ミスに対してどう向き合うか

 
人は誰でも間違えたり忘れたりするものです。
 
そのことでかえってプレッシャーを感じて塞ぎ込んでしまったり、
うっかり忘れをしたり、忘れ物をしたり、
言われた指示を思い出せなくなってしまって困る、
というようなことが起こってしまうこともあります。
 
時には厳しい先生や先輩に出会うこともあると思いますが、
何の準備も対策もせずに「自分はなんてダメなんだ」と嘆くばかり、
というのも精神衛生上良くありません。
 
ミスに対する考え方は人それぞれあると思いますが、
誰かに質問したり相談したりするのは前提として、
質問や相談は技術の面だけ、なんていう決まりもありません。
 
もしも「実は自分は何も対策していなかった」という人は、
入門編として以下の3つの例を参考にするとよいでしょう。
 
 
 
①どのくらいの時間でリカバリーするかを決めておく
決め事がないばかりに、真面目な人ほど陥りやすいことだと思います。
合奏など練習の段階で、もし間違えたら2小節以内に復帰するとか、
次のフレーズの頭までに持ち直して入り直す、などを決めておくとよいでしょう。
 
優れた技術でより長く表現し続けられることは確かに良いことですが、
集団での表現を行っていることですから、自分がミスをしてしまったり、
自分以外の人がミスをしてしまう、ということもまたつきものですから、
時にはこのような考え方が必要となります。
 
また、個人の練習の段階で、例えばある1小節がうまくできないとしたら、
10回中7回はできるようにするとか、5回中4回はできるようにする、
というような、分かりやすい目安を設けて練習に臨むのもよいでしょう。
 
 
 
②休憩をとる
休憩時間に個人で反復練習などをやりすぎていないでしょうか。
社会人バンドなどではスマホやゲームなどをしていないでしょうか。
 
休憩時間すら練習時間に充てるのは大変熱心なことだと思いますが、
本来休むべき周期の時に頭だけはフル稼働しているような時、
実際にはそれは、オーバーワークのうちの一つと言えるでしょう。
筆者も休憩時間に練習をしていたタイプなので、よく分かります。
 
人間の脳は、休憩を取ったり何も考えずボーっとしている時間の時に、
記憶や情報を整理したり忘れたりするようにできている、と言われています。
ですから休憩は適度にとるようにしましょう。
 
もし時間が惜しいというのなら、例えば準備や片付けの時間の時に、
無駄な往復をしたり、おしゃべりをしたり気が乗らずになんとなく過ごす、
という、冗長な時間の方を先に何とかした方が余程良いでしょう。
 
 
 
③明日の準備をして、その日はぐっすり眠る
人間の脳は、睡眠をとっている間に、一度忘れたり物事を整理する、
と言われています。
 
例えば翌日や、長い休憩時間が明けて練習を再開した際、
初っ端に間違えてしまうというのは良くある話ですが、
実は誰にでもどこででも起こり得ることです。
 
視点を変えてみれば、人間の脳にはそのような機能があるから、
次に同じことをやる度に定着させやすくなる、と考えることもできますので、
まあ、事あるごとに失敗するのは考えものですが、
それも成長の過程のうちだと考えて、何かの発表会や本番の前までに、
上手に精度を高めていく工夫をしていった方がよいです。
 
「一旦忘れる時間がある」ことも入れ込んだ上で計画を練っていく、
ということも必要かもしれません。
 
また、好きな事を一生懸命頑張るのはよいことだと思いますが、
頑張りすぎたために脳疲労を起こしてしまうという可能性も考えられます。
 
心や体を壊してしまうことがもしも起こってしまったら、
元の状態に近づけるまでは何か月も、或いはそれ以上もかかってしまうでしょう。
ですから、体や心を休めるためにも、睡眠時間はしっかりと確保しましょう。
 
 
 
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以上、ミスに対する初歩的な向き合い方を3点示しました。
恐らく、音楽の分野だけに囚われない、ごくありふれた考え方だと思います。
 
ところで、色々な立場の人がいるでしょうから、
ぴったり当てはまる言葉にできるか分かりませんが、
一旦冷静になって考えるために、あくまでも念のための確認ですが。
 
ミスに向き合うとして、
 
・それは、本業で、ですか?
本業であっても、自分の身を削ってミスに対してばかり躍起になり、
周りが見えていない、或いは見えなくなる、というのは考えものです。
多くの人達はあなたの素晴らしい能力を、
世の中に、できるだけ長く、できるだけ広く伝えていくことを望むでしょう。
 
 
・それは、将来の実現のため、ですか?
音楽でもそうでなくても、世の中で得られるご縁は大切なものです。
是非塞ぎ込まずに、ミスや失敗の対策や予測、失敗から学ぶ力、
というものも育んで、柔軟でしなやかな心や姿勢をもって、
できるだけ長く、人間関係も良好に続けていかれることをお勧めします。
 
 
・それは、趣味ですか?、習い事ですか?、部活動ですか?
様々な人が様々な形で「お金を払って」好きな事をしています。
ここ、とても大事です。
 
それなのに、ミスに躍起になったり、ミスが頭から離れない時間を過ごしたり。
ともすれば、ミスをきっかけに、人を突き上げたり人から突き上げられたり。
そんなことがもしあったとしたら、ハッキリ言って疑問でしかありません。
 
だから、当初に持った目的や、一歩踏み出した時のことを忘れずに、
今の状況を楽しんだり、仲間と助け合ったりコミュニケーションをとったりして、
良い人間関係を深めていくことが大変大切です。
 
たしかに音楽活動では、何人もの人が集まって一つの目的の達成を目指す、
ということが多いですから、技術力も、表現力も、上手下手、ソロの取り合い、
大会などでの競争力、演奏会での集客力という面で様々あることでしょう。
 
しかし、どなたであってもその人の普段の生活があることを忘れてはいけません。
「人生の主となる分野で活躍しつつ、音楽という一面に参加している」
という点で俯瞰してみれば、どのようにバランスを取り、どのように楽しみ、
どのように情操を育み、良い経験にしていかれるか、ということが大切です。
 
誰にでもミスはつきものですから、それをどのように乗り越えたかが大事であり、
その乗り越え方というものが、音楽を通してでしか知り得ないもの、且つ、
人生の他の面でも応用のできるものであったのなら、それは大収穫なのです。