講評をするために身に付けておくこと

 
 音楽指導に行くと、行った先の人達の個人の出来映えと、団体としての出来栄えについてコメントすることがあります。
 そのためには、相手の奏でる音をよく聞き、繰り出す技術をよく見ていないと、一言コメントを求められた時に上手く対応することは難しいでしょう。
 
 その時に大切なのは、「コレ」というものを提示してあげることです。
 しかも、一発で伝わる言葉に集約されていることが望ましいです。
 お互いに時間には限りがありますし、聞きながら並行してコメントすることもあり得るからです。
 
 全体的に一言で言ったらコレ。
 良かったところはコレ。
 良くなかったところ、まだまだのところはコレ。
 
 というものを簡潔に示してあげるのです。
 
 こういう時は、発表会やコンテストといったことに繋がる場合が多いので、大体は、「あなた(達)はコレが足りていないから補うといいよ」とか、「ここが素晴らしいからもっと伸ばしたり大切にした方がいいよ」とか、「ここができていないからこういう練習をした方がいいよ」といったものが多くなるでしょう。
 その場合、相手はもっと上手くなりたいとか、もっといいものを見せたい(作りたい)とか、勝ちたいとか、結果を残したいと思っていることがほとんどですから、「一言で言ってコレ」を伝えてあげられる方が相手のためになるのです。
 
 また、相手にとってそのレッスンの回やその大会がその年度の最後の場で、もう次がないということもあります。
 もしそうあれば、ただ「良かった、悪かった、頑張った、素晴らしかった」というような内容で終わっても良いのでしょう。
 
 しかし、もし次の場があってそれを見据えているのなら、そこに向けて成長したり頑張ったりしたいと思うのは当然想定できることです。
 そうだとしたらやはり、次に繋がるためのプラスアルファとなり得る要素を、簡潔に、しかもポジティブなかたちで伝えてあげることです。
 時には厳しい言葉も必要なこともありますが、相手だって高みを目指したり、少しでも上手くなろうと悩みもがいていることもありますから、多くの場合はポジティブな言葉で伝える方が、すんなりと受け入れやすくなることでしょう。
 
 それができるようになるためには、普段から相手個人や団体の技術の一挙手一投足をよく見て、奏でる音を聞くようにしておかなければなりません。
 そして、それがどの程度のレベルものなのか、どのくらいのまとまりや統一感があるのか、客観的に見て聞いてどうなのかと繋げていき、広い範囲で受け止めることができなければなりません。
 さらには、言葉や感情や感覚を適切に表現したり伝えたりできる語彙を身に付けた上で、「重要なのはコレ」として提示してあげることが大切なのです。