初心者に対するの接し方の「はじめの一歩」


 当たり前のことですが、初心者や新しく入ってきた人をバカにしたり、見下して笑ってはなりません。
 その人が、これまでどのような場所で、どのような実力をつけて成果をあげてきたかも、これから仲間としてどのような働きをするかも分からないからです。
 また、せっかく自分や今の仲間と同じ物事に興味を持ったり好きになったりしている人に対して、その邪魔をする行為にもなり良くないからです。

 誰だって最初のうちは「できない、分からない、動けない」くらいは当たり前で、何をやっても満足にできることは難しいでしょう。
 ですから、まずは同じ方向性を持って取り組める仲間が増えたと思って快く受け入れて、少しずつ教えてあげながら一緒に進んでいった方がよいのです。
 新しく来る人を拒んでこのままベテランだけで楽しんでいても、何か大きな前向きな出来事でもない限り、恐らくその視野も、表現できることも、技術や実力も今までと変わらないまま、狭いままでいることでしょう。

 もしこれが商売なら、会社が常連の顧客のみからしか売り上げが立たず、新規顧客が定着せず、苦しい状況を打破しなければならないのに、今までと同じことしかしない(できない)という状況になっているのと同じことです。
 新規の人達も大切に扱わない会社や業界は廃れていく一方であり、当然のことなのです。
 別に会社でなくても他のことで置き換えてもらっても構いませんが、自分の趣味や好きな事に対してそうした考えが応用できないということは、会社、学校、日常生活を問わず、どんな世界であれ大変残念なことです。

 

 まあ、もしあなたが「まだまだこれからの人」なら、「自分の担当楽器をこの人に取られてしまうんじゃないか」とか、「実は自分もよく分かっていないことを一から教えなければならないのは面倒だ」とかいうことも考えてしまうのではないでしょうか。
 そのような時期は誰でも超えるものですから、そうした気持ちがもしあれば、それは分からないこともありませんが、あなた自身も新しく来た人を受け入れる余裕をもう少し持つ必要があるでしょう。
 邪魔くさい、面倒くさい、自分の練習が大事と思っても、新しく来た人は今後あなたと時間を共にする「これから良くなりつつある人」に変わりはありません。

 自分だって初めての頃は、先にいた人達に良くしてもらったのではないでしょうか。
 その時のあなたは、何か重要な実績や肩書きをどのくらい持っていたのでしょうか。
 きっと無条件に受け入れてもらえたのではないですか?

 また、誰かが勧誘活動をしてくれたから来てくれたのではないでしょうか。
 あなたがそれをしたのでしょうか。
 その手間を経験していれば、新しく来た人を馬鹿にすることなんて普通はできません。

 

 しかも、それってお互いに結構勇気がいることなんですよ。
 来る側も、顔も声も名前もよく知らない担当者と連絡を取り合って来てくれたのかもしれません。
 勧誘する側も、決して自分達を誇張することなく誠心誠意やっても、それでも漏れや抜けや上手く伝わらないことがあったり、あっさりと断られてしまうかもしれない。 

 あなたも、自分が新人として参加し始めた時は、大した動機も理由も言えなくても、先にいた人たちはあなたの興味や熱意を知って受け入れてくれていたことと思います。
 何も知らない、何もできないあなたでも、それにも関わらず暖かく迎え入れてくれたことでしょう。
 自分たちのところに来てくれた嬉しさや、あなたに対する希望や期待と共に、あなたも親切に接してもらったのではないでしょうか。

 であれば、「よく来てくれました!」、「これから一緒に楽しんでいこう!」というようなことを思ったり言ったりできる方が自然ですよね。
 「初心者」と一括りに言うのは簡単ですが、新しく加入した集団において初心者なだけで、みんなどこかで何かを経験してきた人なわけですし、今の段階ではその人にどんな力が秘められているかも分かりません。
 そこをみんなで掘り当てたり、伸ばしたり、励まし合ったり、喜びあったりできる関係を作り上げていくことの方が、より楽しい充実した時間を過ごせるのではないかと思います。

 

 さて、今の若い世代の方達には少し古臭く感じるかもしれませんが、筆者の昔の頃にはこんな言葉をよく聞くことがありました。
 使う言葉や言い回しは時代や地域によっても、ネットで検索しても様々あるようですが、音楽指導をするにあたりよく思い返している言葉でもあります。

 

若者笑うな いつか来た道
年寄笑うな やがて行く道
今から通るは 今日生きる道
先に後悔立たぬ道

 

元々は以下のかたちで伝えられていたようですね。

 

子供叱るな 来た道だもの
年寄り笑うな 行く道だもの
来た道 行く道 二人旅
これから通る今日の道
通り直しのできぬ道

 

新しくできる縁が良いものとなりますように。