模写や書き写しの効果について メモ


 模写や書き写しと言うと、よく般若心経が取り上げられたりします。
 筆者も昔は書道をやっていましたので写経くらいは経験がありますが、実際やってみると一心不乱になれたり集中できたりするものです。
 やっている最中は没頭できるので、その間は雑念が入らなくなりますが、いざ大人になって長い年月が経ってから振り返ってみると、例えばメンタル面や学習面においての効果は現在ではどのようなことが言われているのでしょうか。

 

①瞑想、マインドフルネス
 書き写す作業に熱中することによって、ある種の瞑想のような状態になりやすくなります。
 作業に集中することで、それ以外の考えを頭から追い出すことができるので、マインドフルネスとしては良いトレーニングになると言えるでしょう。

 例としてあげた般若心経などは、本来だったらそれぞれの言葉に意味があって、それを理解して書いたり、考え方についてもっと深く知りながら書く方が望ましいのかもしれません。
 しかし、やっている人全員が深くまで理解しているのかといえばそんなこともないでしょうし(すみません)、意味がわからなくてもその時間に集中して書き写していくことで瞑想状態に入れるので、それが良いのです。

 

②なぜその文章なのか学びながら書く
 一方で、文章力をアップさせるトレーニングとしての効果も言われています。
 「文章力を向上させたい」という人は結構いますが、文章をゼロから自分で思いつきながら書くのはかなり大変です。
 ですから、最初からお手本として使えそうな、良い文章が書かれているものを参考にするのが良いです。

 例えば、ボールペン字やペン習字などのテキストであれば、一般的な教養や広く使われている書式などを元にして作られていますから、対人マナーにしても文書作成にしても「こういう時はこう書けばいいんだ」と学習できる上、字もきれいになれることでしょう。
 また、小説などの本や新聞のコラムなどから良いと思った箇所を抜き書きするのも、それらは文章を生業としている人たちが書いた「そもそも上手な文章」を題材とすることができます。
 ですから、「なぜこれは上手な文章なのか」、「なぜこの文章は読みやすいのか」、「なぜこれはこの文章の構造で表現しているのだろう」などと考えながら一字一句を書き写すことができます。

 このやり方は①のような瞑想の効果はありませんが、その代わりに、その文章を味わいながら書き写すことによって文章の構造を見ていくことができます。
 精神面での向上を目指したいという人は①の写経のように、言葉の意味を考えずに一心不乱に書き写していく方がより良いやり方と言えます。
 文章を上達させたいのであればこの②のように、頭を働かせながら書き写していくのが良いでしょう。

 

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 もしかしたら「IT時代どころかAI時代の現在に書き写しなんて古臭い」と言われてしまうのかもしれませんが、筆者は子供の頃からやっていたので特に苦にならないだけであり、いずれにしても、「集中力をより持続させたい」という人にとっては(好みの問題はありますが)どちらも良いトレーニングになります。