人を褒めるときに気にしておくこと

 
 音楽は演奏技術の面でも、感情を音で表すという表現の面でも、集団で物事を実現するという面でも、たとえ趣味や習い事であっても割と難易度が高いものだと見聞きすることがよくあります。
 その難しさや、感覚の合わなさや、やってもやっても上達の最終地点が見えないことから、諦めたり根負けしたりしてしまう人も中に入るでしょう。
 しかしそのようなことになる前に、普段から助け合ったり、役割分担したり、コミュニケーションを取りやすくしておくことも大切です。
 
 ここでは、筆者指導者としての少ない経験の中から三点について書きましたが、特に指導者でなくても音楽をやっていない人でも参考になることはあると思います。
 「褒めるとか、めんどくさい」とか「照れくさい」とか、「褒められたことない」とか、「上達するにつれてプライドばかり高くなって受け付けない」などなど。様々意見はあるかと思いますが、冒頭に触れたように、実はすごいことを普段からやってのけているのです。
 実はすごいということを見落としてしまっては、何事も楽しみが半減してしまうと思いましたので、それらを「褒める」ことについて文章にしてみました。
 
 
 

1. 褒めどころを意識してよく見る

 人を褒めることができるというのは、一つの能力ではないかと思います。
 今のところ、子供やまだまだこれから成長していく人達を褒めることが苦手で注意してばっかりだという人は、よく気にしてみると、大人同士の関係でも粗探しをしてばかりになっているということがあると思います。
 
 そのような場合は、自分の中の褒める基準をもっと低く設定して、褒める練習もかねて、子供や他人をよく見て褒めるところを探して、小さなことでも何気ないことでも褒めることをしてみたらいかがでしょうか。
 少し大げさかもしれませんが、最初は「普通のことを普通にやれてたら驚いたように褒める」というくらいのところから始めてみるのも丁度いいのではないかと思います。意外なところで意外なことで褒められると、大人でも嬉しいものです。
 
 また、褒めて育てることも大事ですが、その行為だけではなく、取り組んでいる時の姿勢や気持ちも褒めてあげるとよいです。
 そして、「自分が今していることは相手にとってどうなのか」、「もっと相手を喜ばせる方法はないか」という、人に気を回す習慣がつくと、自分の対人関係構築力やコミュニケーション能力といったものもついてくるでしょう。
 
 褒められる側だって、結果だけでなく過程や心構えなども見てもらえていると安心するでしょうし、いつも「一番を取らなきゃ認めてもらえない」と思って取り組むよりも前向きな姿勢でいられることでしょう。
 「一番をとって当たり前」、「勝って当たり前」と思って取り組む気持ちが湧いてくるのはその後のことなのです。
 
 特に、自分よりも若い子が失敗したときは、その時に自分が言われたら嬉しい言葉をかけてあげられるように気をつけられるようになるとよいでしょう。
 「この場面でどんなことを言ってもらえたら嬉しいか」ということを考える訓練を普段からたくさんしていれば、いざ自分が辛そうにしている人に出会ったときに、意地悪な言葉は絶対に出さなくなります。そこでまた、対人関係やコミュニケーション能力というものレベルが上がり、当然言葉を選ぶ力も上がります。
 
 
 

2. 褒める練習をしておく

 そうは言っても、なかなか他人を褒めるという気持ちが乗らないというならば、まずは自分のやっていることを俯瞰して、もう一人の自分の立場で褒めてあげる練習をしてみるとよいかもしれません。
 自分なら、「別に褒められたくって何かをやっているわけじゃないよ」ということも結構あるんじゃないでしょうか?それは同じように他人にもあります。
 
 ある人が普段から毎日継続していることを人から褒められると嬉しいのでしょうが、実際にはやる気とか褒められたいとかいう以前にやるしかないという場合だってあるのです。
 例えば、勉強して学業で良い成績を収めるとか、一生懸命仕事をして稼ぎを得るとか、家族を大切にして養っていくなど人それぞれにあるかと思いますが、自分が家族に、特に子供に対して自分の生き様を見せる、ということも自分のためになるし、教育の一環にもなるでしょう。
 やるしかなかったら人はやるものですから、自分か他人かを問わず、ただ淡々とやっていくだけなのです。
 
 あなたが「やるしかなかったら人はやるものである」と考えているのと同じように、他人もそうなのです。
 ところで、同じことに取り組んでいる人でも、「褒められたくてやっている人」と「やるしかないから淡々とやっている」がいそうであることが分かりました。
 さて、この二種類の人達は、同じように褒めるべきでしょうか?
 
 こういったことを考えられるようになるだけでも、やはり自分で自分を褒めてあげる練習をしてみるのもよいと思います。
 まあ、現実ではこの二種類だけではなく、「やれると思って取り組んでいる人」、「ただ何となくやっている人」、「予想をはるかに凌駕してできちゃっている人」など、様々な人達や様々な状況に出会うことでしょう。
 
 ここまでは今のところ、言葉を自分に向けて使うか他人に向けて使うかということについては言及していませんでしたので、少しだけ補足しておきます。
 言葉というものは、その人の人生を狂わせてしまうほど人を傷付けてしまう事もあるし、その反対に、傷ついた人を慰めたり、癒したり、また苦しんでる人を勇気づける事もできます。
 
 だから、どうせならその人の為になる言葉や、人を喜ばせる為に言葉を使うべきだと思います。
 だって、褒めようとしているということは、悪口や陰口などを言うのでなく、その人を応援したいのですよね?
 
 それならば、すぐに自分でできることを少しずつ変えていけば済む話なのです。
 何事も自分の身近なところから、小さく始められることからやってみて、経験していけばよいのです。
 人が人にかけてあげる言葉一つで、その相手が希望を持って生きられるようになることは素晴らしいことだと思います。
 
 
 

3. 自分にも他人にも「才能に気付く」という可能性があることを知る

 自分自身も恐らくそうなのかもしれませんが、多くの人もまた、自分の才能に気付いてないことがほとんどなのではないかと思います。
 他人のことは距離を置いて冷静に客観視できるのに、いざ自分のこととなるとなかなか難しいのですよね。そもそも客観視することにすら気を回せないとか。
 
 自分の才能に悩んで、判断したり自分の進む道に悩んだりした時は、周りの人から褒められたことやその分野で努力をしてみると良いかもしれません。
 
 努力を努力とも思わずに取り組み、結果を出し、人から褒められたり喜ばれたりする分野がもしあるなら、そこが自分自身の「得意分野」である可能性が高いのだと思います。
 
 それと同じように、あなたが褒めようとしている人もまた、あなたに褒められることによって、自信を付けたり、才能に気付けたり、何かを見出したりするというきっかけになるのかもしれません。
 
 
 
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 以上、少し文章が荒かったかもしれませんが、褒めることの大切さが伝わればと思います。
 褒めるということは、媚びを売るとか、傷をなめ合うという意味では決してありません。最初は自分が相手を褒めても受け入れてもらえないとか、気持ち悪がられるということもあるかもしれません(もしあったら相当ヘコみますが)。
 しかし、最初は誰だって、嬉しい反面照れくさいとか、くすぐったいとかいう気持ちがあるかもしれません。
 
 ・今一生懸命な状態を認める(認められる)
 ・今まで気付かなかったことに気付いた(それを教えてもらえた)
 ・次につなげられた
 
 最初は、このような事が収穫できれば上々だと思います。
 
 さて、コンクール、大会、演奏会や発表会なども、今シーズンの終盤となってきました。
 今からであっても、次に向けてであっても、今後良い人間関係を築くことができるよう願っています。