相手の自発性を引き出す時の注意点


 相手の自発性を引き出すには、以下のような前提があると対処しやすいでしょう。

 (1) あなたも相手も成績を上げたい、痩せたいなど、何らかの同じ目的を持っている
 (2) あなたは実際にやってみて成果が出ていたり、上手に継続できている状態である
 (3) 相手はまだ成果が出る前や興味があるという、あなたよりも手前の段階にいる

 ごく普通の日常においても、痩せたいとか、モテたいとか、賢くなりたいという割になかなか行動に移さず、いつまでも悩み続けたりグズっている人はいるものです。
 もし、あなたが学校の先生や習い事などの講師で相手が受講生などというように、立場や環境がはっきりしている場合においては役に立たない話かもしれません。
 しかし、ある程度の対処を知っておけば、コミュニケーション能力の向上や人材育成などの面でプラスになることもありますし、その反対に「あんなに言ってあげたのに」とやきもきしたり不仲になったりするマイナスの時間を減らすことに繋がるでしょう。

 

①焦らない
 言葉の違いによりますが、「根気よく続ける」と同じことです。
 一回や数回言っただけでこちらの思った通りにきっちりやる人、やれる人というのはまずいないと知ることです。

 そして、たとえ教えたりアドバイスをしても、お互いの人間関係や相手と周囲との人間関係に上下や優劣をつけないよう心掛けることです。
 自分が教えてあげたんだから、これからは先生ね、先輩ね、というような考え方では人が離れていきます。

 あなた自身の成長の変化や継続の度合いだって、あなたの親しい相手が気づけるレベルにはまだ達していないということは普通にあることですよね?
 そういう時は、いちいちそこばかり気にせずに、自分のやるべきこと、好きなこと、やりたいことなどを優先して進めてレベルアップしておこうとしますよね。

 仮に毎日やれていたとしても、成果が目に見えないからといって相手にほとんど毎日のように「やってるの?」と確認されたらかなり嫌だと思います。
 職人が毎日技術を磨いたり、お坊さんが毎日お経を唱えて身に付けるのと違うんですから、普通の人にやったらただのプレッシャーです。

 他人についても同じことが言えるでしょう。
 他人を変えるのは難しいし、そこにやきもきすればするほど相手に振り回されている事になりますから、気長な気持ちで接しつつ、しかも相手に聞かれたときのみメリットを話すくらいでちょうどよいのです。

 大抵は、話を聞いても相手の方で解決できてその後は話題にも上がらなくなることがほとんどです。
 また、あなたが「自分はこれをやってみてうまくいったけど、けっこうオススメだよ」くらいの押し付けない言い方をしていれば、半年から一年くらいするとやり始める人がいますが、そうなったからと言って「あの時言ってくれたのがきっかけになった」とか、「あなたのおかげだ」と言われることはあっても、特にその他の見返りはまずないでしょう。

 ですから、他人のことで心を乱して焦らずに、「相手も相手なりに解決しようとしてたまたま自分に聞いてきた」くらいに思って、自分の事を淡々と進め、相手に何か聞かれた時は心を開いて淡々と答えてあげて、相手が自発的な行動に移ったら心の中で喜んで、引き続き温かく応援してあげればよいのです。

 

②強制しない
 他人は自分と同様に、「やりなさい」と言えば言うほどやらないものです。
 あなたもきっとそうでしょうし、「せっかく教えてあげたんだからやりなよ」と強い感じで言われたらちょっと嫌ですよね。
 相手だって、何かの理想に対して自分で考えたり探したりするという行動を起こしているわけですから、今のところ上手くいっていなくて停滞しているような中で「あなたになら」と話を聞いてもらっただけかもしれません。

 こちらからは、相手を温かく見守って、客観的に言えること、科学的な事実、世の中で起きている実例などを淡々と述べるだけでよいのです。
 あなたが大切だと思っていつも心に留め置いている事柄であっても、相手の中にその認識がかけらもなければ、あなたの言葉はまったく刺さらないでしょう。
 また、相手にとってあなたの存在が「心からの師匠クラス」であれば直ちに心や行動をあらためるのかもしれませんが、まあ現実ではなかなかそんなことはありません。

 一方で、気になる言葉でも色でも、短い期間の間に何回か出くわす機会があれば、「何かの縁かも」とか「自分は変われるかも」と思うようになるでしょう。
 例えば「好きな人と持ち物がお揃いだった」とか、「ラッキーカラーは緑です」とか、「転職という言葉を何度も目にした」とか、誰でも思い出せる経験がありますよね?

 多くの場合は「その時」にぴったりとはまるタイミングがあれば行動を起こすものですから、こちらからは無理強いせずに、キツくいったり精神的に追い込んだりしないことです。
 まして、日常のやりとりレベルで押しつけがましくなったり命令口調で伝えるようなことをする必要はどこにもないのです。

 

③アウトプットしてもらう(メモ、ノートなど)
 人は多くの場合、話した内容を聞いても理解していない人がほとんどであるということを知っておくことです。
 また、本人は聞こうとしているけれど人目があって緊張していたり、その日調子が悪かったり、疲れが溜まっていて集中力が落ちているなどの理由で、耳から入った情報が右から左に抜けていくことは普通に起こり得ることです。

 ですから、よほど大事で伝えたい事なら、紙でもメモアプリでもよいので、書いてもらって復唱してもらうとよいです。
 手順が何ステップもあるとか複雑であれば親切になるのでしょうが、職場で新しい仕事を教わるのではないのですから、わざわざそんなことをさせなくてもよいのかもしれません。
 というか、相手がそのことに本当に向き合っていたり興味を持っている場合なら、こちらが何も言わなくても自然とそうするか、それに近い状態になるものです。

 

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 何にしても、急ぐ、強制する、強い口調で言うだけでは相手もやるはずがありませんから、逆のやり方や別の方法を探してみるのもよいでしょう。

 あなたがそうしているのと同じように、相手も上手くいったり失敗したり悩んだりしながら、より良くしていこうと色々考えて生きているのです。