カウンセリングにおいては「傾聴」と言う、相手の話をひたすら聴くという手法が用いられている。
こと心理的なカウンセリングにおいては、「傾聴」に加えて「共感」ということも重要な基本となるそうだ。
一般的なイメージであれば、「その人の気持ちになって聞く」とか「アドバイスをもらう」などが多いだろうが、正統なカウンセリングとしてはアドバイスや指示などのようにこちらの意見を言わずにひたすら聴く。
相手の話を受け止めたり相槌を打ったりはするが、「こうした方が良い」ということは言わないのだそうだ。
確かに、相手の話をよく聴くことは大切だが、忙しい時から普段の日常まで「相手の好きなように何でもかんでもよく聴く」というわけにはいかないだろう。
さらに、相手の話があまりに長かったり要点を得なかったりして、こちらも主導権を取れないでいると、いくらこっちだって「結局何の話なの?」となってしまいかねない。
では、カウンセラーでも医師でも心理学者でもない、そういう世界にもいない一般的な私達としては、相手の話を傾聴した上で、どうしていったら良いのだろうか。
①質問を投げかけて話を促す
「それは 具体的にどういうことですか?」
「こういう場合はどうしていますか?」
「こういうことはありますか?」
という小さな質問をして、相手の話の内容の中から、自分の知りたいことを相手が話すように道筋をつける。
脱線してきたら元の話に戻すようにコントロールする。
そして、明確に「この内容」という要望はせずに、相手の話したい気持ちを遮らないように、ちょうど良い感じの質問や相槌で話の流れを運んでいくとよいだろう。
②本人に気付かせる
カウンセリングにおいて、「アドバイスや指示をしない」というのであればどうするかと言うと、「本人に気付かせる」ということである。
例えば、昼過ぎまで寝ている人に「早起きした方がいい」と言ったって、人から言われたことはやらないのが人間の性質である。
ほぼ絶対にやらないのだから、昼過ぎまで寝ているのが悩みの人に対しては、「6時には起きた方がいいよ」と言うのではなく、「あなたはそのことをどう思っているのですか?」と質問した方がよい。
相手が「ちょっと遅いかも」と言うのであれば、「自分もそう思うけど、どうしたらいいと思いますか?」と流れを作っていく。
というように、相手が自分から 解決法を導き出せるように、こちらも適切な質問をして導いていくことが重要である。
こうした技術の使い方はカウンセラーがカウンセリングの世界で使うということに限らずに、一般的にも職場や日常で相手の話を聞く時にも役立つだろう。
「やれ」と言ってもまずやらないのだ。
筆者も音楽指導をしている時に多く感じるが、上手くなりたいと言いながら練習しない人は多い。
宿題や課題をやってこない、覚えてこない、やろうとも覚えようともしないという人にも、ほぼ確実に出会う。
しかも、大人にも子供にもそういう人は存在する。
しかし相手にも、その人なりの考えも、主張も、言い訳もまた存在するのだ。
こういう時は、怒るよりも、呆れるよりも、まずは我が身を振り返ってみることにしている。
話は戻るが、まずは、「適切なタイミングで適切な質問をして導き出す」とか、「適切なタイミングで相槌や同意の言葉を投げかけていくなどの共感のサインを示す」、ということをしながら傾聴をして、その後の対応も考えながら着地点に導いていくことが大切である。