「嫌がらせに対してやり返す」よりも良いこと メモ

 
 職場でも学校でもどこにおいても、嫌がらせをしてくる人というのは少なからずいることだろう。
 また、嫌がらせだけに限らず、嫌味を言ってきたり、マウントを取ってきたり、何かにつけて必ず「違う」と話を遮ってくるようなことも同じだろう。
 そういう人達は、相手にするだけでもげんなりしてしまうものだ。
 
 時には嫌がらせに対して仕返しをしたり、二度とやってこないように分からせるというような措置も必要だが、普段使いの切り返しとしては「笑顔で親切に接する」ことが最も良いだろう。
 
 なぜなら、相手の心理としては、こちらが怒ったり、言葉に詰まったり、焦ったり、がっかりしたり、失敗したり、手先が震えたり、嫌な顔をしたり、何でも言うこと聞くようになってしまうことを期待しているからである。
 そして、「そのような負の反応をよく観察して逃さず見つけ出してつつき、さらにその後に自分の要求を最も都合の良い形で飲ませる」というところまでがセットなのだから、「仕返しをすればするほど相手の思うツボ」であることを考えておく必要がある。
 
 或いは、単純にそういった反応を見て喜ぶという誘拐犯であり、それが相手にとっての最大の楽しみということもある。
 恐らく、相手側に立って考えてみれば、「あなたのことを少しからかってやりたい」という(良くない方の)コミュニケーションの一環であり、こちらがちょっと焦ったりパニックになったりして滑稽な反応や動作になってしまうのを見て、楽しみたいだけなのだろう。
 
 逆を言えば、あなたに何かをしても無反応であるとか、全くダメージを受けていない様子であるという想定外の反応だと、いじめがいもからかいがいもないし、面白くないのである。
 
 だからこれからは、嫌がらせをしてくる人に対しては、笑顔で返したり、笑顔で親切を返したりすることだ。
 それは相手にとっては、げんなりしたり、怒ったり、がっかりした表情が見たいのに、期待とは違う反応が返ってくることになる。
 本来だったら嫌がったり嫌ってくるはずなのに、妙に親切にされてしまうと、「期待外れ」を感じてげんなりしてしまうのだから、それこそが最大の仕返しになるのだ。
 
 
 
 「いや、ちょっと待ってくれ、こっちだって反論したり言い返したりしたいし、何ならあの野郎をとっちめてやりたい」と思う人も多いかもしれない。
 しかし、それこそが相手の望む反応であり、その反応を水を得た魚のように喜び、状況をさらにエスカレートさせてしまうことになるのだ。
 
 自分に置き換えて考えてみると良いが、今自分の向き合っている取り組みに対して、今やっていることが思い通りにてきめんの効果を発揮したら、それは最大の喜び以外の何者でもないのではないだろうか。
 それを考えれば、嫌がらせをやり返して勝つ方法を見つけたり実力をつけるのも良いのかもしれない。
 
 ただ、やり返したりとっちめようとすると、多くの場合、泥沼になることは避けられないだろう。
 であれば、笑顔や親切で対応することを「相手の術中にハマらないための対処」の一つとして覚え、それを使ってサッと躱せるようになった方が賢いと言える。
 さらに、そうなった方が「相手が一番して欲しくない(期待外れの)対応を狙ってする」こともでき、さらに「その効果の有無をこちらも知ることができる」のだ。
 
 
 
 また、医学や心理学の研究では、人は、笑顔で接したり接してもらったり、親切にしたりされたりすると、自分にも相手にも脳からオキシトシンが分泌されると言われる。
 オキシトシンには愛情や癒しの効果があると言われているので、つまりお互いに相手に対して少しずつ好意を持つことになるのだ。
 あなたのことが大嫌いだと思って嫌がらせをしてくる相手にも、あなたが笑顔や親切で返すことによって、相手からは「あの人は実は良い人、誠実な人。」という気持ちが徐々に芽生えてくるので、その結果、嫌がらせもされなくなっていくことになるのだ。
 
 もちろん、1回や2回のやり取りで何かが大きく変わるということはないかもしれない。
 嫌がらせをしてくる相手だって、毎回毎回ワンパターンなわけがない。
 だから、少なくとも、相手が徐々に嫌がらせをしてくるのと同じように、こちらも持久戦と思って気長に取り掛かろう。
 
 残念ながら、暇人にターゲットにされてしまったのだから仕方ない。
 もし何かの分野であなたが相手と圧倒的な差をつけていればそんなこともなかったのかもしれないが、人生にはそういったタイミングもある。
 であれば、こちらも成長するための練習だと思って割り切って、じわじわと継続的に笑顔と親切で接してあげるように心掛けていくことだ。
 
 ただし、相手の嫌がらせがワンパターンだった場合はただの愚か者だろうから、その時は煮るなり焼くなり好きなように料理してあげると良いだろう。
 
 
 
 人間は誰だって完璧ではない。
 だから、時にはストレスを溜め込みすぎて「目には目を、歯には歯を」というような対応を思い描き、それもここでは到底書けないくらいの内容で想像力を存分に発揮して、その想像の世界の中で色々なことが逆巻いたり、渦巻いてしまうことはあることだろう。
 ただ、一段俯瞰してみて、「相手が自分に対して、トゲのある対応を徐々に取らなくなっていく」という力を身に付けられた方が、冷静に考えてそちらの方が良いのではないだろうか。
 
 世の中、生きていれば、特に一歩社会に踏み出せば、嫌がらせなんてどこに行ったって毎日のようにあるものだ。
 そのような中で、それに過剰に反応して怒ったり、或いはへこたれてしまうような人間よりも、相手に「あの人に下手に手出ししたらこっちが損」とか「あの人をイジるより仕事してもらっておいた方が得」と思わせたり、「あの人にいいかげんな態度をとったら失礼だ」とか「あの人とは仲良くしておきたい」と思ってもらえる人の方が、価値がより高いのは明らかだ。
 だったら、鬱憤を溜めてやり返そうとして相手と同じような暇人に成り下がるよりも、やはり笑顔と親切で接した方が人間関係としても幅広く良い印象でいられるし、そこに加えて自分の実力を磨いていった方が何倍も良いのだ。
 
 相手にどんなネガティブなものを向けられても、嫌がらせや明らかないじめであっても、それを上手に受け流したり受け答えをできるようにしておく。
 そうして、こちらの対応によって相手が「期待外れ」を感じて軌道修正したり、「自分は幼稚だった」と感じて態度や言い方や表情などを改めざるを得なくなってしまうという方が間違いなく良いし、社会に出ても自分の人生においても使える能力となるのである。
 先にも述べたが、最初の1回2回くらいではまあ変わらないだろうが、お試し期間のつもりで、形だけでも笑顔や親切で振る舞う練習のつもりで、とりあえず5回くらいはそのように接してあげてみたら良いのではないだろうか。