新しいスキルや上達させたい技術をより速く習得して自分の能力とするには「休憩」が重要

 
 米国国立衛生研究所(NINDS)Leonardo G. Cohen博士ら研究チームによって、「覚醒下(目覚めている時)での休憩」が上達を促すメカニズムについて報告された。(2021.6.8)
 
 研究者らは、脳は練習に休息時間を挟むことで、練習したばかりの記憶を高速で繰り返し圧縮して再生していることを発見した。ピアノで新しい曲を弾くなど新しい技能を習得する際の脳活動において、練習を短期間中断することがなぜ学習のカギとなるのかを明らかにした。
 
 
 
 研究は、33人の健康な右利きのボランティアを対象とし、左手で5桁の決まったテストコードをタイピングするときの脳波を記録するものであった。
 内容については、ボランティアが椅子に座り、「41234」というコードを画面に表示し、それを10秒間できるだけ多くタイプしてもらい、10秒間休憩するところから始まった。
 ボランティア達はこの練習と休憩を交互に繰り返すサイクルを合計35回行うよう求められた。
 
 その結果、タイピング中に見られる脳活動が、休憩時間には約20倍もの速さで再生されていることが分かった。その後の休憩時間や実験終了後に見られる活動の2〜3倍の頻度である上、タイピングをより頻繁に再生したボランティアの脳は、再生頻度が低い他のボランティアに比べて、休憩後の上達度の跳ね上がりがより大きく飛躍していた。
 
さらに、起きている間の短い休憩は、一晩空けるほどの長さの休憩よりも上達度を上げるのに効果的であり、休憩による上達効果は一晩である必要はなく、目覚めた状態の「秒」単位でも起きていることが分かった。
 
 
 
 このことから、覚醒下での休憩中に、脳が新しい技能を習得するために必要な記憶を圧縮・結合していることが示唆され、その予想通り研究チームは、これらの反復される活動が、運動を制御する脳の感覚運動領域でしばしば起こっていることを発見した。また、海馬や内嗅皮質など、他の脳領域でも活性が見られた。
 
つまり、練習後の休憩中においての脳内では、練習内容の記憶の圧縮と統合が繰り返されて超高速再生されるため、練習後に休憩を挟むことがより速く上達するための秘訣となる。
 
 
 
●参考
・Cell Reports(セル出版 米マサチューセッツ州)
Consolidation of human skill linked to waking hippocampo-neocortical replay
 
・NIH(アメリカ国立衛生研究所 米メリーランド州)
(NINDS; National Institute of Neurological Disorders and Stroke 国立神経疾患・脳卒中研究所)
Study shows how taking short breaks may help our brains learn new skills
 
・ナゾロジー
練習中ではなく「頻繁な休憩」がスキルを上達させると判明