たとえどれだけ慣れたとしても、言いにくいことはやはり言いにくいものだし、その場で詳細に考えて上手にキッパリと伝え切るのは、いつになってもどれだけやっても難しいことである。
だから、どのように伝えたら良いかと考えていることを一旦文章に起こしてみるとよい。
そして、書き出してまとめたものをそのまま読んでも差し支えのない場面であればそうすれば良いし、丸暗記したり自分の言葉として伝えた方が適切な場面であれば、何度か練習してみて可能な限り上手く言えるようにしておくとよい。
文章に起こすということは、頭の中にあるものを目で見える形で推敲することができるということである。
例えば、言いづらい上にトゲのある言葉で思いついてしまった場合は、誤解を招いて相手を怒らせてしまう可能性もあるから、前振りを入れたり柔らかい表現に変えたりしながら、より適切と思えるものにブラッシュアップしていくことだ。
推敲する時は手で書くのもいいが、パソコンでもスマホでも、書いて消したり文章を入れ替えたりしやすいものを使う方が、時間も手間もかからないので都合が良いだろう。
自分の中でもあまりまとまっていないことをその場で考えて上手に伝えるのは、なかなか難しい、というよりほぼ不可能だ。
もしも、トゲのある言葉をうっかり言って相手を怒らせたり傷つけてしまう可能性があるなら、どちらのためにもならないしデメリットの方が大きくなってしまうこともある。
だから、面倒でもやはり推敲して、熟考して、吟味する方がよいのだ。
言いづらいことを伝えるための重要な方法としては、ワンクッション置いたり柔らかい表現を使うことだ。
そうすれば、内容が辛辣でも相手を傷つける可能性を下げることができる。
特に、欠点や失敗を伝える時などはワンクッションを置き、まずは相手を褒めてから欠点を伝えるようにすると、ポジティブなことが先に立つため相手への伝わり方が全体的に見て柔らかくなるのだ。
もしもこの先いくら場数を踏んだとしても、自分は喋りが上手いからといって、何でも言葉にして伝えれば良いということはない。
言葉には力があるので、そのまま伝えると相手を傷つけてしまうこともあるからだ。
だから、優しく伝えたり、分かりやすく伝えたり、柔らかい表現にしたり、要点をまとめて伝えたり、オブラートに包んであげたり、伝える順番を考えてあげる必要があるのだ。
少なくとも、
①文章に起こして推敲する
②伝え方を工夫する
③伝える練習をする
という3つを使うだけでも、相手への伝わり方は大きく変わってくるものだ。
頭に思ったことをそのまま伝えると、距離を置かれたり、喧嘩になったり、嫌われたりしてしまうこともあるのだ。
こういうことは、いちいち面倒だし時間のかかることかもしれないが、アウトプットが下手な人ほど、または「自分は伝え上手だ」と思い上がらないためにも、一度はやってみた方がよいだろう。
伝える内容が相手に対してネガティブだったり言いづらいことだったとしても、柔らかく上手に伝えられるようになるためにも、より適切な言い方や言い回しができるようになるためにも、そのひと手間を惜しまずに、事前に文章にしてから言葉にしてみて何度も練習してみることが大切である。
言いづらいことを伝える時は、たとえ相手が年の離れた若い相手であっても、経験が浅くても初心者であっても、自分の方が知識や頭の回転が優れているだろうと感じたとしても、「自分の方が分かっているんだから、そっちがついてこい」というような態度はとらない方が賢明なのは言うまでもないだろう。
実際に言葉を伝えた後に、より良い関係性に発展していくためにも、お互いの信頼関係をさらに強固なものとして築いていくためにも、「相手にも自分にもより良いコミュニケーションとは何だろうか」ということを考えて行動するのは当たり前のことなのである。