身であらためて気付きを得たり、理解をしておくとよい。

 個人的にやることなら、記録はノートの端っこでも、日記などのついでに一行だけでもよい。
 ただ、未知のことを進めていくのなら、出来れば1ステップずつ書き留めていった方がよいだろう。
 なぜなら、記憶というものは時間が経てば経つほど自分の中で曖昧になっていき、最悪の場合、上手くいったことすら忘れてしまうことになるからだ。

 だから、どんなことをしたら上手くいったかを書き残しておくとよい。
 できれば、手順としてまとめることができていれば尚良い。
 長い人生の中では、こうした地道で面倒なことでも積み重ねて記録しておくことが、後になってから確実に効いてくるものなのである。

 

②再現性を高められるものは何か
 ①に近い内容かもしれないが、上手くいったものの中にはどんな要素があったかを知っておくことも良いことだ。
 その中で「これとこれをやれば再現できる」というものを見つけておくと良い。
 
 実際に上手くいった時は「2回目に同じことをしても、同じ結果が得られるか」ということを確認しておく必要がある。
 なぜなら、もしも再現できないとしたら、それは1度目の成功が「まぐれ」だったということに外ならないからである。

 そうして「狙い通りの結果」を常に再現させることができるようになれば、自信が手に入る。
 自信がある人生とない人生では雲泥の差なのは言うまでもない。

 その次は、今回得た成功の記録を「同じような事象」に応用させていくとよい。
 その時は必ずしも上手くいくとは限らないが、少なくともイイ線まではいかれるだろう。

 そうやって「成功とその要素」がぼんやりとでも分かってくるようになると、今まで言葉や文字にしていた「ビジョン、目的、方向性」といったものや、「目標、計画、段取り」、といったものが、一段階レベルの高いものになる。
 さらに、自分の考えと行動に対して「今までよりも多くの成果」や「質の高い成果」を得られる可能性も高まってくるだろう。
 より良い人生にしていくために「成功の再現性」を見つけておくことは、大切なことである。

 

③上手くいった時どのような感情になったか
 「上手くいった時にどんな気持ちになったか」、「しばらくどんな気持ちが続いたか」、例えば安心感や達成感など、その時に感じていることを書き残しておくとよい。
 できれば、読み返してもその当時が鮮明に思い起こされて感極まってしまうくらい、自分の言葉でその時に書ける限りやっておいた方がよいだろう。

 なぜなら人は、いとも簡単に不安に陥ってしまう生き物だからである。
 しかも、誰からも教わっていないのに、誰からも頼まれてもいないのに、自分自身で妄想した不安を、これでもかとばかりに増幅させる天才もまた多い。
 不安に陥った時に、その不安なことに対して集中すればするほど、それがその人の頭の中から勝手に湧いて出てきたものであるにも拘らず、あっという間に、且つ、無尽蔵に膨れ上がってしまうのだ。

 だから、上手くいったときの感覚や感情を言葉にして残しておくことだ。
 必要なのは、上手くいったときに得られる感情や感覚というものを、普段から思い起こしておくことだ。
 ほとんどすべての人の得意分野と言っても過言ではない「不安の増幅」について、何の対策もせず無防備のまま、今回もあっけなく自動的に発動させてしまうことではないのだ。

 まあ現実では、物事には多少の不安というのはつきものではあるが、そもそも上手くいった時の感覚というものを知っておけば、何かあった時でも自分で奮起して持ち直したり、プラスの感情に変換したり、ワクワクを増幅させる、といったことに繋げていくこともできるようになる。
 そして誰しも、自分で成し遂げたことで良い結果を得たり、この上なく嬉しく感じたり、幸せな気持ちで満たされたりしたことは、「もう一度味わいたい」とか、「いつもその状態にありたい」と思うのが常であろう。

 であれば、自分で実際に起こした成功体験の中から思い起こす良い感覚とか、次の成功のイメージを作るなどして、そちらの感情を増幅させる頻度を上げる方がよいのだ。
 まだ起きてもいないことで不安を増幅させる頻度の方が勝ってはいけないのだ。
 もう一度言うが、だから、上手くいったときの感覚や感情を言葉にして残しておくことが必要なのだ。

 不安を妄想して勝手に膨れ上がらせるのは人間の生存本能だというのであれば、幸福や安心を求め続けることも人間の本能である。
 現状維持もまた人間の本能というのであれば、当然自分で勝ち取った良い現状がこれからも維持された方がよいし、それが土台、それが当たり前としてしまう方がよい。

 

 こうした上記のようなことを知っておき、今の自分に身に付けながら、上手に活用していくとよいだろう。

 「成功した人は、単にそうなるための習慣を持っていただけである。」
 (ブライアン・トレーシー 米:実業家、作家)