人の褒め方について


 音楽指導をしていると、子供や初心者も多いことから、褒めることの大切さを感じることが多いです。
 一言で言えば「褒めどころを見つけること」が大切です。

 筆者の経験上、褒めるにしても褒められるにしても、どちらにも慣れてもいない人が結構多いです。
 しかし、慣れていないからといってそのままにせず、普段から意識して声をかけられるといいですね。

 また、普段から褒めてあげることと、ここぞという時に褒めてあげられることもあります。
 小さなことでも取りこぼさずに観察しておき、相手がやり遂げた時にベストのタイミングであなたなりの言葉で相手を褒めてあげられたらかっこいいですし、言われた方も、心を開いていたり尊敬している人から褒めてもらえたら、天にも昇る気持ちになるほど嬉しいことでしょう。

 いつも通りの、やり遂げた成果や、技術の高さや、頑張って取り組んでいる姿勢などを褒めてあげることばかりだけではなく、また、以下のポイントがすべてということもありませんが、何かの参考になれば幸いです。

 

①相手のこだわりや、人と違うところを見つける
 ズバ抜け過ぎて即判別できてしまう箇所ではなく、周囲とのちょっとした差、前に会った時とのちょっとした差に気付いてあげられるとよいです。
 こだわりについて褒めるなら、今の自分の活動している分野だけでなく関連する分野のこともたくさん勉強したり経験しておくことで、自分の引き出しを作っておくことが大切です。

 また、こだわりを持てたり、他人とは少し角度を変えて物事に取り組もうとすることができる人は、その人なりに既に確立された何かをその人の中に持っていることが多く、レベルとしても結構高いことが多いです。
 ですから、表面的な部分を褒めるのは良いですが、それだけでなく、それなりに深いところについても触れてあげるようにすると良いでしょう

 

②相手の「言葉以外で表されている主張」に気付く
 「声にならない声」と言われることもあり、そうしたものを拾えるとよいです。
 言葉、声以外にも相手の一挙手一投足に気を配って観察していると、「なぜその手順やタイミングを選んで行動したのか」など、こちらから聞いてみないと分からないことに気付いてあげられるようになるものです。

 ただし、人はそれぞれ考えも感性も実行の仕方も異なりますから、効率や結果を見て褒める視点だけではちょっと足りないかもしれません。
 決して問い詰めるようなかたちでコミュニケーションを始めるのではなく、自分がインタビュアーになったつもりで接してみると良いでしょう。

 

③人間関係が浅い間は浅い(表面的な)ところを褒める
 いきなり深い部分を褒められても、相手にとってはその意味が分からなかったり、変にパーソナルな部分が含まれていたりしてしまうと、かえって警戒させてしまうかもしれません。
 人を褒めるということは、直ちに、100点満点で、すべてを褒めなければならない、ということはありません。

 最初のうちは浅い部分を褒めつつ徐々に人間関係を深めていき、人間関係が深くなったらそれに合わせて深いところも褒める、ということでも良いのです。
 そもそも相手との関係や距離感や絆というものが深まらないと分からないことも多いですし、お互いに分かってもらうことも分かってあげることも難しいでしょう。
 もちろん、人間関係が深くなってからも、浅いところも褒めた方が良いことは変わりません。

 

④身近な人ほど人間関係を良くすること。
 相手のことを、知ってるし、分かってるし、もう慣れ切ってしまっているから褒めるのがより大変ということもあります。
 例えば、「何気ない時に日頃の感謝を伝えられる」などということも、関係作りには大切です。
 まあ、照れくさがって受け取ってくれない人が多いですが。

 会社、学校、習い事などでは、やり遂げた成果や、技術の高さや、頑張って取り組んでいる姿勢などが褒める対象となることが多いのでしょう。
 しかし、褒めるということは「難しいことや専門的なことをどうしたか」ということばかりではないのです。

 

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 もし、相手を褒めることに慣れていないということであれば、例えば街中や電車の中で「頭の中だけで」褒める練習をしてみるとよいです。
 通りすがりの人などを対象にして、服装、鞄、靴の艶、姿勢、立ち姿、歩き方など、「頭の中だけで」浅いところを褒めてあげるのです。

 「洋服の上下の色遣いがイイですね」とか、「肩からかけているバッグがおしゃれですね」とか、「つり革を持って立っている姿勢が、背筋が伸びててイイですね」とか、ちょっとした部分くらい何か気付けるはずです。
 あくまでも「小さくて浅い部分」だけで良いのでそこを褒め、その上に、褒めた回数、どんな状況で褒めるか、自分が練習する頻度など、自分でできそうなを設定して慣れていくと良いでしょう。
 小さくて浅い部分以外を褒めるという時間をかけなければならないのは、あなたが本来伝えたい(褒めたい)と思っている相手なはずですから、そこは外してはいけません。

 また、これは頭の中だけで一人で勝手に行う練習ですが、最初のうちは自分の言葉のレパートリーが意外と少ないことに愕然とするかもしれません。
 しかし、やったことがないことは上手くいかなくて当たり前ですから、少しずつやり始めていき、徐々に慣らしていけばよいのです。
 何でもそうですが、できることから少しずつやってみて、それに慣れていき、できる範囲を広げていくことが大切です。