年齢を重ねるからこそ伸ばしたい能力 メモ

 
 年齢を重ねてくると、体力の衰えを感じたり、脳や認知機能の衰えを感じる人は多いかと思う。
 「老化をするのは嫌だ」と言ったって、いつか時間は来てしまうものである。
 ただ、世の中で言われているよりも、衰える人もいれば衰えない人もいる、というのもまた事実なのではないか。
 
 昨今では、「脳の働きは50代以降になっても衰えない」という結果が出てくる研究も増えてきたように思える。
 例えば、言語力、空間推論力、単純計算力、抽象的推論力の面では、高齢者の方が20代の若者よりも良い結果だったということだ。
 さすがに記憶力や認知のスピードにおいては若い人の方が高い能力なのだろうが、記憶力にしたって年を取ってから悪くなる人と悪くならない人がいる。
 
 
 
 いくつかの能力は老化とともに衰えるとされる一方で、特に言語力の面では年を取るほど鍛えられる分野でもある。
 文章を読んだり理解したり、それを話したり伝えたり、プレゼンテーションをしたり、語彙を増やすという、他と比べて年齢を重ねるごとに向上していく力もあるのだ。
 物事を予測したり推論する力は、経験を積むことによってより推論もできるし、結果にも辿り着きやすくもなるのだから、若い人よりも経験を多く積んだ人の方が向上する傾向が高いのは当然なのだろう。
 
 だから、「老化した」と言ってただガッカリするだけで終わらせないことだ。
 年をとっても衰える能力と衰えない能力があること、むしろ伸びる力もあること、特に記憶力に関しては若い人よりも高めることだってできるということが分かってきているのだ。
 
 つまり、「年を取ったら能力は衰える一方である」というのは、必ずしも正しくないのである。
 衰える部分にばかり注目してしまうと、当然「昔と比べてできなくなった」と悲観的になってしてしまうだろうが、伸びている部分に注目して考えれば、決してそんなことはないのだ。
 
 
 
 筆者の場合はIT業界にいたこともあって、どう考えても社会人になりたての頃の自分よりも論理的に物事を考えられるし、資料も読み込めるし、図や文章をわかりやすく書く力もついているように思える。
 
 楽曲の制作にしても、若い頃は木管楽器や打楽器などの得意なことばかりに偏っていたのに、今ではある一団体の編成に対して一式書きあげた上に自分で指導に行き、(そこから先は筆者自身の能力とは関係ないが)生徒の皆さんの努力のおかげで去年よりもいい出来映えでできたり、全国大会にまで行ってくれることも増えてきている。
 
 どちらも、体力に溢れたピークの時期に、「技術を駆使して最前線で戦っていた頃と比べて今の方が優れているか」と言えばそんなこともないのだろうが、しかし衰えを気にして悲観したり一喜一憂したりせずにその経験を積み上げてきたからこそ、物事の実現の仕方も戦い方も手数として増えてきたし、関連する他のことへの応用も利くようになってきたのである。
 
 ところで、筆者が20代の始めだった頃には「人生は細く長くがいいか、太く短くがいいか」という話を他人からよく振られたりしたものだが、今の20代の人達もそんなことを言われたりするのだろうか。
 
 ちなみにその時の筆者は、心の中で「そんな究極の二択みたいなバカなまね、するわけないだろう。」と思っていたが、もしかしたらそのように、周りに流され過ぎないようにして、自分の得手不得手を知って冷静によく見ながらも、不得手なことでの経験を丸ごと切り捨てるようなことはせずに、その時できることに集中して向き合ってきたからこそ、今では全体としてそこそこ力が伸びてきているのではないだろうか(そう思いたいし、まだ全然足りないが)。
 
 
 
 人間の中には進化する能力も退化する能力もあり、全体的に見て、進化する部分をさらに鍛えていくこともできれば、退化してしまう部分を補うこともできる、はずである。
 そうなると、毎日スマホでSNSばかり見て、ゲームをして、テレビを見て、ギャンブルをして、飲んだくれていれば、そりゃあどんどん衰えるのだ。
 
 だからどんな形でも良いので、勉強して知識をつけ、実際に行動に起こしてみて、それを振り返って改善していく、ということを繰り返すことだ。
 そして、少し先のことも考えて判断や行動をするべきだ(当然「その行動はしない」というものも含む)。
 このサイクルを継続する力が大切であり、それをしている人はどんどん進化していくわけなのだから、脳も体もイキイキとしてきて認知症などをはじめとしたリスクとは縁遠くなっていくのだ。
 
 適度に勉強をして、適度に運動をして、睡眠時間をしっかりと取って、規則正しい生活をしていけば、ある時急に老け込んでしまうということはまずないだろうし、体力や能力の衰えも必要以上に感じずに済む。
 それは、「老化を克服する」というところまではいかないのだろうが、せめてその速度を遅らせ、年をとっても若々しく元気にいられるということに繋がるだろう。
 その上で、20代の頃よりも秀でることができる能力を見定め、それらを伸ばしていくことができれば、自分にもさらに磨きがかかり、そんなに悲観せずに日々を楽しんでいくことができるのではないだろうか。