ボーッとする時間の効用について メモ

 
 「ボーッとして一日を過ごしてしまった」などと、ボーッとすることは後悔の対象になったり悪いことだと捉えることがある。
 実際、ボーッとしたまま一日が過ぎてしまうと後悔するし、情報化社会にある中で、ちょっとでも時間ができればスマホで調べ物などしてタイムパフォーマンスを高めようとか思っている人もいることだろう。
 では、ボーッとするのは脳にとって良いことなのだろうか、それとも悪いことなのだろうか。
 
 結論から言えば、とても忙しい人にとっては、ボーッとする時間は必要不可欠な時間である。
 その反対に、普段からずっと一日中のんびりとしているような生活は脳に悪い。
 ただし、ボーッとしている時間が良い悪いの2択ではなく、何事もやりすぎれば良くないし、何もしすぎないのも良くないということだ。
 
 人間の脳は、適度な緊張がある時にパフォーマンスを発揮すると言われている(ヤーキーズドットソンの法則)。
 脳が過剰に緊張するとフリーズ状態になってしまい、かと言って緊張がないと(ボーッとしていると)パフォーマンスは上がらない。
 要は、ボーッとする暇もないほどに常に忙しいというのも、一日中何もしないでボーッとしているのも、どちらも健康にとっては良くないということである。
 
 もし心当たりがあるのなら、仕事を一生懸命1~2時間やったら、休憩を入れてのんびりしたりリラックスしたりして、休憩が終わったらまたバリバリと働く、という流れを作ってみるとよい。
 そして日中はバリバリ働いて、就業時間が終わったらアフター5を楽しんだり、家に帰ってのんびりしたりリラックスする方が、より健康的な生き方だと言える。
 
 ただ、一日中のんびりしていても脳に刺激がいかないわけだし、そこで ネガティブなことやマイナスなことばかり考えてしまうことにもなるので、やはり一日中ボーッとしているのは良くないだろう。
 一方で、忙しく働く人は休み時間にまでスマホやパソコンで情報収集をしたりするものなのかもしれないが、人間の脳は「何もしない」という時間がないと、情報を整理することができないのだ。
 何もしていない時にこそ、実は脳を整理して考えをまとめていたりするのだ。
 
 脳では脳内にある情報を、ボーッとしている時に整理しているのだから、新しく情報をインプットしている最中に整理することはできない。
 これがもし休む暇もなく情報を入れ続けていると、「スマホ認知症」と言われる、認知症のような状態が起こってしまう。
 せっかく脳に情報をインプットしても整理される時間がないので、記憶に残らない、定着しない、人から言われたことも仕事の指示も聞き流してしまうというような状態になって、ミスが増えたり集中力の障害が発生することに繋がってしまうのだ。
 
 
 
 結局、脳には「休める」ということが必要である。
 「何もしないでボーッとする」という時間は必要なのだ。
 だから、10分15分の休み時間にずっとスマホを触っているよりも、ボーッとしたり目をつぶって机にうつ伏せになって視覚情報を遮断したり、たとえ5分くらいでも仮眠をとるなりして、脳を休める必要があるのだ。
 
 ただし、何もしないで一日中ボーッとしているのは良くない。
 メンタル疾患などで休息をとっている期間ということであれば話は別だが、何でもないのにずっとボーッとしていれば脳は退化してしまう。
 体で言う「筋トレ」と同じようなもので、脳にも適度な刺激が必要なのだ。
 
 脳を成長させたければ、今より少し難しいと思えることに挑戦したり、それを乗り越えたりする必要があるのだ。
 繰り返すが、一日中ただボーッとしていれば、脳は退化もするし老化も進んでしまうことになる。
 その他にも、十分な睡眠時間を確保したり、適度な運動をする時間を作らないと、やはり脳は老化していってしまう。
 
 ここで言っている「脳に刺激を与える」というのは、急にもの凄くレベルの高い難しい勉強したり、何時間もぶっ続けで集中できるような試練を自分に課すということではない。
 今の自分が興味を持っている分野について勉強して知識を深めたり、今まで知らなかった新しいことを知ったり、外出して今まで行ったことのないところに行ってみたり、いつもと違う景色を見たり、いつもは通らない道を通ってみたり、人と会ったりするだけでも十分に刺激となる。
 今までのボーッとした状態から見て、やり過ぎであれば休息を取る機会を増やし、何もやらな過ぎなのであれば、それよりも少し情報がインプットされるようにしたり、コミュニケーションを取るようにしたり、運動をして刺激を与えるなどして、適度に脳を使っていくことが大切である。