音楽指導に行くと、姿勢について話すことがよくあります。
初めの頃は重点的に、特に春先やオフシーズンや、初心者の多いところなどには、よく伝えるようにします。
しかしその出来栄えが、できる人の割合が多くても、まだまだの人の割合が多くても、年間を通してほぼずっと言うことになります。
そのくらい大事なことなのです。
姿勢には二通りあります。
①背筋、目線、持ち方、構え方などの基本となる姿勢
②物事に向き合ったり取り組んだりする心構えや態度
まあ、他にもあるという人もいるかもしれませんが、小さな子供にも分かりやすく伝えるために、二通りとしています。
①を身につけておかないと、そもそも自分自身が必要な動きをしたり、そのための体制を作ったり、初動を起こすことすらできませんし、その効率もよくありません。
さらに、その楽器やジャンルなどでの決まった動作、例えば息や指の使い方、例えば指示や号令に合わせて行う動作をする時に影響します。
そして、②を身につけておかないと、自分自身で集中力を高めたり、継続していくことができません。辛い時期に奮起したり、人の話をしっかり聞くということにも影響します。
技術はこうした土台の上に乗っていきます。
だから、技術そのものを習得していくことは、この後からでもまだまだ間に合いますし、やればやったぶんだけ自分の力となっていきますから、あくせくせずにまずは正しい姿勢を覚えることが大切です。
それも、「筋肉が覚える」とか、「反射的に瞬時に動く」と言われるほどにです。
もちろん、指や腕のかたち、長さ、手の大きさなど、人それぞれ個人差がありますから、細かい部分は指導する側としても対応が必要です。
また、教わる側も怖がらずに質問したり、定期的に確認してもらうとよいでしょう。成長期にある人などは完全に解決することが難しい時期もあるでしょうから、その時は現状で最善の手を打てるように、指導者と相談してみるとよいでしょう。
さて、正しい姿勢を身に付けるコツは、次の二つです。
①できていると思っても、こまめに確認する機会を作って実際にやること。
②自分の動きを鏡で見たり写真や動画に撮るなどして、見本や理想形とされているものと比較すること。
「自分は一生懸命やっているし、こう思ってこのように動かしているんだから、絶対にできてるって自信がある!」と思っている人ほど、やってみるとよいでしょう。現実は意外と残酷かもしれませんが。
要は、思い込みで自分を高めることも大切ですが、客観視と分析を怠らないこともまた大切である、ということです。
私的な経験からですが、この部分を面倒がって外したり、そもそも聞いていない人は、後になってつまづくことが多い傾向があるようにに思えます。
そういう人は、外面だけを合わせて手順を端折ってしまい、中身が伴わずにスカスカになってしまいます。
しかしそうであっても、特定の技能などに運良く成功すると、「要領の良い子」と周りから言われるので、肝心な部分が備わっていないのに「上手い」と錯覚していくことになります。
「自分なりに思いついて、それを実現させようとしてやってみる」とか、「テクニックで一時的になんとか対処する」というのは、もっと後のことなのです。
新しいことを始める時は、何よりも先に基本姿勢を身につけ、これに紐付けて基本動作や型の習得を一つ一つしていくことが、物事を上達させるための王道かつ最も早い道であり、堅実な土台を築くことに繋がるのです。