子供から大人になるにつれ、自分がどう思っているか、これからどのようにしていきたいか、どんな気持ちを持って行動したり生きたりするとどんなことが起こるか、ということを忘れてしまったり、焦点を当てることができなくなっていることが多いのではないでしょうか。
だからその結果、「他人の評価」や、「他人が思っている私」というものに合わせて生きようとしてしまっているのではないでしょうか。
趣味でも習い事でも部活でも何でもよいのですが、何かの活動を通して上記のような自分の軸という判断や選択の基準を作っていくことにも少しずつ向き合ってみると、人生の色々な部分に応用できるかもしれません。
自分の軸を作るには、次のようなことをしてみるのが良いと思います。
①自分で経験したり探求したりしながら、これだと思うものを見つけて育てる
②他人から習ったりサポートを受けつつ、自分で比較したり取り入れながら育てる
筆者なら、「③両方ともやる」です。
音楽指導をしていると、相手に対して次回までの課題を出すことがあります。相手とはもちろん、上達したいとか、金賞を取りたいとか、全国大会に行きたいとか、一番を取りたいとかの理由があって、そのために希望の楽器を自ら選び、自分で月謝を払って来ている人のことです。
ところが、その課題をまったくやってこなくて謝ったり、その理由を長々と話す人がいます。課題をまったくやらなくても、半分しかやらなくても、自力では半分くらいしかできなかったとしても、他人には一切関係がありません。
まあ確かに、自力で半分くらいしかできなかったことについて、その理由や疑問点を話しながらあらためて質問につなげて解決を目指す、という真面目な方もいるのでバッサリ切り捨てることはしませんが、それでも基本的には一切関係がありません。
まったくやってこなくて謝ったりその理由を言うのは、周りや課題を出してくれた人に迷惑をかけたからだと思っている人がよくいますが、これはその人の勘違いです。
実は一切かかっていません。指導者にも教える人たちにも運営関係者にも、一切迷惑をかけていないのです。
なぜなら、課題をやらなかったぐらいで他人に迷惑をかけるほどの力があなたにないためです。
課題が出たら、やりたいだけやってきてよいのです。「これだけの回数をやってきました」とか、「このくらいやったら前回の時からこのように変化がありました」というのでもよいのです。それで、その分だけ「自分はよくやった、よく練習を重ねた」と褒めたり、「できなかったことが課題を通してできるようになったので、さすが自分は完璧だ」と言い切ればよいのです。
その後のあなたに対する、成長速度の見積もりやスケジュール管理、課題の調整などは、こちらが考えることです。
仮に、もしもやってこなくて迷惑をかけるとしたら、団体競技であれば仲間の足を引っ張ることになるでしょうから、その分迷惑をかけるだけです。
また、課題をやらなかったことが積もりに積もって良い結果につながらなければ監督者や指導者が建前上何らかの責任を取ることもあるでしょう。
しかし、あなたの課題は永遠に解決されないままです。あなたの課題はあなた自身が何とかするしかないのです。
課題をする時は、「自分なんて」と差し引いて、謝ったり言い訳する時間はもったいないのです。「自分なんて」と引っ込めないことが、課題を実践してくる上で一番大切なことなのです。
なぜなら、人間一人の力なんて知れているからです。誰一人例外なく、人の助けを得ているからです。「自分なんて滅相もない」と思い続けながら他人との関わりに感謝の一つもできずに、その上でバッチリ金メダルを獲っているオリンピック選手とか、いませんよね?
