①テニスの原理
テニスの試合では、ラインギリギリのきわどいボールを打てば打つほど勝つと言われている。
だから判定でもめる時も多いのだが、その判定の時に自分に有利な判定に文句をつける選手はいないだろう。
というのは、選手はいつも自分の不利な判定だけに文句をつけるからである。
スポーツというものはフェアプレーであることが大切なので、ボールを打ったのが自分なのか相手なのかに関わらず、その判定そのものに異議があれば異議を唱えなければならないのが当然だろう。
しかし、テニスだけに限らず、スポーツはフェアプレーと言いながら、自分に有利になる方にのみ文句を言うのだ。
なぜならば、自分と相手では見解が異なるからである。
もう分かり切っていることだが、「人間は、自分がやったことは、他人が見るよりも自分に有利に見えるということを、実は分かっていない」と知っておくことだ。
そうすることが、世の中に対する不満を軽減させるために重要である。
人間というものは、「自分がやったことは、他人がやったことよりも優れている」と思ったり、どちらも全く同じ事をやっているのに「自分はこんなに頑張ったのに、なぜ自分の方が上でないのか、評価されないのか」と必ず思うものなのである。
「自分が評価されない」ということに不満を持つことは、スポーツだけでなく仕事でも同じことである。
世の中で評価されるということは、そこで起こっていることが正確に判断できるということであり、見方を変えれば「自分自身は少し損をしているように感じることもあるのが普通の状態で、それが公平」だということになる。
「自分が余程他人よりも優れた事をやったと自分で思える状態で、他人と同じ程度」だと思えるようになると、心から理解できるようになるだろうし、それが分かることで不安や不満の気持ちの多くは消えていくだろう。
人間はどうしても、「他人がやったことよりも自分のやったことの方が優れている」と考えるのだろう。
しかし、このように考えられるようになることで、自分の人生が前向きで楽しくなることに繋がっていくのである。
②三角形の原理
人間というものは大脳支配の動物なので、自分の寿命から健康に至るまで、頭脳の影響は大きい。
老化ですら、自分が「年をとった」とか、「物忘れをするようになった」と思うことで老化していく、という研究がされたほどである。
意識によって性質や体の状態が決まってしまうということは、まして精神的なものになると、さらに大脳の影響を受けやすくなるのだろう。
テニスの原理においては、人の持つ自己防衛反応が自然と表面に出てしまうので、自分にとって有利なことを事実と信じる傾向があるため、「自分が事実と思うことは、自分にとって有利なことだと知っておくだけで、不満はなくなる。」という見方であった。
さて、例えば仕事において社長まで出世し、その社長が数年にわたって任期を務めることを考えると、入社したうちの100人や1000人に1人しか報われないことになる。
そうすると、満足のいく人生だったと思うことができる人は、100分の1以下ということになる。
さらに、ヘッドハンティングされてきた優秀な人材や親会社から流れてくる人材などのことを考えると、可能性はもっと低くなるだろう。
ということを、三角形のピラミッドで図式化して考えて見てみるのがこの原理である。
図に書くとイメージしやすいと思うが、普通にやっていたらその頂点まで行くことはなかなか難しいと言える。
さらにこの上、自分より歳が若い人や、業績が低いのになぜと思われているような人が出世していって、その後は自分の上司になって命令をしてくるのだから、心中穏やかではないだろう。
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不満を溜めずに幸せな人生にしていくためには、この二つの原理を最初から回避する方法を取っておくとよい。
(1)人は、「自分と他人が同じことをしたら、自分のしたことの方が価値のあることをしたと思う」という生物学的な癖を持っている。
(2)(1)に加えて会社などでは、100人や1000人に1人ぐらいしか出世することができないし、自分よりも年下の人や業績がないと思う人が上司になり、自分に命令してくることに腹が立つ。
世の中で生きていく以上、この二つの原理が働き、また、それが重なる部分が多いものなのだ。
しかし間違えてはいけないのは、世の中のこういった欠陥(=原理)で、自分の人生をダメにしてはいけないということである。
人の評価、世の中のシステムの中で負けていき、自分の人生の幸福というものを失っていく人が多いので、この二つの原理を理解し、それを避けるような計画を立て、その中で幸福な人生を送れるように実践できるかどうかが大切である。
業績を上げることや組織を変えることにこだわるだけでは人生は流されて行ってしまうのだ。
こうした考えをもって生き抜くことこそが実際の勝負であり、その解決策は自分の心の中にあるのだ。