人は自分を変えたいと思った時、行動も性格も、表情も姿勢も変えていくことができる。
他にも様々な意味で変わっていくことはできるだろう。
ただ、人にはもともとホメオタシスという、恒常性や現状維持をするための機能がある。
人間というだけに限らず生き物には、内部や外部の環境の変化に因らず、昨日と同じような状態でいられるように脳や体の機能を維持しようとする仕組みがあると言われているためだ。
だから、ある人が「何かを変えていこう」とか「新しいことを始めよう」とすると、不安や恐怖も時を同じくするように現れて、そこに陥って長続きしなくなってしまう、という現象は、人間の本能に因るものなのだ。
人間は、昨日よりも変わっていくことができる。
しかしそのためには、不安や恐怖と直面したり、それらを乗り越えていく必要があるのだ。
一先ずのところは、「楽をしたり近道をして変わろうというのはほぼ不可能である」ということくらいは知っておくべきだろう。
例えば、「自分は話下手だから、話し方が上手になりたい」と思って変わろうとする場合、「そもそも話し上手な人というのはどのぐらいいるのだろうか」と考えたことはあるだろうか。
仮に世の中全体のうち10%の人が話上手だとすると、今の自分は残りの90%の方にいるのだと分かる。
願望を持つことは素晴らしいことなのだが、ただしそうなると、自分もその10%の中に入れるように努力を重ねなければいけないのだ。
努力を積み重ねて自分を磨き上げるということは、かなり大変なことだし継続性もいることだ。
また、願望を持つ一方で、「そこまでして自分の欠点や短所を克服しなければならないのか」という考えとも向き合う必要もある。
それらを概ねできた上で、ある程度の期間と努力量があれば、「自分が嫌いな一面を何とかしたい」とか「周りよりも頭一つ抜き出たい」と思っているようなことでも着実に変えていかれるだろうから、まずは地道で良いので小さく始めてみて、徐々に不安や恐怖を乗り越えていくとよいだろう。
実際のところ、「話し上手になりたい」と思うなら、人前で話す機会を100回くらい経験した方が良いだろう。
頭の中だけで考えて実際の行動に起こさずにいたところで、何かが達成されることはほぼないだろう。
筆者は音楽指導に行くことがあるので、その行った先での始まりと終わりの時間に人前で話をすることがあるが、これもまさに経験の積み重ねと言える。
誰だって1回目はまともにできないものだし、できたと思っても上手く伝わっていないものだ。
そして後になって振り返ってみて「ああしておけばよかった、こうしておけばよかった」と後悔したり、一人で恥ずかしく思ったりするものなのだ。
また、いきなり人前で話す機会なんかなくても、今の時代だからこそできることだってある。
自分の伝えたいことや話したいことやスピーチしたいことなどを自分で撮って、動画サイトにでもアップしてみればよい。
もし、まだ自信がなかったり、それが怖いというならば、撮影や録音をしたものを自分で聞いてみるとよい。
そして、できるだけ自分一人の時や周囲もまだ数人のうちに、そこで不安や心配に思っていることを、先に全部やってしまうのだ。
最初のうちなんて、話す順番が入れ替わったり、台本が頭から飛んだり、語彙力が少なかったり、話がおぼつかなかったり、さっき言ったことをまた言ってしまったり、必要以上に緊張したり、何の前触れもなくどもったりするものなのだ。
最初のうちなんてみんなそんなものなのだから、とりあえず小さな範囲でやってみたらよいのだ。
また、こういうのは、後から補足したり言い訳したり、外野から取ってつけたように何かを言うのは簡単なことだ。
しかし、ただ作業を順番通りにとしてこなすにしても、落ち着いてやり切ろうと精神的な面を上げていくにしても、自分で今実際に向き合って乗り越えるのは簡単ではない。
ただ、そのくらいの努力は必要なのだ。
もしそれを努力と言うのなら、の話だが。
その程度のことはやっておかないと、何も成長することはないだろう。
やっておけば、その努力と思っていたことは、やがて努力ではなく「当たり前」のこととしてできるようになる。
そうすることが乗り越えることだし、そうしていけば人は変わっていくことができる。
それに、「新しいことに取り組んでいる最中は、今まさに変わっている最中でもある」のだ。
そして「昨日できなかったことが今日できた」のなら、今までの努力が成長に繋がったと言えるのである。
自分を変えるということは、可能だが、それなりに大変である。
しかし、小さな変化や自己成長と思えることを、少しずつ積み上げていくことが大切だ。
そうすれば、結果として大きな自己成長になるし、自分の行動や性格が変わっていくことにも繋がるのだ。
「話し上手になりたい」と思っても、明日突然流暢になって周囲のみんなを感動させられる人に変わっているということはない。
これは、その分野以外でも同じことであり、且つ1週間や1ヶ月などの短い期間ではできないことがほとんどだ。
結局のところは1年や3年などの長い年月がかかるものなので、それくらいは覚悟しておくことが必要だが、気楽さとある程度の計画性を持っておくことを忘れてはならない。
1年、3年と続けていけば、自分でもそれなりにメモや記録を付けているだろうし、データも取っていたりするだろう。
そして、少しくらいは、自分自身の変化や出してきた結果や、達成したことや積み上げた実績というものを実感できるレベルになっているはずだ。
ほとんどの人は1週間くらいで諦めるし、根気のある人だって1ヶ月から3ヶ月ぐらいで諦めてしまうのだから、繰り返しになるが、ある程度の期間とそれなりの努力量と覚悟が必要なことを分かって、気楽さとある程度の計画性を持って、地道に小さく始めていくことが大切なのである。
何事も、やれば変われるし、やらなければ変われないのだが、実際のところはこうした当たり前の事実や現実があって、それらを積み上げていくだけなのだ。
ただし、あまり焦らずに、ほんの少しずつの積み重ねで良いので挑戦していくことだ。
やった人にしか分からないのだが、やってきたことを振り返ってみて5年前や10年前の自分と比べてみると、自分自身がまるで別人かのように進化していると分かるものなのである。