また、指導者は、「俺の方が偉いのだから、お前に課題を与えてやろう」なんて思っていません。それよりも、あなたのやっている競技や活動を通して、今起きている現象から素直に学ぶという謙虚な姿勢を育んでもらったり、あなたがやり遂げて結果を出した時に、「みんなのおかげでここまで来ることができた」と誠実かつ堂々とした態度でいられたり、やがて今のことを振り返った時に良い時間だったと感じてもらうことの方が大事なのです。
指導者から課題が出たならさっさと取り掛かって反復して慣れて、体に身に付ければクリアなのです。あなたがどのような出来映えで仕上げてくるかも大体は想定済みです(たまに予想をはるかに超えてくる人はいますけど)。
課題課題と言ったって次回のレッスンまでの課題程度のことなのですから、あなたの人生で一生かけて手こずるような、そんな意地悪な課題は出ないのです。
課題を出した人の中には、正直に普段の忙しい時間の様子をしっかり伝えてくれて、ココとココの時間を有効に使うにはどうしたらよいかとか、楽器も何にもなくて手ぶらでもできる方法は何かないかとか、何とか自分の課題の解消に近づけるようにと質問してくる熱心な人は結構いるものです。
子供のようにこれから成長期が訪れる人は、大人や指導者が課題についてそれぞれどのように思っているかなんて、正直分からなくても仕方ない部分はあると思います。
中学生くらいまでなら、その人一人に対するオーダーメイドの課題を用意してくれたことの重要性なんて理解できない段階の人も実際にいますから。念のためですが、子供が悪いとか、劣っているとか、そのような意味ではありませんよ。
自分でやりたいと決めたことと、実際にやっていることを一致させることが重要だと自分で感じて、課題が必要な時期であると自分で感じて、出された課題を自分で何とかできたり、人からの課題なんかなくても自分で課題を作ってそれができたら、「自信」というかたちで自分自身にプレゼントとしてかえってくるのです。
さて、そのように考えれば、人から出された課題をすることと、課題を通して自分に自信をつけること、あなたにはどちらが大切でしょうか。
自信がつく方が大事なら、自信がつく方を選べば良いのです。他人に課題なんて出される前に、自分からどんどん質問して、行動して、身に付けるべきものを身に付けていけばよいのです。
課題をこなすことで信頼関係を深くして、もっと教えを乞いたいならば、そうすればよいのです。
そこから自分の軸を作ることが大切なのです。
また、筆者に限らず指導者の多くは、他所のバンドや団体など他の対象を分析するのと同じくらい、あなたの技量や性格や行動の傾向を分析しています。
だから当然、かなり客観視された、基本に忠実な、あなたにかなり合うはずの課題が出されていることでしょう。
その中から自分の得手不得手を見つけてみたり、基本がどのように応用されているかを学んでみたりしながら、身に付けるべきことを効率よく身に付けていったらよいのです。
こうした過程の中でやはり、そこから自分の軸を作ることが大切なのです。
こんなことをいちいち言わなくてもご存知でしょうが、課題を出されたから自分はこの程度の人だと思われているとなどと考えずに、さっさとこなしてしまうことです。
今回出された課題ができたからと言って世界一の実力を手に入れられることも、一生安泰などと言うこともありません。成長過程の中の1ステップだと思って、あまり重く考えずに、とりあえずさっさとやってしまうことです。
自分の軸ということについても、冒頭に申し上げています。どのような方でも一度は「自分だったらこうする」とか、「この選択だとこのような部分の人達が救い切れないから、周りへの影響も考えてこうする」という基準で決断した経験があることでしょう。
もしも大きくなって、人にもまれたり合わせることが多くなったばかりに、こうした経験を残念ながらうっかり忘れてしまっていたのなら、思い出しておくに越したことはありません。決して我儘に生きろと言っているのではありません。
皆さんが大切にしている活動を通して、少しでも主体性を持って、今後より良い時間を増やせますように。
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自分の軸を作るには、自分で実際にたくさんの経験をしてそこから学んだり、多くの人や本などの考え方にも触れた方がよいです。
今回は読み方によっては色々と話が飛んでいるように思われたかもしれませんが、その話の中から「自分だったらこうする」と思ってみることから自分の軸を作るためのトレーニングとしていけば、より「自分の時間を生きる」という時間を増やすことにつながるのではないかと思います。