心の図太さを養うには メモ

 
 生きていく上で、困難を乗り越える逞しさや、落ち込んでもすぐに立ち直れるしなやかな心や、細かいことは気にしない大らかな心を兼ね備えていくとよい。
 いつも心を乱して、怒ったり、悩んだり、不安になっているよりも、勇気、やる気、自信を持って、堂々としていたほうがよい。
 しかし、こうしたことをうまく言葉にできず、また行動にも起こせず停滞している時は、何からやっていったら良いだろうか。
 
 
 
①物事を現実的に考える
 仏教では、物事を現実的に考えることを「あきらめる」と言い、「現実を明らかに見る」という意味なのだそうだ。
 例えば、合格率3割の試験を受けるとして、「ダメ元かもしれないけれど、対策を立てて頑張ってみよう」と現実的に考えて事に当たるのか、「自分ならきっとうまくいくから、絶対大丈夫」と勝手な期待をするのかでは、心のあり方も起こす行動も全く違う。
 結果としてダメであっても、前者なら様々な分析ができそうなものだが、後者なら自分を責めてお終いだろう。
 
 また、仕事でも何でも、大変なことはあるものだし、最初は上手くできないものだし、教えてくれる人は口やかましいのが当たり前である。
 こうした現実を分かっているから、粘り強い努力もできるのである。
 しかし、特に何の根拠もなく淡い期待ばかり抱いていたり、見積もりが甘かったり、誰かに褒められたいというつもりでやっていたら、たった一度の小さな失敗で落ち込むし、上司や先輩に怒られたことをきっかけにやる気を失って、病んでしまうかもしれないだろう。
 
 現実においては、嫌な人や、相性が合わなくて苦手な人というものは、必ず出てくるものなのだ。
 そもそも我儘な人や、あなたの手柄を横取りするようなずる賢い人も、必ずいるものなのだ。
 現実を受け入れている人は、いわゆる「めんどくさい人」に巡り合っても、なるべく関わらないように上手く対処するのである。
 
 それを、現実を無視して「みんなと上手くやっていきたい」と淡い期待を持っているから、「嫌われたらどうしよう」とか、「怒らせてしまったらどうしよう」と必要以上に気を使って、普段からオドオドしたりビクビクすることになるのだ。
 先述の我儘な人やずる賢い人は、こういう人が大好物なのだ。
 だから、同じような人がどんどん集まってくる上に、全部吸い尽くされて、都合のいい人にさせられて、全部あなたのせいにさせられて、終わりなのである。
 
 すべてを改める必要はないが、これからは少しは現実を見て予測を立てたり、起こりそうなトラブルを事前に想定してから行動するようにしていくとよいだろう。
 自分一人の力では及ばないことはさっさと諦めて、それよりも、その時にできることをして回避するなり、軽減させるなり、すぐに別の案で対応を取れるようにしておくのだ。
 
 例えば、電車が遅れたり止まったりするのはよくあることだ。
 こうしたことを想定して、少し早めに出発したり、時間を潰せる方法を見つけておいたり、万が一の時に宿泊できそうなところを探しておいたりしてもよいだろう。
 これが、現実を受け入れられずに生きているままだと、ただ電車が遅れただけで異常事態と受け取り、自分の機嫌を取り直したり平常心を取り戻そうとすることもなく、忙しく対応に追われている駅の職員達に、さらなる苦情をぶつけに行くことになるのだ。
 
 まさに、「あきらめる」という言葉が物事を現実に考えるということに繋がり、その反対の「期待する」という言葉は、不安やプレッシャーや苛立ちや自信喪失など、心を乱す原因となるのだ。
 
 
 
②開き直る
 何事も、すんなり簡単に終わるということは少なく、失敗はつきものだし、とにかくやるしかないのである。
 「○○になったらどうしよう」思うから、心が弱くなるのだ。
 
 嫌われたって命まで取られるわけではない。
 病気になったら医者に任せるしかない。
 会社をクビになったって 何とかなるものだ。
 
 また、「失敗したらどうしよう」と思う人より、「失敗したっていい」と開き直っている人の方が、失敗する確率は低いものである。
 開き直ればプレッシャーがなくなり、冷静で堂々としていられるのだ。
 
 最悪の場合、会社なんていつでも辞められる。
 近所とうまくいかなければ引っ越せる。
 理不尽なことをされても泣き寝入りしない。
 
 もちろん口ばかりでなく、それを言うに値するくらい、経済的にも精神的にも自立し、言動と行動が一致している必要はあるだろう。
 
 しかし、開き直って「自分の足でしっかり立とう」と生きていれば、誰かに無駄に気を遣うこともないし、ものをストレートに言える。
 心も開いていられるから仲間ができやすいし、些細な失敗くらい助けてもらいやすい。
 明るく堂々と振る舞えるから同じような人達が集まり、結果として今の場所の居心地が良くなる。
 
 やはり、開き直っている人の方が根の部分が強い。
 その方が他人に流されにくいし、人生うまくいくものであると言えるだろう。